ゴルゴタ (徳間文庫) [Kindle]

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  • 陸上自衛隊の中でも鍛え抜かれた精鋭が揃った特戦隊、その中でも最精鋭の真田聖人一尉の身重の妻とその母親が惨殺された。妻は輪姦された上腹部を切り裂かれ、胎児が取り出されていた。犯人は未成年の不良グループ5人。この5人は呆気なく逮捕され家裁に送致されたが、何故か「加害少年たちに殺意はなかった」、「十分に反省していて更正の可能性が高い 」とされ、無罪にも等しい保護観察処分で決着。政治的な思惑も絡んだ理不尽な処分に憤りを感じる真田は、ここに復讐を決意する。

    出来のいいB級映画のような感じといったらいいのだろうか、ストレスが発散できてスッキリした。単純に楽しめる娯楽作品だった。それにしても著者の武器・兵器の蘊蓄凄いな。

  • 自衛隊最強の男と謳われる主人公・真田聖人が、留守中の自宅に押し入った不良少年グループに、身重の妻と義母を惨殺される。
    だが、犯人の少年たちは無罪にも等しい保護処分を受け、野に放たれた。真田は自衛隊を辞め、復讐のための戦いを始める……という物語。

    「『さまよう刃』(東野圭吾)のラストに納得いかなかった人にすすめたい」――と誰かが書いていたが、たしかに、復讐譚としての痛快さ、徹底ぶりはすごい。

    犯人の極悪少年どもは一人残らず、彼らにふさわしい残酷な拷問の末に殺される。いやあ、痛快痛快!
    のみならず、彼らを保護処分にした法曹関係者、彼らを守ろうとする警察や暴力団(主犯格の少年が組長の息子という設定)など、真田の前に立ちはだかる者たちはことごとくブチ殺されていくのだ。

    終盤には、個人的な復讐の域を超え、〝たった一人の軍隊による(警察相手の)戦争〟の様相を呈していく。
    荒唐無稽な話ではある。が、ディテールは丹念に作り込まれていて、読んでいる間は非現実性を意識させない。

    銃火器・ミリタリー関連の細かすぎる描写は私にはついていけなかったが、マニアにはそこがたまらないのだろう。
    また、私のように無関心な読者から見ても、銃器描写によってストーリーが停滞することはなく、グイグイ読める。

    『さまよう刃』の過激版というよりも、大藪春彦の代表作『傭兵たちの挽歌』の流れを汲む作品だと思った。
    あるいは、『ランボー』第1作をさらに徹底させた物語(=途中で投降せず、とことん戦い抜くワンマンアーミーの物語)というか。

    本作は大藪春彦賞の候補にすら上らなかったようだが、こういう小説にこそ大藪賞が与えられてしかるべきだと思った。
    大藪は復讐のための戦いを描き続け、銃器をこよなく愛した作家であったのだから。
    個人の復讐がやがて「国家への復讐」の様相を帯びていく展開も、優れて大藪的だ。

  • 自衛隊特殊作戦群に所属する男は、少年犯罪者達に妊娠中の妻と義母を惨殺された。しかし事件は国の権力闘争に利用され、厳罰に処されるべき少年達はほぼ無罪放免となった挙げ句に批判の矛先は過剰武力を有すると自衛隊へと向けられた。男は復讐のためではなく、貫くべき「大義」を見失った国に問題提起と解決策を求めるために、日本史上最悪となる大規模テロを引き起こす。

    正直何も期待せずに読み始めたが、気がつけば夢中で読了してました!私こういう話好きですよ!笑
    登場人物はみんなステレオタイプなキャラ造形だし、ストーリーもほぼ予想を裏切らずに進行する。でも簡潔な描写、無駄のない展開、スリリングなスピード感が重なり合って、飽きる前に読者をぐんっと物語に引き込む力が常に漲っていた。
    最強の男が武双して作戦完遂させて逃げおおせる復讐譚、といういかにもラノベちっくなお話ではありますが、でもだからこそ一般文芸ではなかなかお目にかかれない至極単純に摂取できるカタルシスがあるわけでして、まさにそれこそがこの作品の魅力になっていると思うのです。それに『ゴルゴダ』という作品タイトルの意味も最後に明かされてなるほどなあと納得できたしね。ラノベで育った大人世代の性癖には特に突き刺さる娯楽作品だと思いました。

  • 初めての作家さん。
    フィクションだからこそ、日本の裁判、防衛、少年法、政治、学校でのいじめなどを痛快に批判・滅多切りにしてくれる作品

    主人公の真田は民事裁判の結果がでた瞬間、すべての決心をした---
    犯人に対する復讐だけでなく、システムに対する復讐。
    入念な調査と準備で目的を遂行する。手段は選ばない。
    ”真田はこの自衛隊の大義を見事に体現している。守るべきものに被害がおよんだ場合、必ず報復する。やられたらやり返す。それができないなら、自衛隊、そして真田聖人という人間に存在価値はなくなる。”


    とりあえずミリオタでちょっとどの銃だからどうとかそういうのはついて行けなかったけど (『同志少女よ敵を撃て』でも銃の知識凄かった・・・)、
    一気読み。不思議な感覚だった。というのも、序盤から読み手は犯人については分かっているのだから。問題提起はかなり良かったが、真田があまりにも感情が現れていなくて (最後のほうで子供時代のエピソードあり・・・)、自衛隊の特殊部隊のエリートってこんなかんじなんだろうか・・・なんて思ってしまった。


    「……日本では、銃は手に入りにくいと思われてる。でもそれは間違いだ。日本にいる暴力団員の総数がおよそ九万人。しかし、警察の調査によれば日本国内には二〇万丁存在する。すべての暴力団員が一人一丁ずつ持っててもまだ余ってる。じゃあ、余った分はどこにあるのかって話だ」
    ---えっそうなの????

    出てくる固有名詞とかが結構リアルなので、生々しさがある。
    「千葉大学医学部付属病院は、先端医療技術の開発や専門医、スペシャリストの育成に力を入れている。二〇〇七年に、新病棟が完成。日本最先端の医療環境を備えることになった。」ーーー千葉大関係者課と思ったら全然関係なかった(笑)
    千葉大といえば大学時代に海堂誠さんのチームバチスタシリーズはまったなぁ (最初の数冊)
    自衛隊の習志野とか出てくるので、そのあたりの取材からのつながりですかね?
    自衛隊や警察のこととかよく調べられているなぁと思いました。キャラもなんとなくイメージとあっている。

    ↓これはメインプロットではないけど、、、
    「人身売買の楽なところは、商品が向こうからやってくることだ。昔ほどでないとはいえ、日本で働きたがっている貧しい国の人間は山ほどいる。「日本で働かせてやる」というだけで、わざわざ渡航費まで用意するのだ。「バカな連中は本当にいる!」と要平は大笑いしたものだった。(中略)女は体を売り、男は労働力になる。醜い女やひ弱な男、そして子供などは臓器密売に回す。そういった人身売買で取り引きされるのは、日本国内だけで毎年二〇万人」=> 日本は人身売買・取引が実はかなり多いそう。

  • 妻子を殺された男の復讐譚。
    妙な説得とか変な改心とかなく、クソな人間はクソな人間で、もやもやせず読めるので個人的には楽しく読めた。終わりも好き。

  • 臨場感ある戦闘シーンがリアルで、一気に読み終えてしまった。設定はよくありそうなものだったが、内容は良かった。

  • 私的制裁を許せば秩序は乱れる。これは至極当然のことであるが、多くの車による殺人や飲酒運転による殺人が事故の重大さに見合わない罪で裁かれる度に、私的制裁も致し方ないのではないかと感じてしまう。物語は非現実的ではなあるが、私的制裁については理解の出来るものであった

  • 銃、戦闘好きが書いた最強の人、みたいな話。
    銃の描写は細かく多いけど、興味が持てずで全体的に薄い話に思えてしまった。
    主人公の行動に関しては納得できる。

  • 彼のやろうとしていることは許されないことなのに、なぜか彼を応援してしまう。

  • 読了。
    エンタメとしてストーリーは楽しめたが、小説であるが故の滋味みたいなものは皆無。ラノベか映画のノベライズを読んでるような手触り感。また、著者の銃器に関する知識は半端じゃないようで、その筋のひとには痺れる一連の叙述なのかもしれないが、ミリオタに掠りもしない自分にはいまいちピンとこなかった。ただ、ストーリー的には好き系なので、映画化されたなら観てみたい気もする。端的に言えば自衛隊版ランボー(笑)。

  • かなり勢いもあって小説としての完成度も高いと思うけど、読まなきゃ良かったと思うくらい悪夢を見るようになった笑

  • 少年法で裁かれなかった相手への復讐劇…と思いきや想像外の方向へと進んでいく。これは"テロ"の話だ。

    タイトルにもなっている「ゴルゴタ」が、"キリストが処刑され場所"として記憶され、多くの人々が知る場所となったように、誰かに何かを忘れさせないためには、"悲劇"が必要なのだ。

    重火器のトリビアが多いのも面白い。
    また、日本の"防衛"についても考えさせられる。
    "スカッとジャパン"的な復讐劇が読みたい人にはあまりオススメできないが、物語としては読み応えがあった。

  • ★3.5くらい。軽~く読めるエンタテインメント。自衛隊の特殊部隊隊員の復讐譚。

  • 凄惨なシーンが多いが独特のリーダビリティと登場人物たちのセリフの応酬が小気味良くスイスイ読める。最初の拷問シーンは不良ザマァの気持ちより、DVDを見せつけられる怖さが尋常じゃなくて拷問される少年たちの震えに取り込まれそうになった。やはり深見真なんだよなぁ

  • 優秀な自衛隊員だった真田は、その任務中に家族を惨殺されてしまう。犯人は未成年ということでほぼ無罪に等しい判決で片づけられる。しかし、その裏には、真田たちの行ったミッションに対する政治的な思惑が動いており、彼は見せしめ、もしくは人柱にされたのだった。 命かけて守った国は彼を裏切った。家族の復讐と大義のため、彼は淡々と闘いを開始する。
    と、いった話だが、かなり凄絶な物語だ。
    なのに、ひきこまれて一気読み。彼を追う刑事も良い味を出している。 この終わり方は次回作も期待できるのか。

  • 自衛隊員、真田の復讐劇。
    北朝鮮軍と戦っただけあり、頭脳、銃、格闘すべてずば抜けているから相手を警察が守るも成功できた。拷問等もがぐろいがスッキリ、はらはら先が気になる本でした。かなりお勧めです。

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著者プロフィール

2000年に第1回富士見ヤングミステリー大賞を受賞、2002年角川Next賞を受賞。代表作は『ヤングガン・カルナバル』シリーズ、『ゴルゴタ』、『GENEZ』シリーズなど。『魔法少女特殊戦あすか』原作、『ちょっとかわいいアイアンメイデン』原作、『王様達のヴァイキング』ストーリー協力。TVアニメ『PSYCHO‐PASS』1期、『PSYCHO‐PASS 劇場版』(ともに虚淵玄と共同脚本)にて、ニュータイプアニメアワード脚本賞受賞。TVアニメ『ベルセルク(2016)』シリーズ構成。

「2017年 『バイオハザード ヴェンデッタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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