鹿の王(上下合本版) (角川書店単行本) [Kindle]
- KADOKAWA / 角川書店 (2014年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (735ページ)
感想・レビュー・書評
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捕虜になっていた欠け角のヴァンが、ひょんなことから新たな家族を見出し、皆を守るために自らが犠牲になって皆を守ろうとする物語。
疫病との闘いと支配する側、される側の葛藤。
さらにいろいろな人々の思惑が絡んだ長編小説。
登場人物は多いものの一人一人の個性がわかりやすく描かれていて、混乱することもなく、読み切れた。
最後のところは、後日談的な部分があっても良かったのかなと思う。
タイトルを見たときと、読み終わったときの「鹿の王」の受け取り方がだいぶ違っていたことが、意外な感じがする。作者の意図にはまった感じ。
何はともあれ、面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
凄くいいです。読み終わるのが勿体ない位でした。この感じは久し振りです。読んでいて位本当に楽しかった。ヴァンと一緒にあちこち旅をした気分です。
この国の事情に慣れるまではちょっと混乱しますが、それ以上に登場人物が魅力的で、それぞれに感情移入できます。 -
2015年本屋大賞受賞作。上橋さんの本は初めて読んだけれど、ぐいぐい世界観に引き込まれてあっという間に上下巻読了。
ファンタジーなのだけれど、描かれている民族問題・宗教観・医療問題・動物との共生など、様々なテーマはファンタジー過ぎず、今私達が生きているこの世界でも起き得ること。欧米のファンタジーだとどうしてもキリスト教的価値観と翻訳で完璧な感情移入が難しいけれど、日本人の著者の本はすっと入ってきた。上橋さんは文化人類学者でもあり、親戚の方に医療監修もして頂いたそうなので、なおさら読んでいて納得感。
複雑に絡み合った思惑と諍いの中で、ユナのかわいらしさが救いなのだと思う。
「オタワル人は、この世に勝ち負けはないと思っているのよ。食われるのであれば、巧く食われれば良い。食われた物が、食った者の身体となるのだから」
民族が生き残っていくための真の強さを考えさせられた。 -
とてもよいファンタジーだった。
国家共生や異民族衝突、疫病問題なんかを描いているけど特によいのが生き物。
鹿や狼はもちろん、地衣類やウイルスにいたるまで様々な生命が複雑に関係しあって存在していることを教えてくれる。
ネーミングも秀逸。
これらが非常に分かりやすく読みやすく書かれていて気持ちいい。 -
圧倒的です。
緻密な世界観のファンタジーでいて、かつ、高い説得力。
それでいて飽きないスリリングな展開と魅力的なキャラクター。
とてもよかったです。 -
緻密な描写と素晴らしい物語。いい親子だった
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血のつながりや種族の絆が絡み合う複雑な物語。人は正しいことだけを選んで生きられない。
生の意味を考えながら私たちは何故生きるのか、本能に従う生き物は何故生きるのか。上橋さんの作品の根底をずっと流れているそんな根源的な疑問をここでも感じる。
家族を亡くしたもの同士が寄り添い、新しい絆を結んでいくところがとてもよかった。生きることは自分の遺伝子を残すとかいう利己的なものじゃないのよきっと。といいつつ血族との縁にもひきずられる揺らぎもまた人間らしいと思ってしまうんだけど。
電子版だけのカラーキャライラスト3ページがとても豪華。