150回芥川賞記念号ということで、選考委員を務めたことのある作家による過去の選考の回想録が面白かった。
石原慎太郎が島田雅彦のことを小僧呼ばわりしていたり、誰それと誰それはいつも意見が対立して喧嘩していたなどという内幕話も興味深く読んだ。
こういうちょっとした短い文章でも、その作家の性格がはっきり現れるものだなあと思った。
小山田浩子「穴」:夫の実家の隣に引っ越した普通の主婦の日常風景かと思いきや、中盤からそれが珍妙な環境に変わってくる。日常と不思議な非日常の交錯を写し出す面白い短編。
村上春樹「独立器官 女のいない男たち」:世慣れて女性関係も経験豊富な美容外科医が、図らずもある一人の女を愛してしまうという話。村上春樹も60を越えているだろうに、小説は内容も文体も若いなと思う。男というものはいくつになっても、どんなに経験を積んでも、女というものの本質は理解できないということ。