雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 16
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感想・レビュー・書評

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  • 「夜市」に次ぐ第2作にして初の長編も恒川ワールド全開。何と言っても「穏」の世界観がいい。物語のカギとなる〝空棲〟怪異「風わいわい」がユニークで、ネーミングも気に入った。舞台が移る後半、様相は一変し「トバムネキ」vs賢也の最終決戦は呆気なかったが、不気味さと懐かしさが入り混じった、叙情感あふれるダーク・ファンタジーを満喫。

  • 夜市の世界観が気に入り、こちらも読みました。
    読み終わってしまい、さみしいです。夢の中にいるような・・もう少しあの世界に浸っていたかった。ジャンルはホラーなんでしょうけれど、すごく上品。たくさん人が死にますが、上品なんです。こんな文章を書いてみたいです。こんな言葉を使ってみたいです。各登場人物の目線でかかれたそれぞれの章で、各人が抱えている事情背景が理解できました。そして私の読解力が正しければ・・・「私」こと、ケンヤと穂高の旅と、茜、5歳の少年、エリの出来事が同時進行していると思って読んでいましたが、茜とエリと少年のエピソードは「私=ケンヤ」が穏で暮らし始める前の出来事だったのですね?それでいいですよね?後半で物語が時系列で進められていない事がわかって、その結果つじつまが合い「そういうことだったのか」と合点がいきました。ただ、いろいろと疑問も残り、たとえば、茜の継母と穏のつながりの説明もほしかったところです。面白すぎて一言では感想が言いにくいです。あっという間に読んでしまいました。物語全体としてもとても面白かったですが、ひとつひとつの描写が、上品に怖くて「質のいい作品を読んでいる」という自覚がありました。
    最後、穂高とケンヤの姉が穏に帰る場面で残されるケンヤが不憫ですが、そういえばナギヒサを殺した罪で、穏に帰ったらケンヤは殺されるのだったっけ。仕方ないです。ケンヤが児童養護施設に引き取られるということでしたが、日本ってこういうところが安全でいい国だと思いました(なんのこっちゃ)。物語の中でケンヤは、下界の記憶がかすかに残っているようでしたが、どうか悲しい過去を思い出すことのないよう、これから先、下界で幸せになってほしいです。同じ著者の別の小説も読んでみたいと思います。しかし、外の雷がうるさいです笑。

  • 恩田陸のような世界観。こういう雰囲気は好きだな。
    話の先が気になって一気に読んでしまった。
    綺麗な文章。
    最後の終わらせ方もいい感じ。

  • 懐かしい感じもする少し湿った和風ホラー。こういう世界観は、坂東 眞砂子のほうが好きだけど、これはこれで良いのでは。若者にウケそうな、とても読みやすい本。

  • 面白かったけど、ちょっと怖い。ややホラー。
    でも、最近の子供達は鬼滅とかで慣れてるから平気かもなー。
    私は若干苦手な分野。
    しかしこれも異形生物のネーミングが面白い。

  • 最近沼っている恒川恒太郎の長編。
    本作は夜市に次ぐ第二作というが、これまでは短編しか読んできてなかったため、長編で恒川ワールドを保てるのかと少しドキドキしていた。

    穏、我々の世界とも共通が多いけど何かと浮世離れしている世界から物語は入っていく。霧に包まれたような展開。まさに期待していた恒川さんの世界が展開されていた。

    前半と後半で色が大きく変化する。ここまでストーリーを変化させてしまうと散漫な印象を抱いてしまいそうだけど、伏線という筋でしっかり繋げている。逆に恒川さんよろしくの1歩引いたような傍観者的な文体にうねりが出ていたと思う。

    更に沼りそうだなーと思う本でした。

  • この人の小説はホラーだけどパニック系のものではないので、読みやすい。徐々に明らかになる、自分の故郷の謎…心躍りますね。舞台設定はとても好みだったが、最後のラスボス(?)との決闘がショボい気がした。ここをもう少し広げてほしかったな。最後があっさりとしていたのが少し残念。

  • トバムネキはどうして500人も殺すまで穏から絶縁されなかったの?この疑問に対する回答があればもっとよかったのに。
    前半の穏での少年の暮らし、後半のトバムネキへの復讐の話、ちょっと乖離しちゃってる感じ。前半はよかった。後半も少年が復讐する理由はわかるし、鳥がムネキに恨みを持ってるのもわかるけど、穂高は関係ないよね。なんで穏をでちゃったかな。

  • (kindle unlimited利用)
    やはり最後はバトルになる作品。ただ相手が以前より弱っているのであまりインパクトはない。後半語り手が何人か変わるので集中が途切れる。最後もなんだかなあとなってしまう結末。「穏」世界の置かれた位置も途中から変わって、こちらとの行き来が結構多くなっているのはなんだかおかしいような。

  •  長編。田舎町でののどかな暮らしを送る子どもたち、しかし子どもは知らされていない伝承や風習、そして恐ろしい雷の季節によって平穏な暮らしが脅かされていく。
     作者の描き出す文化、風俗の巧みさが素晴らしい。子どもの目線に立ってみると実際の現実世界もこのように危うく怪しい世界に見えるのではないか。そんな体験を大人になってから出来ることが楽しい。主人公は成長の過程で子どもと大人、現実と非現実、生と死など対立する(しているように見える)世界のあいまいな境界をさ迷い歩きながら視界を広げていく。作者はそうした境界の向こう側にあるものを描くのが上手く、作品世界において見えないもの、聞こえないものが感じ取れるように思えた。
     物語としては割とオーソドックスで、度肝を抜かれるような意外な展開は多くないと感じた。その分、飽きることなく物語が進行し、構成の妙もあって最後まで面白かった。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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