- Amazon.co.jp ・電子書籍 (393ページ)
感想・レビュー・書評
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どのような本かも知らず、タイトルに惹かれ、とりあえずページを開いて読み始めると、そこには今まさに命が消えようとしているサマンサ•ウォーカーという女性の、しかもそれは美しい物語のように儚く消えていくのではなく、一人の人間が懸命に生きた証として、断ち切られる命の苦しみを、あからさまな描写で、読むのも苦しいほど克明に綴られていた。
当たり前のことだけど、生きている人なら誰でも想像を決して脱することが出来ない「死の瞬間」。ただただ恐ろしいと思ってしまう。生まれてきたことを後悔するほどに。
サマンサは人工神経制御言語の開発者だ(既にここでもう理解できていないあたし)。彼女は人工知能に小説を書かせることによって、それに人格を持たせる研究をしていた。しかしあるときサマンサの余命があと半年であることが判明する。激しい苦痛を伴う病気の恐怖から逃れるために、彼女は犯してはならない領域に踏み込むのだけど、その部分はとても恐ろしかった。
まあでもしかし、読むのに非常に時間がかかった。こういうの苦手なんだよね。『パラサイト•イブ』を読んだときにもずっと感じてた。
極端にわたしが馬鹿なんだろう。でもほぼ9割方、サマンサの研究を理解できないのに読み続けたのは、このタイトルである『あなたのための物語』は、誰のために誰が、なんのために書かれたものなのかと知りたかったから。それが果たして彼女を救ったのかどうかも。
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重厚で難解。読解力が無い人は置いてけぼりを喰らう記述の難しさ。形而上学的に死や人間性について延々と語られる。しんどかった。
中盤で、サマンサが頑なで気難しい人物に段々となっていくのだけど、その描写があまりにも長くて若干うんざりした。そんなに嫌な奴になる必要ある?と思ったけど、これが死にゆく人としてはリアルなのかな。 -
「擬似神経制御言語 ITP」というナノロボットを脳内に入れて疑似神経を構築することにより知識や体験を自由に入出力できる技術が核となるSF小説。100%疑似神経で構築されたAIなんかも出てくる。
主人公はこのITPを開発した天才技術者なのだが、彼女が不治の病に侵され、死ぬまでの葛藤やらなんやらを描いた話である。なかなか楽しそうな技術を用意した割に、なぜこんな陰鬱な物語にしたのだろうか。技術の使い方としては同じ著者の短編集である『My Humanity』の方がまだ好き。
どうせ死ぬことが確定して自暴自棄になるのなら、自分のコピーをひたすら作れば面白かったのにと思ってしまう。 -
絶望的にこわい。
少し未来、科学がものすごく発達した世界。
きる服が体周りの温度などの環境を調整してくれ、無人自動車が走り、
さらには人の人格さえテキスト化し、感覚、性格を取り込める技術が開発されている。
主人公は社会的な成功者。
脳の中身をテキスト化し、データとする技術の開発をしている。
そんな発達しきった世界でも、まだ死は人に訪れる。
そして主人公は病気にかかり、余命宣告される。
序盤から中盤の、近づく死の圧倒的描写がこわくて、しばらく読むのをやめていました。
死ぬのがこわくなる物語。
死についてひたすら向き合う主人公の物語です。 -
主人公、サマンサの死に様から始まる物語は、一人の人間が死ぬまでの記録といった雰囲気で進んでいく。
そこに、格段に進化した未来の技術が絡まっていくのだけど、SFというよりも一人の女性の話と捉えても遜色ないような気がする。
どんなに技術が発展しても、死はどこまでもただ平等で容赦ない。権力者だが孤独なサマンサが最後に見つけた相手は、人工知能という皮肉。
どうしても最後の「動物のように尊厳なく」というワンフレーズがしっくり来なかった。
自分の力で生まれ立ち上がる動物に、死に際の尊厳など関係あるだろうか?彼等にとっては、生まれたのと同じように死んでいくことが一番の尊厳のように思える。
対するサマンサは、医療の力で寿命を先延ばししながら、それでも自分の仕事に打ち込もうとする。
尊厳の意味を、何となく考えてしまった。 -
脳内の情報をテキスト化する技術を設定して、そのなかで人格や尊厳、人としての死について念入りに描写された物語。初めは死を拒絶して、だんだん死を受け入れていく。道具にも命があるにはあるが、何をもって人間性があると言えるのか、について考えさせられた。ただ、少し内容が難しかった…。ラストの対話シーンが良かった。
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未来の設定の綿密さに驚く。