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- / ISBN・EAN: 4988111245052
感想・レビュー・書評
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まず、私はウィスキーが好きなので、ウィスキーに関する映画というだけで、中々好感を持ってしまう。
この映画で果たすウィスキーの役割はグルメの役割ではなく、田舎の不良のしがらみから抜けられない悪循環に陥っている主人公を救うための役割として登場する。
そして天使の分け前というタイトルにそれはつながる。
ケンローチ監督、SweetSixteenもそうだったけど、やさぐれた、ちっぽけな不良少年達の描き方が絶妙。主人公の周りの世界が、どうしようもなく絶望的で。希望が持てなくあえいでいることを描きだす。
そのリアルな痛々しさが背景にあるからこそ、この物語の最後の救いのような部分が活きてくる。
主人公の周りの役との関係性がやはりよくできていて、有機的に主人公の関係を描き出せている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆☆☆☆
ロビーと彼の周りにいる仲間たちの関係に憧れる。
ふと私の人生を振り返ると、
大人になって“社会”(小さな意味での)にでるとそこに適応して、成功していくこと、あるいはそこで生計を立てていくことに四苦八苦するベルトコンベアに乗せられて、“幼なじみ”や“仲間”は、社会での苦役をねぎらい合う存在になってしまっていた。
私が失った温かさが漂う映画。
このスコットランドのどうしょうもない仲間たちは、確かに犯罪を犯しても反省もしないし、まともに働くこと、にではない別の方法で、どうにか生きていこうという方法を探そうとする。
でも、そんな彼らからしたら、我々日本人のほうが“変”に映っているに違いない。
勤勉であることが美徳としてフレーム設定されているために、自らが絡め取られ、ベルトコンベアから自ら降りる選択ができなくなっている人々。そうして、そういう人々が集まって作った社会、そこには人々が発する観念が底流に流れていてビリーたちが住む世の中である『豊かではないけど、喜び溢れる』居場所はない。
岡村隆史似のビリーも妻も子どものルークも前途多難だけど、彼には安住はない代わりに、強く、深い幸福感は約束されている。
2017/03/25 -
(The Angels' Share; 2012/英・仏・ベルギー・伊、106min.)
舞台はスコットランドのグラスゴー。労働者階級の青年の非行/更生/社会格差と失業問題といった社会問題に、スコッチ・ウイスキーがエッセンスとなって話が進んでいく。
結局は犯罪行為なんだけどなぁ.. 倫理的には「良い」とは言い難いのだけれども、味わい深い人間味と&いろんなお国事情が垣間見れて楽しめた。
ハリウッドでは作れない映画。
2012年
- カンヌ国際映画祭、審査員賞(ケン・ローチ) -
しばらく映画が観られていなくて、撮りためていた中からやっと観た作品。
正直、華のない主人公のビジュアルだったから、なんとなく惹かれなかったんだけど、早く観れば良かった!
ダメだったやつが、親になることで道を切り開いていくストーリーなんだけど、なかなかクレバーで爽快。
悪を全く捨てるわけではなく、ギリギリのラインを疾走するような痛快な物語。
そんな中にも仲間を想う気持ちや、大切な人へ向ける気持ちが良いバランスで盛り込まれていて素敵な作品でした。
最後には華がないと勝手に決めていた主人公に、すっかり惹かれた。
学生時代に、あまり目立たなかった人にだんだん惹かれちゃったみたいな感覚でした。
わはは! -
★★★★☆
ウィスキーのような香る作品
【内容】
恋人と生まれてくる子どものために人生をやり直そうとしていたロビーはトラブルを起こし社会奉仕活動を命じられる。彼は現場の指導者でウイスキー愛好家のハリーと出会った。
【感想】
巨匠ケン・ローチ監督作品。
『麦の穂をゆらす風』など重厚なイメージのある監督ですが、非常に見やすくてライトです。
あまりに綺麗に行き過ぎな感じもしますが、まぁこのギスギスした世の中で、こんな清涼感があってもいいですよね。
"天使の分け前"とは、ワインやブランデー、ウィスキーなどを熟成中に蒸発して目減りすることを示し、樽で年間2%前後減るそうです。
バーを覗きこむシーンでは、スタッフと思われる人物が窓ガラスに映ってしまっていますww -
ケンローチの作品て、どれも地味にいい役者さんが出てる気がする。
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初めてのケン・ローチ監督作品がこれ。
この監督の入り口としてこの映画からというのは
本流では無いとはわかっていたが
どうしても見たかったので観た。
なかなか良い映画でした。
親の代から続く悪い輪廻にとらまえられている主人公が
父親になるのを機に更生しようと決心。
ややあって“ウィスキー作り”と出会い・・・
しがらみから逃れるのはやはり難しい
どうにかして更生の足場を作るために
思いついたのが窃盗というなんともな内容ではあったが
本末転倒なんのそので突き進む。
終わりよければ全てよし的に「これも有りか」とは
納得しきれないけれどサクッとしたウイット感と
ちょっと足りない仲間との交流が楽しかった。
更生のきっかけをくれた監督官のおじさんへの
贈り物にはホロッとしますしね。
この英語のなまりがけっこう耳になじめなくて
「?」が浮ぶところが逆に新鮮でした。
これがケン・ローチ監督の異端だと肝に銘じて
既存の作品を見たいと思います。 -
普通の労働者階級の人々を善い悪いの価値観をつけずにそのままの描いてるのがよかった。
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労働者階級の人々を描かせたら右に出る者のいない、硬派な社会派監督ケン・ローチ。今回もその市井を撮る視点は揺るぎないのだが、「エリックをさがして」の辺りからコミカルな新境地を見せている。
後半の筋運びは、多くの日本人には釈然としないだろうが、ハリウッド風サクセスストーリーのようにハイソサエティにおもねるようなまねは、老いたりといえどあのケン・ローチなら、まあするわけもないのである。今回もその辺りを堪能させてもらった。