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感想・レビュー・書評
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ミステリー小説と同時に、スパイ小説も好きだった。
スパイ小説でよく読んでいたのは、ジョージ・スマイリーシリーズをはじめとする、このジョン・ル・カレの作品と、ブライアン・フリーマントルの書く、チャーリー・マフィンシリーズだった。いずれのシリーズの主人公も、イギリスのMI6という諜報機関が舞台となっている。そういえば、007のジェームズボンドもイギリスのスパイだった。イギリスには、スパイ小説の伝統があるのだろう。
スパイ小説の基本形は、西側のスパイが、ロシアをはじめとする東欧諸国のスパイや機関と戦うものである。東側と西側の対立構造がある一方で、相手方の情報を簡単には入手できず、そこにスパイが活躍する余地があったのだ。ベルリンの壁の崩壊は1989年、ソ連崩壊が1991年、そこで基本的に東西冷戦は終わった。東西冷戦終了と同時に、スパイ小説はリアリティを失う、と当時言われていた。
確かに、それ以降、スパイ小説というジャンルは下火になったと思うが、現実問題として、東とか西とかに関わらず、特定の国家間の対立がなくなるわけではなく、諜報機関の必要性が薄れたわけではないと思う。例えばウクライナへのロシアによる侵攻が起こったが、この時に、ロシア軍の戦略・戦術・兵器などの情報が入手できれば、ウクライナ側に有利に働く。先日、「気球」騒ぎがあったが、中国とアメリカの間では、実際に激しい情報戦が行われているはず。あるいは、例えばプーチンや金正恩に関しての情報をアメリカは入手するために、何らかの手立てを講じているのではないかと思う。
ということは、スパイという存在や情報・諜報機関の必要性にリアリティが失われたわけではないので、スパイ小説というジャンル自体は、まだ成立し得るはずだ。ただし、例えば北朝鮮を舞台にした小説を書こうとした場合、北朝鮮の社会の現実をリアリティを持ちながら描くのは、簡単ではないだろうとは思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東西冷戦時代の英独スパイ合戦で失敗したイギリス諜報部員・リーマス。左遷され、自堕落な生活へと身を落としていったが…。派手なアクションはないが、始終状況がひっくり返るスパイ物の醍醐味が味わえる。これがスパイの世界というものか…と思わせる無情さ。あまりにもリーマスは人間的だった。しばらく尾を引きそうなラストは堪らなく印象的。昔観た『ロシア・ハウス』という映画がとても好きなのだけど、この作家さんの原作だと、この作品をキッカケに知った。
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ティンカーテイラーソルジャースパイといい場転多用のぶつ切り展開はさすがに読みにくいがすぎる。良さが分からん。
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筋が読めるものの、肌寒く薄暗く、彩度も明度も低いような光景が目に浮かび、ぴりりとした緊張感がザ・ルカレワールド全開。長さもちょうどいい作品。
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冷戦時代を背景にしたスパイ小説
前半はよくわからなくてつまらなかったが、後半に入ってからどんどん面白くなった
退屈だった前半に伏線が張り巡らされていたことが判明、
民主主義陣営のスパイが皮肉にも全体主義的な抑圧的カラクリの中にいることが浮き彫りにされる
個人を重んじるはずの民主主義陣営が皮肉にも全体主義陣営と相似形のものと感じられるのだ
ラストにも深い余韻があってすばらしい -
元英国情報部員の著者が書いたスパイ小説。登場人物がファーストネームで呼ばれたり、ラストネームで呼ばれたりで誰が誰だか分からなくなる時があるので、人間関係を整理しながら読むことが必要です。また、誰がどの機関の人物かを冒頭のページでしっかり頭に入れておかないと、この小説の楽しさは半減すると思います。
後半からのどんでん返しに続くどんでん返しで、結局誰が一番の黒幕なのかを推測させられる部分は非常に読んでいて考えさせられる部分でした。007を見ていても、結局諜報員と言っても女には弱いんだなーなんて思っていたらそれまでも計算されたストーリだったとは。逆にそれが腑に落ちてしまった自分はまだまだ諜報機関と渡り合えることはなさそうです。 -
いわずと知れた名作だけど初めて読んだ。
どうも「スパイ」っていうイメージが自分のなかで固定されてしまっているらしくて、ハラハラドキドキ的な、アクション的な、サスペンスフルなものを、それも「名作」なのだからどれほど?とか思っていたら、ものすごく予想外な、言い方はアレだけど、すごく「地味」だった。
でも、解説読んだら、当時(1963年くらい?)、スパイ小説といえばやっぱりジェームス・ボンドとかだったのが、そういうのとは違うリアルなスパイ小説だってことで名作となったのだ、ってことですごく納得した。 -
タイトル買いしたら、思ったよりも昔の作品だった。
腹の探り合いだらけの展開が、私には合わなかったが、リアリティーのあるスパイとは、こういうものなのだなと思った。 -
スパイ小説っていっても007なイメージしかなかったが、これは超政治的。東西冷戦時代の空気感を感じる。面白い。
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「寒い国から帰ってきたスパイ」(ジョン・ル・カレ:宇野利泰 訳)を読んだ。これもまたずいぶん久し振りに読んだな。昨年読んだ「ナイロビの蜂」はあまり好みではなかったけど、こっちは好きな作品。