イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2作どちらもめちゃくちゃ面白かった。『イワンイリッチの死』もうすごい。壮絶。しかもこれは他人の話や虚構の話ではない。将来必ず誰の身にも起きることなのだ。すごいわ。この洞察力、想像力、表現力。圧巻。感動した。
    憎しみを煽られ苛々とする対応に自らの過ちを見つけ、それを肯定できないことによる苦痛っつーのがリアル。
    『クロイツェルソナタ』中盤は苦笑せずには読み進められないほど今も根強く続く女性軽視の精神を端的に濃厚凝縮したような観念思想の一人語りが凄まじい。

  • 死に接することで、人は冷静になれるのかな。

  • クロイツェルソナタのみ

    ベートーベンのバイオリンソナタと、ヤナーチェクのクロイツェルソナタを聴いたので原作も読んでみた

    なんかこの時代(1890年代)から男女、夫婦、愛と憎しみ、人間は変わってないんだなとなんか安心した
    語り手のおじさんの心描写がわかりすぎる!!!って感じでメンヘラ読解してたんだけど、こんなことは昔から想像されてたことなんだろうな
    変わってないな〜〜

    あらぬ妄想で憎しみを生み出してしまう、でも「愛」というもので仲直りはしたようなものの、それでも一つ亀裂が入るような出来事(日常の中であっても)があると、人と人は関係を断つことになるんだな
    現世では自殺他殺の前に別れても次の道があるからまだ救いはあるけど
    とはいえこういった憎しみは離婚しただの破談しただの個人の出来事を発信してるSNSとかで散見されるしなあ
    いつの時代も男女の愛と憎しみは留まることを知らないんだな

  • トルストイは『戦争と平和』を読んでとても良かったので本作も期待して読んだが、全く異なる主題と作風で驚いた。
    『戦争と平和』執筆の30代から本作執筆の60歳前後までに、菜食主義者になるなど様々な心境の変化があったとは聞いていたが、その苦悩の過程が垣間見えた。

    本書に収録の2作品は、主として共通した主題に基づいている。
    それは、家庭特に結婚生活や、作者の属していた貴族社会の、見せかけの幸福と嘘である。
    嘘や偽善を嫌悪するのはロシア人的な考えであり、その点のトルストイらしさは健在だと感じる。

    また、『クロイツェル・ソナタ』で論じられていた伝統的結婚観と自由恋愛の議論も興味深かった。
    西洋的自由主義を「堕落」と見なすところもまた理性を重んじるロシア人らしいのだが、その議論はこの時代からあったものかと思わせられた。

    個人的には、『戦争と平和』の瑞々しさや壮大なスケールを思うと、30代で執筆した際の体力に対して、本作は色々な意味で60歳らしいと感じた。
    自分にはまだ本作を理解するだけの経験値が足りないのかもしれない。

  • 観察眼も表現力も素晴らしいのに、妙に甘ったるいセンチメンタルさがある。

  • 人間描写が深く面白いのだがテーマが重い。

  • 自分は死を恐れていない、誰もが必ず死ぬ運命にあって自分もその例外ではない、と考えている人の中で、本当にその危機に瀕したとき死を受け入れられる人はどれほどいるんだろうか
    死にゆく人を目の前にして、明日は我が身と思う人はどれほどいるのか
    自分がもし今ここでコロナに罹ったらこんな風に死んでいくのかもしれないと思った
    面白かった!

  • 裁判所内にイワン・イリイチの死の知らせ。2章からはイワン・イリイチが死ぬまでの回顧録。妻との関係は最悪。なぜだかわからないけれど最悪なのだ。お互いに殺し合っているよう。自分のしてきたことが全て間違いだったのでは・・・痛み、恐怖、孤独・・・(イワン・イリイチの死)
    妻は長期の売春婦・・・、ゆがんだ思想を持った男になにかしらどこかしら共感しながらも、絶対的に、違う、とも思う。

  • 文豪の人間観察力、社会を見る目に圧倒される。
    皮肉に、戯画的に書かれる生と死、男女が
    現実の一面を鋭く抉っている。

    特に「クロイツェル」は、
    列車内の会話からラストまで、
    引きつけられた。
    小説としても、けっして古びていない。

  • 後期トルストイっぽい、えぐい感じ

  • イワンイリイチの死を読了。
    死から始まり死で終わる。イワンの境遇に共感は覚えないが彼の死に対する恐怖や不安は何故か吸い込まれるように共感出来る。自分はどこまでも特別であるがそれは普遍である証明にも繋がる。
    共感出来ると書いたが、どこか滑稽で哀れな彼の死を他人事として見ている自分がまさしく序盤の葬式のシーンを彷彿させる。
    死生観について考える機会があるなら読んでおきたい一冊。

  • 『ド嬢曰く。』3巻を読んで読みたくなった2冊のうちの1冊。初トルストイ。

    新訳だからってのもあるんだろうけど読みやすく、「予審判事」が出てくるところとか貴族的な発言の諸々とかロシア文学読んでる感も多いに楽しめて、題材はどっちも重いどころじゃない(どっちも人の死の話で、家庭生活のどうしようもなさの話でもあり)のにぐいっと一気に読んでしまった。

    あとそろそろ気付いてきたけど、分厚い文学読むには、紙の本持ち歩くの面倒なので、ちょっとした空き時間でも開けるKindleはかなり向いているな。本棚に置いて威嚇に使えないのは残念だけど・・・

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著者プロフィール

一八二八年生まれ。一九一〇年没。一九世紀ロシア文学を代表する作家。「戦争と平和」「アンナ=カレーニナ」等の長編小説を発表。道徳的人道主義を説き、日本文学にも武者小路実らを通して多大な影響を与える。

「2004年 『新版 人生論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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