- Amazon.co.jp ・電子書籍 (317ページ)
感想・レビュー・書評
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土台のしっかりしたレーベルとして定評のある中公新書のロングセラーで、ふだん新書を読まないであろう層の読書好きからも「面白い」の評が絶えない本書。どういうふうに面白いのかを確かめたいこともあって読んでみた。
欧州の植民地であったアフリカ諸国の多くが独立し、「アフリカの年」といわれた1960年からしばらく経った1960年代半ば、独立して間もないルワンダに中央銀行総裁として赴任を打診された、日銀バンカーの活動記録(1965-1971)。典型的な植民地経済をルワンダ国民自身が担う国民経済に移行していくプロセスが綴られている。
回顧録の形を取っているとはいえ、その書きぶりにはやはり実務家というか、読者を楽しませるエンターテインメント性のない淡々とした報告書色が濃いところに好感が持てる。現状を把握し、旧宗主国の外資に有利な経済を崩し、ルワンダの人が自力で経済の担い手となれるように心を砕く様子も誠実。外資優先を切り崩して、作物の流通や運輸業が広がっていくさまには、素直に「よかったなあ」と感じてしまう。「植民地でひと稼ぎ」モードの旧宗主国関係者の怠慢を非難するが、次代を担うルワンダの人に注ぐ目線があたたかい(ただし、職務に不誠実なルワンダ人官僚のふるまいや、エスタブリッシュメント候補たる学生が持ちつつある特権意識には容赦ない)。
著者ご自身の経験とともに、ご本人と別の専門家による増補2稿が収められているので、途上国経済への援助と自立をコンパクトにまとめたお手本のような本であるとともに、ルワンダを知る第一歩としての価値は今でも変わらないと思う。時間がない人は、大西義久氏の手になる増補2だけでも本書の概要が把握できる。というかこちらは必読。
読者層を広げたいためか、「異世界転生」といったライトノベル調の惹句を持ってきて煽る向きもあるが、そこはやはり的が外れているのではないか。発展の経緯と時期がたまたま違うだけであって、そこは人間の営みなのだから、ルワンダ社会をまるで異物のように扱うのは違う。それは服部氏が危惧した、欧州人の旧植民地に対する目線と何ら変わらない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かつてルワンダ中央銀行総裁として活躍した日本人がいた。
旧植民地から脱却を目指すアフリカの人々、通貨改革(切り下げ)、同時に税制改革による税収増と財政均衡、現地資本育成のための経済規制改革などの基礎を作り、6年後に現地人へと引き継ぐまでの記録。
その後、同国は発展を続けるが2000年代に入り、民族紛争に発展してしまった。
白人支配の虚構、民族資本による国内富の蓄積を進めて発展を進めた。気骨あり。 -
これはセリフの劇として映画化するべきだと思う。なんか、タンカきる感じで。そして、西欧の植民地支配が世界にどれだけの禍根を残したのかと思うと気が遠くなる。
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今読んでもたしかにぜんぜん色褪せていない……。
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日本銀行に20年以上奉職した著者の服部氏が、国際通貨基金に出向し、最貧国と言っても良いほど赤字に苦しんでいたルワンダの中央銀行総裁を6年間果たした実話。
服部氏は実際には中央銀行総裁職に留まらず経済再生に関わる施策立案にも携わる、名実共のルワンダの経済発展に寄与した人物。
明確かつわかりやすい筆致、何より表面に捉われず真に必要としている要素が何かを当時の知識層である外国人専門家ではなくルワンダ人に当たり自ら分析し、世界でも有数の日本銀行の銀行家として言葉通り誠実に職務に取り組んだその姿勢にこそ感銘を受けた。
そして最初の数ヶ月の任期を延長を重ねて計6年果たしルワンダの成長の礎をつみ上げた著者に尊敬の念を抱く。
その後の悲惨な武力闘争についても変わらず独自の分析に基づく大国に翻弄される諸国、その中でも信念を持ち人道斯くあるべしを体現したフランスの対比も今の世の中には意味のある増補だと感じる。
一読を勧めたい。 -
『ルワンダ中央銀行総裁日記』読み応えすごかった。1965年、日銀職員からルワンダへ中央銀行総裁として派遣される。何一つ整っていないカオスの渦中、一つ一つ実直にコトに挑みながら、国家改革という大義に向かっていく。何より心打たれるのは、人間としての徳の通し方。
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面白かった…が、経済の施策内容など、理解が追い付かず読み飛ばした部分が相当あった…。もっと細かく分かれば、更に面白いだろうに。だいぶ勿体なく思う。
大学時代に、開発経済学や途上国への援助などのテーマを少し学んだことがある。ハード面を手厚く援助しても、それを使える人間がいなければ何も定着しないとか、資金援助しても政治家や上の人間が搾取して終わってしまうとか、問題が山積しているのは分かったが、じゃあどうするの?というところは私には分からなかった(そこは自分で考えて実践すべきところだろうし)。その解答の一つが、この服部氏の業績なのだろう。
「援助は人と人とのやり取り」ということを、実際に実践できる人だったのだなぁ。前線でここまでやる中央銀行総裁って、いる?笑 -
ノーベル経済学賞がマクロ系に与えられたので。
輸出には内需の過剰分を当てるべきであって、国内経済が未熟な状態でいきなり輸出志向型経済を導入しても非効率的であるという部分(印象)には、大いに共感した。
金利という規律を失い、国債発行残高がGDP比で200%超を超え、財政赤字を垂れ流す(この辺は先進国共通かもしれないが)日本を見た時、著者はかつてのルワンダをこの国に見るかもしれない。 -
是非、全国民に読んでもらいたい。
異世界転生ものだと思って読めば、意外にすらすら読める。
「朝起きたら、発展途上国の中央銀行の総裁になっていた件。~日銀で得た知識で、国にはびこる寄生企業を駆逐して、国を発展させた~」みたいな感じ。
勧善懲悪もので、読んでいて気分も爽快である。
そして、この国が日本であったら、と想像してほしい。
国民が賢くないと、他国から搾取されるだけの国になってしまう。
今、日本は平和ボケの真っ盛りで、この本のルワンダのように他国から静かに侵略されている。
国民が賢くなければ国を守ることはできない。
国を守れない国民は、他国から搾取されるだけの奴隷になる。
危機感を持って本書を読んでほしい。 -
6年間のすごい仕事がまさに「日記」で丁寧に書かれている。著者はフランス語と英語で途上国の中央銀行総裁として様々な課題に取り組み、経験と知識と真面目な態度で素晴らしい成果をもたらした。大統領はじめとするルワンダ人の信頼、部下や関係者への厳しい目、ユーモア。会計の知識がない私はほとんど理解できないまま読んだと思うが、バス公社のエピソードなどはわかりやすかった。目に見えてルワンダ人の生活が良くなり、事業は黒字化し、日産は20台程度の小さな商売なのに技術者や修理などルワンダのために協力した。蔵相の更迭に関する記述も著者らしく、冷静に前任蔵相の優秀さを描写しながら更迭に至るまで、後任の問題点を挙げる。税金の補助で寮生活を送るエリート学生には「卒業後、官界に入れば課長職(俸給11700フラン)が保証されているのに反抗することが民主主義だとは」と手厳しく批判する。銀行業のスペシャリストであっても、ルワンダのミクロ経済のことは知る由もなく外国人商人やルワンダ商人の話を丁寧に聞き、素人のように素朴な納得を得ていく。職員の能力が低い赴任当初は自分で帳簿をチェックする。IMFの超エリートもこんなに実直に仕事をするんだと初心に帰らされる。著者は家族を呼び寄せたが、写真を見ると子どもたちは小学生〜中学生といったところ。ベルギー人向け外国学校で最初は苦労したが、だんだん成績上位になったとのこと。山崎豊子は不毛地帯で海外赴任するサラリーマンの家族を不幸に書いたが、著者も幼少期から海外で育って世界で活躍する人となった。大変であることは間違いないが、海外で学ぶことは意義のあることだと思う。
特筆すべきは数十年後のルワンダ内戦で著者が中央公論に寄稿した文章。先進国は無責任な武器供与をやめろと書いている。今のウクライナ戦争に大いに教訓になるのではないか。 -
ルワンダにとって1965年に日本銀行から真面目な、
まさに銀行員という感じの服部氏を総裁に迎えられたことは奇跡といってよい。
植民地宗主国の搾取に慣らされたルワンダを、
使命感の塊の服部氏の赴任がその後のルワンダの発展の礎を築いた。
痛快。
日本人を誇れる一書である。 -
ルワンダの中央銀行総裁として赴任した筆者が一国の経済を立て直していく話。金融関連の仕事でなければ分かりづらい専門的部分もあるが、そこは斜め読みしても十分面白い。
私は今インドネシアで仕事をしているが、筆者の捉えた現地人による外国人への眼差し、応対について、私も同じようなことを感じている。例えば外国人へのコンプレックスであったり、自信の有無等。また中央銀行が市井の銀行へどのような思いで指導、コントロールしているのかについても興味深い視点であった。 -
ルワンダの中央銀行に赴任した日本人の手記。
銀行に関係のない人でも、マネジメントに関心のある人は必読。
しばらく前に話題になって買っていたが、積読状態であった。タイトル的に重い話かと想像したが、意外とどんどん読み進めていくことができた。 -
こりゃ面白かった!1960年代のルワンダ中央銀行に赴任しルワンダを再建された方のお話。この著者である服部さんがルワンダという国づくりをしたと言っても過言ではない。自分では絶対に体験できないことを追体験できる本、これぞ本の醍醐味だなーと改めて感じました。
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ルワンダ中央銀行の総裁として、ルワンダの経済再建を題材としたドキュメンタリーを書いた本。自分としては初めて読むタイプの本だった。
最もよかったのは、金融、経済という視点で1つの国をどのように捉えて、どのようにことを進めていくかということを著者の間近から眺め見ることができた点だった。国の中央銀行が何をしているとか、外貨準備、預金準備とはどういう意味を持つのかとか、輸入、輸出とは国にとって国民にとってどういう意味を持つのか、作用するのか、ということを断片的にも知れたことがとてもよかった。 -
他国に派遣される技術者が、全て著者のような人だったらな…と、自戒を込めて考えさせられた本。
「ルワンダの事はルワンダ人に聞く」という姿勢を最後まで貫いていた氏の姿に、敬服させられっぱなしである。 -
アフリカのルワンダという国の立て直しのために、通貨改革(平価切下)を行うことになり、その実務を行う外国人として、そこの中央銀行総裁として赴任された著者。その最初からルワンダを去るまでの物語です。大所高所から指示するのではなく、ルワンダの人々とコミュニケーションを取り、何が本当に必要なのかについて、考え悩み実行されています。銀行業務等ほとんど知らない現地の人々(外国人顧問含む)の中にあり、著者の経験は一日の長があり、大統領の信頼という大きな権限も手伝い、思う存分に改革を進めていく姿は、英雄をみるようでした。実際は美化されているところもあるかと思いますが、ルワンダの成功のために行われた改革は現実で、学ぶべきことが多いと思います。著者の奮闘記と合わせて、実際の改革内容と、バランスよく、楽しんで読むことが出来ました。
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『実際にあったなろう系チート内政』っていってるひとがいたがそんな感じである。(この文言に異論を唱えていらっしゃる方がいたけれども、全くもってそのとおりであると思いました。しかし、私の当時の感想であるからして、反省を込めて残す)経済のことはさっぱり分からないので、途中に解説される経済的なことはウンウンいいながら読んだが、それでも非常に面白い。恐らく著者は近くにいたり上司だったら非常に大変なタイプとは思うが(失礼!)モーレツに人間的な魅力に溢れている。偏見のない人ではないんだろうけど、使える人は使う!無理な人は使わない!という断固とした実務家で、それを国籍も人種もまたいで出来るって、すごいよなぁ。本当に個人をしっかり見ている。結局、国を扱うと言っても相手は人なのだから。
そして特筆すべきは増補部分。
著者に感情移入して熱くなり最後まで読んだあとに他者からの分析が入るこの構造。ガツンと来ました。でもこれはなくてはならないよなぁ。
とりあえず、読み終わったあと、大使館HPでバス事情を調べました。定刻運行はされてない様子でした。