(日本人) [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (394ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 10年前に執筆された本なので、内容がちょっと古いな。ユニークな日本人論を期待して読んだのだけれど、そして確かに内容はユニークだったのだけれど、ちょっと違ったな。著者が碩学なのはよ~く分かるけど、いろいろ盛り込まれすぎていて、結局何が言いたいのか、肝心のところがよく分からなかった。

    著者は、日本人は世俗性がきわめて強い、「日本人は世界の中でダントツに権威や権力が嫌い」、「日本人はアメリカ人よりも個人主義的(自分勝手)」、日本人は「アジア的農耕民族社会にありながら血縁や地縁のしばりが弱い」、「日本人はもともと一人が好きで、誰からも束縛されたくないと思っている」など、およそ一般に言われている日本人像とは真逆の特徴をあげつらう。一方で、日本は極めて同調圧力の強い窮屈なムラ社会、イエ社会主義・ムラ社会型の無限責任=無責任体制である訳で、これって矛盾してないのかな。著者は「コインの裏表」だとあっさり片付けてしまってちゃんと説明してくれないのだが、どう考えたらいいんだろう??

    功利主義的であるがゆえに、他人から嫌われて損をしないよう慎重になり、お互い監視しあっているうちに同調圧力が高まったということなのかな? それとも、島国に同じ人種が長く住んでいて異質な他人と接することがないから、お互いの距離が近づき、期待値が高まってかえって近親憎悪ようにして血縁や地縁が弱くなっていったのかな?? 考え出したらますます分からなくなってきた。

    あと、「ハシズム」のくだり、要らなかったな。

  • 今までに読んできた「日本人論」にはない、カッコ付きの日本人論、切り口が斬新で面白かった。空気を読むのが日本人だと思っていたのに、むしろ世間、世俗である水に流される側とは。

  • 日本人は西欧人以上に合理的な考え方を好む民族であることを読み解いた本。

    統計学や社会学、心理学など様々な視点から、従来のイメージを覆す日本人像を浮き彫りにしていきます。

    超個人主義が日本人の本質だとしたら、人の輪に入るのがなじめないから日本人ぽくないと思った私。実は日本人の本質をしっかりと持っているということなのか。

  • 常識を塗り替えるような斬新な整理を提示しようという試みと思う。各論ベースで異論反論はあり得るのだと思うが、抽出されたストーリーは面白いと感じる。

  • 参考文献のほとんどを読んだことがあったので新しい学びはなかったが、これについて友人と議論できたのが楽しかった

  • ■評価
    ★★★✬☆

    ■感想
    ○日本人の見方としての切り口が面白い本。
    ○一方、性悪説的な引用も多い。スタンフォード監獄実験などである。humankindでは、これらの性悪説を根拠づける実験自体が、かなりファクトとして怪しいこと、ベニア理論としてプラセボ効果で世の中に浸透していってしまっていることを説いている。わたしは、人間の可能性を信じたいと思っているので、性悪説にすこしうんざりしてしまっている。
    ○深掘りの濃淡はあるが、視点として面白いため、気づきを得ることができた。この本で得た気づきを、その分野の専門書で更に深掘りしていくことで、更に理解が深まると思う。

  • アンリミテッドにて読了。非常に読むのが苦痛の本。とくに「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」を読み、著者の大前提が私の考えている事とずれていると思った後は、暫く積読にしてしまった。ちょっと考え方が違うのでもう橘さんの本は読まないようにする。

    星二つ。

    下記にハイライトした個所をコピペ:

    7
    黄色のハイライト | 位置: 358
    欧米の研究者たちは、「奇跡的な経済成長」の秘密を求めて日本を訪れ、そこに〝恥〟や〝和〟や〝表と裏〟などアジア的な農村社会のさまざまな特徴を 見出した。彼らはこれを「日本的特殊性」と見なし、それを真に受けた日本人も自分たちが「特殊」な民族だと考えて、さまざまな日本人論が流行することになっ


    黄色のハイライト | 位置: 362
    だが日本人は、ほんとうに特別なのだろうか。私たちの社会の文化や習俗、行動規範のなかで「日本的」とされているものの大半は、じつはアジア世界ではありふれたものにすぎないのではないだろう


    黄色のハイライト | 位置: 438
    藤原にとって近代とは汚れた時代であり、私たち日本人はひとびとが〝純粋〟に生きることのできた江戸時代以前に戻るべきなの

    メモ数学者、藤原正彦の「国家の品格」の主張。

    黄色のハイライト | 位置: 543
    貨幣空間の拡大(市場原理主義)というのは、世界の 歪みを平準化する運動のことだ。  経済のグローバル化は北と南の経済格差を解消させる巨大な圧力だ。しかしこの無慈悲な市場のメカニズムは、経済的な弱者を振り落とすことで先進国のなかの格差を拡大させていく(途上国でも、先にゆたかになったひとと貧しいままのひとたちとの格差が拡大


    黄色のハイライト | 位置: 551
    政治空間はベタな人間関係の世界で、貨幣空間はひととひととがお金でつながるフラットな世界だった。だから貨幣空間が政治空間を侵食すると、家族や学校などの共同体が崩壊して、愛情や友情が失われてしまう。これが、私たちが「お金は汚い」と直感的に嫌う理由


    黄色のハイライト | 位置: 554
    彼女とのデートで指輪を贈る代わりに現金を渡せば買春になってしまう。家事(シャドウワーク)に応じて時給でお金を払えば、妻ではなくお手伝いさんだ。このように、愛情空間にお金を持ち込むと人間関係はかんたんに破綻する(子どものテストの成績で小遣いの額を決める親がいるがこれは最悪の方法


    黄色のハイライト | 位置: 606
    福沢諭吉のような〝脱亜入欧〟を唱える明治の知識人は、西洋を鏡として「日本人」のイメージをつくると同時に、中国や韓国をオリエンタリズムの視点で眺めてい


    黄色のハイライト | 位置: 609
    オリエンタリズムは、「日本人とは何者か」を知るための、彼らにとってたったひとつの道具だったの


    黄色のハイライト | 位置: 687
    敗戦後の日本人論が「欧米とちがう日本人」を描いたのは、アメリカの研究者による日本人論を「直輸入」したから

    メモ菊と刀のこと。その影響は、、誰とも似ていない日本人の特異性、というものの見方。

    黄色のハイライト | 位置: 1,696
    日本人は、御利益のある神と自分の得になる権威しか認めない。ひとびとの価値観は、支配者の交代や、いわんや教育などではなにも変わら


    黄色のハイライト | 位置: 1,697
    日本人は有史以来、世間のしがらみに搦めとられながらも、現世を楽しく生きることがすべてだと考えてきたの


    黄色のハイライト | 位置: 1,720
    日本社会では「血縁」や「地縁」が重視されるというが、これはアジア的な農耕社会ではどこでも見られるものだ。逆に日本人の特殊性は、アジア的農耕社会にありながら血縁や地縁のしばりが 弱い ことに


    黄色のハイライト | 位置: 1,722
    近代化を阻む最大の障害はネポティズム(縁故主義)と贈収賄


    黄色のハイライト | 位置: 1,849
    このようにして、夫が会社コミュニティに、妻と子どもがママ友コミュニティに所属することで、日本的な二世帯同居が完成する。このふたつのコミュニティは混じり合うことがなく、日本の多くのサラリーマン家庭では、夫と妻(子ども)はまったく無関係な人生を生きているの


    黄色のハイライト | 位置: 1,943
    こうした歴史の大きなうねりのなかで、国家主義者である井上は「日鮮同祖論」に〝転向〟し、日本人と朝鮮人はもともと同じ民族なのだから、日本が朝鮮を併合するのは故郷に戻るのと同じだと主張した(小熊の指摘するように、これが当時の保守派の一般的な論調だった)。これは自虐(劣等人種)が極端な自尊(優等人種)へと転換する人間心理の典型で、ある意味じつにわかり

    メモ井上は当初、日本人は西洋人より劣っていると主張。日清日露ののちに転向。

    黄色のハイライト | 位置: 1,947
    それでは、井上の仇敵で日本の海外進出を当初から説いていた田口は、自らの〝予言〟を的中させたあと、どのような主張をしたのだろうか。  信じがたいことに、明治維新からわずか十余年で近代経済学の真髄を理解したこの超エリートは、「日本人の祖先は白人だ」といい出したの


    黄色のハイライト | 位置: 1,963
    グローバリズムには、経済的なグローバリズム(自由貿易)と政治的なグローバリズム(アメリカニズム)の大きなふたつの側面が


    黄色のハイライト | 位置: 2,064
    本来の自由貿易は、単一の世界政府が樹立され、国家が地方自治体となって、お金やモノだけでなく、国境を越えてひとも自由に移動できる世界ではじめて可能に

    メモ主権国家は自由貿易の妨げとの、著者の主張。

    黄色のハイライト | 位置: 2,067
    なぜこのようなグローバル市場が成立しないかというと、いうまでもなく、(日本を含む)ゆたかな国が門戸を閉じて移民を厳しく制限しているから


    黄色のハイライト | 位置: 2,075
    このようにしてゆたかな国は、貧しい国のひとたちを貧しいままに監禁することを望むように


    黄色のハイライト | 位置: 2,078
    こうした国々への経済援助の大半は賄賂として権力者の懐に納まるが、これを刑務所の看守への報酬と考えれば、先進国の資金はもともと「囚人」に分配されるはずなどなかっ

    メモ先進国が発展途上国の独裁者を支援している、とのこと。

    黄色のハイライト | 位置: 2,090
    自由貿易がうまく機能しないのは、それが国家という枠組みをはめられた〝歪んだグローバリズム〟だから


    黄色のハイライト | 位置: 2,175
    それに対してグローバルな交易社会だった古代ギリシアでは、ひとびとは農業だけで生計を立てているわけではなく、多数決による決定が不服ならポリスを去る自由が保障されてい


    黄色のハイライト | 位置: 2,235
    大航海時代の新大陸発見によって地球はひとつになり、最初はスペインやポルトガルが、次いでイギリスやフランスが、アフリカの黒人を奴隷としてカリブの島々に送り、カリブのプランテーションで生産した砂糖や煙草、綿花をヨーロッパに輸出し、ヨーロッパ製の銃や綿織物でアフリカの奴隷を買うという三角貿易を大規模に行なうようになっ


    黄色のハイライト | 位置: 2,503
    社会が複雑化してくるにつれて、ほとんどの問題がトレードオフに


    黄色のハイライト | 位置: 2,503
    トレードオフとは「あちらを立てればこちらが立たぬ」状況のことで、なにかを得ようと思えば別のなにかを失って


    黄色のハイライト | 位置: 2,591
    ほとんどの日本人は誤解しているが、アメリカ企業の能力主義は、利益を最大化するための仕組みではない。それは、「能力以外で労働者を差別してはならない」というグローバル空間のルールのこと


    ピンク色のハイライト | 位置: 3,173
    日本的官僚制では、政策はトップダウンではなく、現場からの積み上げによってつくら


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,174
     業界団体などが必要な政策を省庁に要望し、所轄課がそれをとりまとめて政策の原案をつくる。この原案は「合議(あいぎ)」あるいは「相議」と呼ばれる手続きによって、省内の関係部局の同意を取りつけ、局長間の合意を経て省案と


    ピンク色のハイライト | 位置: 3,177
    日本では、官僚制は閉じた存在ではなく、社会に深い根を持っている。これは社会の側が、業界団体や政治家を通じて官僚制を侵食しているということでもある。すなわち官僚制とは、日本においては、社会諸集団の結節点として機能しているの


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,188
    日本の政治のもうひとつの特徴は、政権党が自らを「与党」と名乗り、政府から距離を置く「政府・与党二元体制」


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,195
    その結果、「国対政治」で与野党が国会審議を紛糾させればさせるほど、官僚は対応に窮し、政治家の権限が拡張していくという奇妙な現象が起きることに


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,244
     日本は憲法の上では三権分立だが、実際は省庁が行政権ばかりか立法権と司法権を有し、予算の編成権まで持っている。さらには、各省庁は法によらない通達によって規制の網をかけ、許認可で規制に穴を開けることで業界に影響力を及ぼし、天下り先を確保して


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,250
    小沢一郎は、内閣法制局を廃止することで官僚から立法権を奪取し、国会を名実ともに立法府にしようとし


    オレンジ色のハイライト | 位置: 3,261
    「官僚支配」は各省庁が共同して日本を統治しているというイメージで語られることが多いが、これは事実ではない。官僚制の本質は、省庁同士、あるいは省庁内部の局や部、課のあいだの権限争いで、そこには共同の意思はなく、各自が自分たち(と関係者)の利益(なわばり)を最大化するためのはげしい競争を行なって


    青色のハイライト | 位置: 3,563
    本論に入る前に、「市場のグローバル化は世界を幸福にした」というシンプルな事実を再度確認しておき

    メモ著者の視点。バイアス。

    青色のハイライト | 位置: 3,640
    グローバル市場では、人件費の安い(貧しい)国で商品を生産し、それを購買力の高い(ゆたかな)国で販売することで、企業家は法外な利益を手にすることができる。この仕組みに気づいたグローバル企業の利己的な経済活動によって、〝人類の宿痾〟とまでいわれた南北問題が解消され始め

    メモ:詭弁。

  • Amazon オーディブルにて。「スピリチュアルズ」が良かったのでシリーズ作だというこちらも手に取ったんだけど、期待を裏切らず、面白かった。

    従来の日本人論が、オリエンタリズムの影響を受け、東アジアの農耕民族共通の性質や人類普遍の特性を述べているのにすぎないものだという主張。
    本来の日本人特有の性質とは、世俗的で個人主義的なものだとあり、納得した。

    東日本大震災に伴う原発事故の責任の所在が曖昧になったこと、無限責任は無責任でしかなく、東電関係者は世間からの無限のバッシングに遭う…という流れは心が痛んだ。当時の風評被害も酷かったよね…
    それ以外でも、やは。2014年の本だから、時事問題はやや古い。橋下維新、サブプライムローン問題、ウォール街を占拠せよ、TTPなど、懐かしい。

    とはいえ日本人論としては視点が幅広く冷静でとても面白かった。個人主義の日本人は新しい自由のユートピアに向かえてるかな。

  • 人気作家らしいが、Kindle版の半額セールに惹かれて購入。このタイトルは「日本人をかっこに入れる」という意味で、日本人とは実際どういう人達なのか、先入観なしに見直してみようということらしい。実際に読了してみると、作者の博学と分析力にに基づく説得力には脱帽せざるを得ない。これは是非とも読むべき本である。以下、目次に沿ってあらすじと感想(ネタバレあり)。
    <はじめに>
    日本人の意識の特異性として世界価値観調査(2005年)に現れたそれは1.自国のために戦わない、2.自国を誇りに思わない、3.権威・権力は尊重しないの3点が80カ国以上の中、ダントツの1位というもの。これを枕にしてどういう話になっていくのか、興味津々。
    <0 ほほえみの国>
     どんな時にもほほえむ、というのは日本特有では無く、東アジア地域に広がる共通習慣という話。「空気を読む」「遠慮」「上下関係」「気配り」なども程度の差はあっても同様。
    <1 武士道とエヴァンゲリオン>
    人間関係の重み:愛情・友情空間(政治空間)>>貨幣空間
    実際の大きさ:愛情・友情空間(政治空間<<貨幣空間
    政治空間では統治の倫理:権力ゲーム、ゼロサム→武士道
    貨幣空間では市場の倫理:お金儲けゲーム、プラスサム→競争と非暴力、グローバル化による世界の経済格差の解消、弱者の振り落とし
    エヴァンゲリオン人気は政治空間と貨幣空間の対立を背景とする
    <2 「日本人」というオリエンタリズム>
    エドワード・サイード「オリエンタリズム」
    新渡戸稲造「武士道」
    ルース・ベネディクト「菊と刀」
    土居健郎「甘えの構造」
    中根千枝「タテ社会の人間関係」
    →「日本人」はオリエンタリズムの相互参照によって創造されたもの
    <3 「愛の不毛」を進化論で説明する>
    因果律は脳にプレインストールされている
    →確率論や複雑系は理解しにくい
    男女の生殖戦略は一致していない=愛の不毛
    <4 「人間の本性」は進化から生まれた>
    近親相姦の禁止と女性の交換の規則
    贈与交換経済:互酬性が原則→たくさん与えて権力誇示
    戦争をする理由:他所から女性を奪ってくるため
    カニバリズムは禁忌ではない
    <5 コロンブスのタマゴ>
    ジャレド・ダイアモンドの仮説:温帯ベルトでの文明発達・伝搬
    狩猟採集社会→農耕社会へ:全員一致の妥協的社会
    生産力の向上と階級社会の出現→農耕文明:「身分」の固定、「進歩」概念なし
    日本人の特徴≒人間の本性+農耕社会の本性←農耕文明の特徴
    <6 東洋人の脳、西欧人の脳>
    デフォルト戦略の違い→文化的影響で形成
    <7 空気と水>
    拝啓マッカーサー元帥殿:長いものには巻かれろ主義
    イングルハートの価値マップでの位置:極端な世俗性=損得勘定
    水=世俗;「水を差す」=世俗の原理をぶつけること
    世間のしがらみに搦め取られながらも,現世を楽しく生きることがすべてという思想
    <8 「水」から見た日本論>
    日本人の特徴は「空気」よりも「水」にある
    ネポティズム(縁故主義)が弱い:血縁・地縁の放棄
    日本だけの「単身赴任」「ワンルームマンション」
    夫は会社コミュニティ、妻はママ友コミュニティにすがる
    →日本人の人間関係は「場」から生まれ、「場」がなくなれば消える
    →本質的に「無縁社会」
    <9 グローバリズムはユートピア思想である>
    分業と市場開放による生産性の向上
    グローバリズム(地球主義)と現実としてのグローバリゼーション
    <10 紀元前のグローバリズム>
    メソポタミア地域:古代ギリシアのロゴスとパレスチナのキリスト教の誕生
    デモクラシー(民主政)の特殊性:議論と多数決→農耕社会では無理なやり方
    自由・平等を掲げる国民国家の広がりと近代化
    <11 「正義」をめぐる哲学>
    災害時の「便乗値上げ」と買い占め問題
    チンパンジーも持っている所有権(自由)・平等・階級(共同体)
    →正義感覚の基盤=状況主義的な善悪二元論
    マイケル・サンデルの4つの正義:リベラリズム(平等)、リバタリアリズム(自由)、コミュニタリアニズム(共同体)、功利主義(=新自由主義)
    <12 アメリカニズムとはなにか?>
    グローバルスタンダードを基盤とする社会
    能力主義に基づく「差別」
    多文化相対主義の限界
    アメリカの「伝統」:リベラルデモクラシーに基礎を置く近代的共同体
    3つの勝利体験→アメリカ特有の善意と傲慢の文化
    <13 原発事故と皇太子狙撃事件>
    無限責任無責任→誰も責任を取らない社会
    <14 フクシマの空虚な中心>
    <15 ぼくたちの失敗・政治編>
    民主党による政権交代劇
    ブキャナンの「公共選択の理論」→国家債務の必然的膨張
    飯尾潤の「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」
    →民主党政権が打倒をめざしたもの
    <16 ぼくたちの失敗・経済編>
    1940年体制論@野口悠紀雄:国家総動員体制の継続
     日本型企業:終身雇用制+年功序列賃金体系
     間接金融(融資):メインバンクを中心と知る企業系列=財閥形成
     官僚体制:企業別カルテルと官僚の指導
     財政制度:間接税から直接税への切換;源泉徴収制度導入、地方交付金
     土地制度:借地・借家人保護、小作農保護
    →生産者優先主義+競争否定(平等主義)
    グローバルスタンダードを取り入れられない国内状況
    <17 「大いなる停滞」の時代>
    市場のグローバル化は世界を幸福にしたという事実
    →南北格差の是正に効果;道徳的に正しい結果
    新世紀になってから株式投資は利益を生まなくなったという事実
    借金だらけのアメリカ:株と不動産の上昇が前提の錬金術
    →2000年のインターネットバブル崩壊後の金利引き下げによる不動産バブル
    →2008年の世界金融危機と中産階級没落(外への国際化、内なる国際化)
    コインの裏表のティーパーティーと「ウォール街を占拠せよ」の若者たち
    食べつくされた果実@タイラー・コーエンの「大停滞」:
     無償の土地、技術革新、未教育の賢い子供
    ユーロ危機
    日本のデフレ・高齢化
    近代国家自体の問題
    <18 ハシズムとネオリベ>
    ハシズムとは純化したネオリベである
    ネオリベ@ミルトン・フリードマン:福祉国家の否定、小さな政府
    ネオコン@アメリカ:リベラルデモクラシーを世界に伝導by軍事力
    時代が求めたネオリベ:レーガン、サッチャー、クリントン、ブレア、小泉+竹中
    →ネオリベだけがポスト福祉国家の具体的イメージを描ける状況
    政治的には本来中立なネオリベ(功利主義)→愛国、伝統と結びついて大衆アピール
    市場原理主義+小さな政府+統治の徹底;但し、ハシズムは+超個人主義+伝統軽視
    →リバタリアニズムだけがネオリベに勝てる政治哲学
    <19 電脳空間の評判経済>
    お金は限界効用が逓減;評判は逓増→評判こそが人間が求める本当の価値
    自己増殖する資本主義→外的な制約のみが止めることが出来る
    外的な制約に評判経済がなる可能性:サイバーリバタリアンの描くユートピア
    インターネットでは評判が可視化される→ネットオークションの成功
    →道徳的に振る舞うことが評判を上げて得になるような制度設計
    ブログのコメント欄はネガティブコメントが集まりやすい失敗例
    ツイッターは良い評判を広めやすい
    Facebookの実名主義と次世代の評判獲得装置となる野望
    良い評判を集めようとするポジティブゲーム
    悪い評判を避けようとするネガティブゲーム
    <20 自由のユートピアへ>
    日本人とは世界で最も世俗的な国民→世界の歴史の最先端かも
    私中心主義;共同体から私への流れ→社会の液状化
    社会問題の個人問題化;自己コントロール社会
    →神経症・軽度うつ病・発達障がいの激増
    超越者を認めない日本人:クールジャパン
    伽藍に住む日本人;バザールに住む西欧人
    ロバート・ノージック「アナーキー・国家・ユートピア」
    →フレームワークとしての国家;その中の出入り自由な共同体
    →日本人が目指すべき到達点か
    <あとがき>
    典型的な日本人とは?
    →日本人の特徴とされてきたことの大半はヒトの本性か農耕社会の行動文法
    →世俗的(個人主義・功利主義)であることこそが日本人としての特色
    山岸俊男の日本人観
    ノナルド・イングルハートの「価値マップ」@橋本努
    →右上の空白こそが目指すべきユートピア
    国家に依存しない経済的に自立した自由な個人によるユートピア

  • 島国かつ農耕民族である日本人が地縁・血縁を重視する「村社会」的生き方をしているという考えは正しくなかった。
    実は、日本人は徹底的な合理主義・世俗主義者であり、どこまでも個人の自由を尊重する国民である(北欧人と共通している)。
    責任を取りたがらないのも、そうした「個の自由」への欲求の裏返しともいえる。
    地縁や血縁を離れて一人になった日本人が、「イエ」としての役割を果たす会社に閉じ込められることを望む。日本的雇用は、共同体としての側面を持つ会社のアイデンティティとも言える。
    そして、日本人こそが実は、世俗的でリベラルなユートピアに近いところにいる。
    会社という伽藍を抜け出しバザールで生きていくことができれば、日本人こそが真に自由で幸福な生き方ができる国民性を持つ民族である。

    …というのがざっくりとしたまとめ(主観あり)。
    最後の解説で全体がわかりやすくまとまっているのでこちらから読むのがお勧め。

    印象に残った点
    ・序盤に出てきたタイの話。日本は自国をよく欧米と比較して卑下するが、そうした日本の特徴はアジアでは珍しいものではない
    ・日本人が実は北欧人と近い価値観を持つこと(格差が少ないという共通点と関係がある?)
    ・会社がコミュニティになっているというのはすごく納得した。会社人生というのは言い換えれば会社へ帰属意識を求めているとも言える。コミュニティの多様化やオンライン化によって、会社のコミュニティとしての意義が崩れつつあるのも事実でしょう。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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