陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 有名な、陰翳礼讃と、その他七つの随筆。どれも読みやすく、奥深く、そしてゆるく、素晴らしかった。
    以下、収録作品(特に好き→◎、好き→○)。

    ・陰翳礼讃
    ◎現代口語文の欠点について
    →美しい日本語の文章とは、ということをとことん考えている。社会人になってから、ビジネス文書の世界の理想の文章(簡潔で、誰が読んでも誤解のない文章)というものが「良い文章」だという考えになんとなく染まってきていたが、それはあるひとつの基準でしかないということを思い出した。折りにつけ読み返したい。
    ○らん(りっしんべんに頼)惰の説
    →洋室に火鉢を持ち込んだり絨毯に寝そべったりしてしまうのは、我々東洋人の持ち前たる「億劫がり」が心に根を張っているからだ、と。面白い。
    ・客ぎらい
    ・ねこ
    ◎半袖ものがたり
    実利主義の大阪人の着ている「半袖」なる衣服、江戸育ちの谷崎から見ると野暮そのもので内心馬鹿にしていたのだが、ある夏、暑さに耐えかねてそれを着てみたとき、単に暑さから解放されただけでなく、自分の心の中の変な見栄や気取りからも自由になった気がした、というくだりがとても好きだ。
    ・厠のいろいろ
    ○旅のいろいろ
    近鉄奈良線だかなに線だか忘れてしまったけど、奈良方面に向かう電車の風景好きだったなあ、ということを思い出しました。

  • 冒頭の「陰影礼讃」に書かれている日本的な美意識に対する著者の私観にグッと引き込まれて、「現代口語文の欠点について」までは非常に興味深く読んでいた。途中からダラダラとしたエッセイになり、得るものがあるような、大したないような、そんな感じの文章が最後まで続いたが、それがむしろ心地いいというか、読後感は総じて「おもしろい本を読んだな」という感じのものだった。

    ウェブ以降、特にTwitter以降は端的でシンプルな文章がとにかく好まれるが、ダラダラと冗長なふうに見せかけていながらも、魅力的な文章というのは今となっては貴重でそこにとても価値を感じた。そしてやはり、今となっては裏どりのとれていない根拠の薄い文章は価値がないとされるなか、後書きで指摘されているように、必ずしも正しい内容ではないにも関わらず、国内外の建築関係者にとって重要なテキストと見なされているらしいということにも、個人的には心を踊らされた。

  • 美というのは常に生活の実際から発達する

    美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える

  • 陰影とか実はあまり関係ない、面白いエッセイ。この本について「陰影ガー」とか言っている人は読破していない人なので要注意。

  • 谷崎といえば変態小説というイメージしかなかったんですが

    なんでしょう、この厠に対するこだわり。

    下が菜の花畑で人が歩いているトイレとかなんなんでしょう。高所恐怖症は用を足せませんよ、どうしてくれるんですか。蛾の羽のトイレとか、読者はもうどうすればいいんでしょう。

    ごめんなさい、文豪とまで言われているこの人のイメージはもう変態とトイレです。


    「陰翳礼讃」は陰影を礼賛していました。
    今時の◯◯寺ライトアーップ! 桜もライトアーップ! なんてみたら卒倒するでしょうね。



    そうそう。昔、国語の先生が「紹介状持って谷崎に会いに行ったのに居留守使われた!」と、なぜあんなにも憤慨しておられたのか、ようやくわかりました。
    ご存命ならば、
    「ベンガル猫連れて行ったら絶対会ってくれるよ」
    と教えて差し上げたかったです。あの時代はまだ存在していませんでしたけどね、ベンガル猫!

  • 【電子版】

  • 谷崎潤一郎による随筆集。本文庫について、表題にもなっている「陰翳礼讃」は「建築を学ぶ者のバイブルとして世界中で読み継がれる」と裏表紙にて紹介されており、あとがきも建築論的としての「陰翳礼讃」の批評となっていることから、建築論として「陰翳礼讃」を読む人間に向けての発刊となっていることがうかがえる。

    内容はさまざまな日本美について谷崎がその美しさを歌い上げるというものであり、軽妙な語り口も含めへらへら笑いながら楽しんで読み、また学ぶことができた。
    多少疑問に思うような主張もあったが、そのような切れ味のよさがまたよいものであった。

    建築・空間論としては、「陰翳礼讃」だけでなく、「旅のいろいろ」についても旅籠の描写を筆頭に参考になることが多くあったと感じた。

  • 時代には逆らえない・過去は過去で・・今は今・・・自分が生きている「今を大切に」・・・・自分の過去は「大切にしていた今」なのだ・・・・・ただ「辛い過去」は辛い

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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