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感想・レビュー・書評
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「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」の三部作。
「悪童日記」では子供の残酷さを、「ふたりの証拠」では若者のナイーブさを描き、「第三の嘘」では年齢を重ねたふたりがとても現実的になった。
亡命せざるを得ないくらいの状況だから混乱するのではなく、人間の内面というのは、本来このくらい混乱していて、筋など通らないものなんだろう。
すごい三部作を読んだと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校の友人に「2冊買っちゃったから」ともらった「悪童日記」。かねてから読みたいと思っていた本だったのでありがたかった。
大人が始めた狂った戦争の腐臭の中の「ぼくら」は生の人間そのもので、その行動や選択に清々しさすら感じていた。だが、「ぼくら」は2人ではなく1人の内面の複合性を表現していると思っていたので結末がかなり衝撃で、結局3部作全てを読むことになった。読めば読むほど??は増え、「第三の嘘」では混乱。解説を読んで少し納得した。
アゴタ・クリストフは母国ハンガリーを捨てた身であるが、亡命という選択が人のアイデンティティに残す傷の大きさを知らされる作品であった。
名著。 -
前2作の正体、そしてそれにまつわる新たな物語が展開される。3部作の3作目ではあるが、物語の連続性は途切れているという特殊な構成。
今まで登場していた魔女と呼ばれた祖母や、党書記のペテールなど片鱗をもつキャラクター達は出てくるものの、また違ったキャラクターが与えられ違う物語の登場人物となっている。
では、前二作はこの第三の嘘の作中作で、この3冊目こそが物語の真相なのだろうか。
そんなことはない。なぜならこれは「第三の嘘」なのだから。
アゴタクリストフが持つ物語の根源に創作という光を当てたときに映し出される影、それがこの3作の小説である。全ては根源を写し取っているし、光の当たり具合により全ては微妙に縁取れておらず、変形しているのだ。 -
『悪童日記』『ふたりの証拠』と読み進めてきて、何らかの種明かしがあるんじゃないかと思うと、さにあらず。
もしかしたら、話のつじつまが合っているという意味では、最初の『悪童日記』が一番つじつまが合っていたのかもしれない。かといって、この三部作、とくにこの『第三の嘘』が支離滅裂というわけではない。
結局のところ、この三部作は兄弟、両親、ふるさと、母語、愛した人といった何よりも離れがたい人やものからひきちぎられるように離れざるを得なかった痛みを書き続けているのだと思う。
最後に強く残ったのは、生きることは、どうしようもなく、別れることなのだということだった。 -
悪童日記の完結編。二人の証拠の続きが読めると思っていると平手打ちをくらったような感じになる。語り部が本当は一人なのか、双子だったのか、現実なのか夢や妄想の部分なのかを注意して読まないと迷子になりそう。それも含め秀逸で素晴らしい作品だった。
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『悪童日記』でガツンと衝撃受けて、急いで『ふたりの嘘』読んだら「えっ?」ってなったので、『第三の嘘』まで一気に読んでしまいました。面白いよと人には勧めることはできませんが、うまく言葉にできない魅力がある三部作でした。
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悪童三部作のなかではやや複雑な構成になっている。これはアゴダ女史自身の意識の流れを忠実に再現したものなのだろうか。すでに主人公たるクラウス(達)はかつてのような凶暴性はなくなっているが、その分周囲の人々の冷酷さや絶望感がことさら強調されているようにも読める。これがまさに女史が表現しようとした戦争の本質なのだろうか。
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読み始めは混乱して辛かったけど、いつの間にか読み終わってました。
最近記憶力が悪くなってきて、自分の頭が混乱しているのか、話自体が混乱しているのか、読んでいて分からなくなっていくのがしんどかったです。
この辛さというか居た堪れなさまで作者の計算だとするとすごいと思いました。
もう一度、第一部から読み返して答え合わせしたくなるんだけど、後書きの解説によるとそう言う謎解きをするお話ではないそうです。
面白かったんだけど、色々負担が多かったので星二つになりました。 -
つまり、この3部作は一つの物語じゃなかったということか。ミステリでも推理小説でもない。3作目で伏線は回収されず、伏線があらたに加わった形で終わる。登場人物や背景の一部分は重なるけれど、それぞれが違う物語。大きなノートは1人称複数、証拠は3人称、そして3つめの嘘は1人称単数でそれぞれがそれぞれの言葉で述べている。当然のことながら語られることも違うのだ。面白かった。
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