- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4571390736801
感想・レビュー・書評
-
17歳の少年ユベール・ミネリ(グザヴィエ・ドラン)はカナダ・ケベック州の何の変哲もない町でごく普通に暮らしていたが、ここのところ自分の母親が疎ましく思えてどうしようもなかった。
洋服やインテリアを選ぶセンスのなさ、口元には食べカスをつけ、口を開けば小言ばかりと、母親の一挙手一投足が癪に触っていた。
母親を受け入れ難く思う一方、理由もなく苛立ってしまう自分にも嫌気がさしていた。そして母親のことを、愛情表現が素直にできず、ユベールのことをコントロールしたがるくせにそれについて罪悪感を抱くような自己矛盾があると分析する。
かつては大好きだった母親への憎しみは日増しに膨れていく中、何とか母親との関係を良くするために独り暮らしを提案するが母親に阻まれ、成績悪化のためにユベールは寄宿学校に入れられる。
「小さい頃は友達のように仲が良かったのに」そんな幼少期への郷愁と折り合いをつけるべく、ユベールはある行動に出る。
この作品で、「若き天才」という称賛を受けた監督デビュー作であり、グザヴィエ・ドランの原点と言える衝撃作。
愛情を素直に向けたいのに、言わないことがいつの間にか心の中に積もってしまう。大事なのに、相手の言葉に向き合えない。他人ならスルー出来る一言に、爆発しそうなほど怒りが沸いてトゲのある言葉を投げつけてしまう。離れようとしても、戻ってしまう。母親と息子のヒリヒリするような愛憎劇を、グザヴィエ・ドランの自伝的要素を織り交ぜて描かれる。
ただ母親と息子の愛憎劇の終着点が曖昧なのが消化不良だが、母親との関係に悩む人には共感出来るし、反抗的な息子の心情を理解するきっかけになる映画です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「母を愛せないが、愛さないこともできない」
互いに決して愛してないわけではないのに、分かり合えずに罵り、傷つけ合い、そばにいられない、17歳のユベール少年とその母親の姿を描いた作品。
思春期特有の、親への反発、苛立ち、そして、身勝手さや甘え、依存などが、うまく形付けられ、一つの流れとして表現されています。
そして、ユベールの恋人であるアントナンの家庭との対比も、実によくできている。
ユベール同様に、母一人子一人のアントナン少年の家。
アントナンの母は、若い恋人を家に連れ込んでコトに及んだ後、しどけない姿のまま平然と思春期の息子に引き合わせてしまうような人。
それなのに、そんなことはせずに必死に仕事や家事、そして息子対応をこなそうと頑張る筈のユベールの母と比べて、こちらほうが息子アントナンとの関係はどうやら良好。
ユベールの母が著しく動揺した息子の性的マイノリティな立場にも寛容で、息子の同性の恋人であるユベールと三人で自宅で一緒に食事を取ることをさらりと楽しんでさえいる。
これは、アントナン親子がユベール親子と比べて日々の会話が多いのと、別人格として互いを尊重する土台が出来ていることを示唆していると同時に、アントナンがユベールよりも精神的に自立し、自分の立ち位置を理解する成熟さを持っていることが大きいのかもしれない。
若さゆえのヒリヒリするような激しい感情や未熟さを写すだけでなく、その上先にある、視点を変えた広い世界までも同時に見せてくる手法。
たった19歳の時に、監督、脚本、主演を務めてこんな映画を作ったグザヴィエ・ドランの俯瞰的な視点と構成力、早熟な才能には、驚かずにはいられません。
そして、まるでフランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」(1959)へのオマージュであるかのような某シーン。
あ、これ、ドランはこの作品を「現代版『大人は判ってくれない』」として撮ったのかも、と思うと、旧作映画好きにはとても楽しい気持ちになる作品でした。 -
★~息子と母親・・・愛情のからまわり~★
母親を憎んだことは・・・
1秒か1年かは分からないが経験あるだろう。
母親も僕を憎んでいるんだという、17歳の息子ユベール。
そんな息子の態度にまんまとのってヒステリックになるママがまたスゴい。
不安定な時期の息子と正面からぶつかれば衝突は免れないなぁ。
寄宿学校の校長からおたくの息子が失踪した、
わが校では前代未聞の事件だという☎連絡に対し、
このママのブチ切れ方は、それはそれは凄い!閉口もんです。
散々喚き散らした挙句、
「あんたなんか赤いパンツ穿いて、
ピンクの靴下穿いているような男なんでしょ!!」って的外れな暴言。
例えそうだとしても、それのどこがいけないのぉ?
しかし、この親子よく喋る、
罵り合いでも会話があるうちは大丈夫だと思った。
最悪なパターンは無視だ。
無視し合う親子は救いがない。
監督、脚本、主演はグザヴィエ・ドラン19歳
脚本は17歳の時に書き上げ自ら主演を務める。
母子家庭、ゲイ、思春期・・・
自叙伝か -
心がとてもピリピリして痛いです。
母親への、主人公の自分自身でも持て余してるように思える愛憎がつらいほど伝わってくる。
母親も息子も言わなきゃいけないことを言えてない気がするのは親子、と思いました。愛してる、とは言ってるけどそういう事じゃなくて、っていう。。
でも一番近い家族がこの母親みたいな人で、しかも二人きりでの生活となると主人公がこうまで憎むようになってしまうのはわかる気がするな。神経が保たない。
グザヴィエ・ドラン、監督としても良いし俳優としても良い。この作品は10代で作ったんですね…すごい。
心の動きが繊細に描かれていました。
愛せないけど、愛さないことも出来ない。
家族って難しい。つくづく。
「今日僕が死んだらどうする?」「明日私も死ぬわ」 -
生々しいケンカシーン
愛情がゼロではないけれど、身内だからこそのぶつかり合い。
嫌なところが目に付き始めるとドンドン嫌になってくのは、家族といえどもだ。
むしろ家族という、心理的物理的に距離が近しくなってしまいやすい関係だからこそか -
ケベック映画てどんなもんなんだろー。ほう。
なんというか、若い映画であった。15年前に見てたらよかったかも。今はあまりの若さに近付くのが辛くて遠ざかってしまう。 -
ユーベルは素直でいいこだと思った!
お母さんのことが好きすぎて、全部受け止めてほしい!
でもお母さんと何かがうまくいかず、喧嘩の毎日。
私も昔こんな時期があったけど、今となっては思い出。きっとこの家族はうまくやっていけるはず!
お母さんと息子のキレ方がおんなじで 家族だなぁと思った!
-
母親を一度は憎んだことがあるだろう。
みんなそれを忘れているだけだ。
「あ、これ自分じゃない??」って思った。と同時に、みんな同じこと一度は思うんだなってちょっとホッとしてる自分がいた。
母親と息子が喧嘩で言い合いしてるシーンはなんだか昔を思い出されるようでグサグサ刺さった。
今だから冷静に見られる映画だなと思う。