NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2014年 11月号 [雑誌]

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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感想・レビュー・書評

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  • 「心を操る寄生体」がすごく面白かった!
    面白いというと語弊があるでしょうか……目が離せませんでした(笑)
    マラリアは、蚊が媒介するという基本的な知識はあったけれど、
    まさか成長中のマラリア原虫が、蚊の行動を操っているとは。

    そしてネズミ→ネコに寄生するトキソプラズマにも驚き。
    ネコの尿の匂いをかいでも逃げないネズミ…
    小さな小さな原生生物がここまでの力を持っているんですね。
    不思議でたまりません。

    そして90億人の食シリーズは、
    お肉の話題、そして捨てられる食べ物について。
    農場から食卓へ届くまでに、食品の3分の1が廃棄されているという。
    規格外のもの、賞味期限が切れているもの。
    世界中では飢えている人が8億4200万人もいるというのに、
    貯蔵設備や輸送手段が整備されていないという理由で
    食べ物が廃棄されてしまうという現実。

    買ったものは無駄にしない、作ったものは残さず食べる。
    当たり前の事から始めなければならないと思う。

  • 今までこの雑誌の存在を知らなかったけど表紙にあるエベレストと肉を食べるジレンマ、捨てられる食べ物の文字に目を奪われて購入。

    素晴らしい写真と素晴らしい文章で読み応えがあった。
    とくに農産物、食についてグローバルな視点の話をなかなか聞く機会はないが、わかりやすくとても考えさせられる内容。
    ある物事がよくなったように見えてもここまで巨大に膨れた地球規模での食の話は必ず他に歪みが生まれる。
    ならばなにを選択するべきか。
    世界屠畜紀行で読んだときも思ったが、いつか肉関連でテキサスと野菜関連などでカリフォルニアには必ず行ってみたい。

    次に海外いくならアメリカかネパールを目指そう。

  • 「心を操る寄生体」
    つい先日Eテレの『スーパープレゼンテーション』で寄生虫のことを話してた。衝撃。でも寄生虫がいることで成り立つ自然界なんだよな。奥が深い。自我とか意識まで怪しむことになるのか。

    「悲しみのエベレスト」
    イモトの番組で注目が集まったな。シェルパってシェルパ族のことだったんだ。職業の名前だと思ってた。子供には同じ仕事をさせたくないと思っているとか。でも稼ぎは良いとか。簡単な問題じゃないけど、エベレストは先進国の登山者たちがレジャー気分で安易に考えちゃいけないんだろうなと思う。

    シリーズ「90億人の食」は今回も考えさせられる。アメリカ人が牛肉を食べなくなってもあまり問題解決にならないみたいに書いてあったけど、それにしても肉の量は多すぎだろと思う。食品廃棄物も考えさせられる。日本人の鮮度志向、確かに大いにあると思う。食べ物は大事にしたい。家畜の飼料にとかどんどん利用していいと思う。

  • 世にも恐ろしい 心を操る寄生体

    寄生虫やウイルスなどの寄生体のなかには、宿主の行動を操って、自分の繁殖のために奉仕させるものがいる。寄生という営みの、奇怪なからくりに迫る。

    文=カール・ジンマー/写真=アーナンド・バルマ
    グラフィック=マシュー・トゥワンブリー

     テントウムシは貪欲な捕食動物だ。生まれてから死ぬまでの間に、数千匹ものアブラムシを捕まえて食べるという。

     しかもテントウムシは、ほとんどの敵から身を守るすべをもっている。危険が迫ると脚の関節から出す有毒な体液は、口にすると苦く、襲った動物はすぐに吐き出してしまう。硬い羽に描かれた赤や黒のきれいな斑点は、実は捕食動物に向けた「後悔するぞ」という警告なのだ。
    テントウムシを操るハチ

     万全の防御策をもったテントウムシは、一見、怖いものなしのように思える。だが実際には、恐ろしい天敵がいる。その生きた体に卵を産みつける寄生バチだ。

     寄生バチの一種、テントウハラボソコマユバチは体長わずか3ミリほど。雌は産卵の準備が整うと、テントウムシの近くに飛んでいって、脇腹に素早く針を刺す。数種類の化学物質とともに注入されるのは、1個の卵だ。卵がかえると、ハチの幼虫は宿主となったテントウムシの体液を吸って成長していく。

     テントウムシの体は少しずつむしばまれていくが、外見や行動に変化はなく、ひたすらアブラムシを食べ続ける。だが、いくらアブラムシを食べても、その栄養はハチの幼虫に吸いとられてしまうのだ。約3週間後、ハチの幼虫は宿主の体を離れて成虫になる時を迎え、テントウムシの外骨格の割れ目の間を、体をくねらせながら出てくる。

     驚いたことに、寄生バチの幼虫が体内からいなくなった後も、テントウムシは依然としてこのハチに操られている。幼虫がテントウムシの腹部の下で繭(まゆ)を作っている間も、動かずじっとしているのだ。
    意思を奪われハチを守る

     テントウハラボソコマユバチが繭から羽化するまでの間は、外敵に狙われやすい。クサカゲロウの幼虫などは、このハチの幼虫が大好物だ。だがこうした捕食動物が近づくと、テントウムシは脚をばたばた動かして追い払ってしまう。まるで寄生バチのボディーガードだ。成虫になったハチが繭を破って飛び立つまでの1週間、テントウムシはこうして護衛の役を務める。

     意思を奪われていたテントウムシの大半は、ハチの羽化後にようやく死を迎え、その行動を支配してきた寄生バチに対する奉仕を終えるのだ。

     ホラー映画にありそうな奇怪な物語だが、決してフィクションではない。裏庭や空き地、農地、草原など北米のあちこちで、寄生バチはテントウムシをゾンビに変え、ボディーガードにしてこき使っているのだ。

     このように宿主に取りつく寄生虫や菌類、ウイルスなどは、まとめて「寄生体」と呼ばれる。テントウムシ以外の昆虫はもちろん、魚類、哺乳類に至るまで、驚くほど多くの生物が、実は寄生体に行動を支配されていることが明らかになっている。宿主にされた生物は、たとえ体内を食い荒らされて死に至る運命にあったとしても、寄生体に仕え続ける。

     彼らはなぜ、自らをむしばむ敵と戦わず、逆に生かすために全力を尽くすのだろうか。研究者たちは、宿主の行動を操る寄生体の遺伝子を特定しつつある。

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

     虫好きの方もそうでない方も、本誌を読んで気になったら、ぜひ電子版をお試しください。初めは「ぎゃ~!」とか「わ~!」とか叫んでしまいますが、寄生虫が幼虫の体を破って出てくるさまを動画で見ていると、自分の悩みなんか小さく見えてきます……。(編集H.O)

    悲しみのエベレスト

    2014年4月に、エベレストで大規模な雪崩が発生。シェルパ族をはじめ山で働くネパール人16人の生命が奪われ、登山にかかわる人々の暮らしは一変した。

    文=チップ・ブラウン/写真=アーロン・ヒューイ

     4月18日。世界最高峰エベレストの登山史上、最悪の1日がまさに始まろうとしていた。
    シェルパ族のふるさと

     日に焼けた頬に黒髪のニマ・チリンは29歳、ネパールのクムジュン村出身のシェルパ族だ。中国の登山隊に雇われた彼は、午前3時、重さ30キロ近い調理用ガスボンベを背負って、標高5270メートルのエベレスト・ベースキャンプを出発した。

     巨大な氷がひしめく、はしごだらけの危険な急斜面をどうにか通過し、午前6時頃には、「フットボール・フィールド」と呼ばれる開けた緩斜面にさしかかった。その先には再び巨大な氷塊群と、今にも崩れそうな氷の塔が行く手を阻む難所が待つ。

     フットボール・フィールドを過ぎたニマ・チリンは、高さ12メートルほどの氷の崖の下に着いた。アルミ製のはしごを縦に3本つないだ三連はしごがかかっているが、重い荷を背負い、アイゼンをつけた登山靴で登るのは容易ではない。
    はしご待ちで渋滞したシェルパたち

     厄介なはしごをようやく登りきった彼は、目の前の光景にげんなりした。シェルパが何十人も、氷棚の上で渋滞していたのだ。その先の氷の割れ目にかかった二連はしごを下るのに、行列ができている。
     その朝、氷が動いて、はしごの下側を支えていたアンカーが外れたため、人の流れが滞ってしまったのだ。その後はしごは固定し直されたが、午前5時にここに着いた者は大渋滞に巻き込まれた。1時間後にニマ・チリンがやって来たとき、アンカーは再び外れていた。

     ネパールでは危険が迫った際に、甲高い音が聞こえることがあるという。「耳泣き(カン・ルヌ)」と呼ばれる耳鳴り現象だ。このとき、ニマ・チリンの耳が泣いた。この音が聞こえたら、ただ事ではないことは、エベレストでの過去の経験から心得ていた。

     でも、どうする?
     ベースキャンプに無線で連絡をし、応答した料理人に告げた。耳が泣いているから、荷物をフィックスロープにくくりつけて自分は下山する、と。周囲にいたほかのシェルパたちから、どうしたのかと聞かれ、こう答えた。

    「耳が泣いてるんだ。何か悪いことが起きてるようだから、自分は山を下りる。きみらも下山したほうがいい」。午前6時15分頃のことだったと記憶している。

     ニマ・チリンの耳が泣いたという話は、たちまちシェルパたちの間に広まった。三連はしごの上にいた5人は荷物を捨てて下山を始めた。カナダの山岳ガイド会社に雇われた2人は三連はしごの手前にいたが、足が凍傷になりかけていたので引き返した。だがそれ以外の者は、耳が泣こうと足が凍えようと予定は変えられないと思っていた。

    「ニマ・チリンに行くなと言われた」と話す33歳のミンマ・ギャルツェン・シェルパは第1キャンプに向かっていた。
    「でもお客さんの機材は運ばないと。私が通った6時34分には、下りの二連はしごは大丈夫でした。ただ経験の浅いシェルパたちの動きがひどく遅かった」

     ベースキャンプとアイスフォールはまだ暗かったが、シェルパの神々が住まう頂上は朝日に輝いていた。どこから見ても申し分のない、エベレストの美しい朝だった。その11分後までは。

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

     世界最高峰の混雑ぶりを2013年6月号「満員のエベレスト」でお伝えしましたが、翌2014年の春、痛ましい事故が起きてしまいました。雪崩で亡くなった16人全員が、生活のため、家族を養うために山で働いていたネパールの方々だったことを知るにつけ、なんともやりきれない気持ちになりました。
     丹念な取材で事故前後の経過を浮き彫りにしたレポートもさることながら、過去にエベレストで起きた死亡事故の発生地点を高度別にプロットしたグラフィックには、いろいろと考えさせられました。小さな図版ですが、現代の商業登山が、シェルパ族をはじめとする現地スタッフの地道な(そして危険と隣り合わせの)働きに支えられていることを、ありありと物語っているように思います。
     せめて今回の事故が、地元ガイドの待遇改善や安全対策のよい契機となってくれればと、願わずにはいられません。(編集H.I)

    シリーズ 90億人の食 肉を食べるジレンマ

    「残酷だ」「健康によくない」「地球環境を破壊する」といった、牛肉をめぐる主張は果たして正しいのか? 生産現場を訪ね、答えを探した。

    文=ロバート・クンジグ/写真=ブライアン・フィンク

     人類は、この先いつまで肉を食べられるのだろうか?

     肉を食べるためには動物を殺さなければならない。食肉、とりわけ牛肉は大型車とたばこを合わせたくらい有害で、動物のため、人間の健康のため、さらには地球のためにも、肉の消費を減らすべきだ――そんな主張も聞かれる。
     そうは言っても、肉はおいしいし、栄養価も高い。食肉の需要が世界で急拡大している現在、生産量を増やすことが急務だ――そう考える人もいる。

     牛肉の大量生産に対する風当たりは強い。温室効果ガスを大量に排出し、農地をやたらに使い、貴重な水を汚染し、浪費しているというのだ。しかも、おびただしい数の牛を狭い囲いに閉じ込め、不自然な生活をさせた揚げ句、早死にさせる残酷な産業だという。本当にそうなのか。大半の消費者は牛肉の生産現場についてほとんど何も知らない。2014年1月、私は食肉の問題を考える長い取材の一環として、米国テキサス州のラングラー肥育場で1週間を過ごした。
    牛1頭からとれる肉は1800食分

     火曜の朝6時45分、肥育場から旅立つ牛を見つめる私の横には、肉牛肥育の大手カクタス・フィーダーズ社の最高執行責任者ポール・ディフォーがいた。同社はラングラーをはじめ、9カ所の肥育場を傘下に置き、年間100万頭の肉牛を出荷している。
     この朝も数十頭が大型の輸送トラックに乗り込もうとしていた。2段の荷台に、それぞれ17頭ずつ収容できる。牛は行き先を知らないはずだが、荷台に入る手前で、先頭の牛が進むのを嫌がった。

     カウボーイの巧みな誘導で、牛たちの渋滞はほどなく解消した。重さ20トン近い「生きた貨物」が、上下の荷台に収まる。運転手が荷台の扉を閉め、運転台に乗り込むと、トラックは出発した。

     私はディフォーとともに小型トラックで後を追った。牛の最後のすみかだった囲いには、すでに重機が入り、地面にこびりついた5カ月分の糞をはぎ取っていた。輸送トラックは一路、州内の食肉処理場を目指していた。

    「さっきトラックに載せた牛1頭で、1800食分の食事がまかなえます」とディフォーが言った。「すごいと思いませんか。あのトラックには、6万食分の肉が載っているんですよ」

     ディフォーはテキサス州ヒューストン北方の小さな農場で育った。食料を自給し、余った分を売る生活だ。「牛も鶏もヤギも飼っていました」と彼は話す。数ヘクタールのエンドウマメ畑もあり、子どもの頃はよく収穫を手伝わされた。当時の生活に戻りたいとは思わないという。

     そんなやり方では世界の食料需要を満たせず、人々の生活水準を上げることもできないと、ディフォーは言う。食料供給を安定させ、生活を豊かにするには、科学技術を利用して生産性を上げ、無駄を減らす必要があるというのだ。

     ラングラー肥育場には、こんな標語が掲げられていた。
    「飼料のエネルギーを、できるだけ低いコストで可能な限り多くの牛肉に転換すること」

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

    「牛肉を食べることは是か非か?」という問いの答えを探す特集ではありますが、写真を見ていると、無性に牛肉が食べたくなります。特に、「完全自然派」バーガーにかぶりついている4歳の女の子の写真。こんなにおいしそうに食べる場面を見せられたら、たまりません。編集中、この写真を見るたびに、ハンバーガーが食べたくなりました。でも、量はほどほどにしておかないといけませんね。特集の筆者は取材中に生産者自慢のステーキを食べ過ぎて、健康診断で引っかかったそうですが、私もそうならないように気をつけます。
     来月はシリーズ「90億人の食」の最終回。なんだかんだ言っても、食べることは楽しいこと。古今東西の「おいしい場面」をたっぷり紹介します。(編集T.F)

    シリーズ 90億人の食 捨てられる食べ物

    生産地から食卓へ届くまでに食品の3分の1が捨てられ、世界の食品廃棄量は、年におよそ13億トンにのぼる。何か改善する方法はないだろうか?

    文=エリザベス・ロイト

     国連食糧農業機関(FAO)の推定によると、全世界で人間が食べる目的で生産された食べ物のうち、農場から加工場、市場、小売業者、飲食店、家庭の台所へと流通していく間に、3分の1が毎年捨てられているという。重量にして約13億トン。これだけあれば30億人を十分に養うことができる。
    米国の典型的な4人家族が1年間に捨てる食品は重さ500キロ以上。その量を実感するため、ウォルト家のダイニングに並べてみた。家族をもう一人養えるほどだ。(Photograph by Robert Clark)

     廃棄される理由は地域によって異なる。先進国では、小売りや消費の段階で食品を廃棄することが比較的多い。発展途上国では、消費者の元に良い状態で食料を届けるインフラが整備されていない場合が多く、これが生産から消費に至る各段階や流通過程で生じる廃棄の大きな原因となっている。

     どのような状況であれ、捨てられた食品が誰かの胃袋を満たすことは二度とない。食べ物を無駄にするのは、それを生産するのに使われた燃料や農薬、水、土地、労力も大量に無駄にしたのと同じだ。2007年には、誰にも食べられずに捨てられた食べ物を作るために、合わせて14億ヘクタールの土地が耕された。これは、カナダの国土面積よりも広い。ごみとして埋められた食べ物からは、二酸化炭素よりもはるかに強力な温室効果をもつメタンガスが発生し、環境への負荷が高まる。世界中で捨てられる食べ物全体を一つの国と仮定すると、そこから排出される温室効果ガスの量は、中国と米国に次ぐ世界第3位となるのだ。
    半分は捨てていたアフガニスタンのトマト、廃棄率5%に

     もし、世界各地で起きている衝撃的な規模の食品廃棄に救いがあるとすれば、改善の余地が十分あるという点だろう。
     たとえば、発展途上国では援助団体が小規模農家に対して、野菜や果物の乾燥や保存に適した道具、保冷や梱包のための簡易装置を提供している。そのおかげもあって、捨てられる食品は減りつつある。アフガニスタンのトマトを例に挙げると、無駄になる量は50%から5%まで減少した。

     米国では、メディアや政府機関、環境保護団体が食品の廃棄に注目しているおかげで、捨てた食品を計量する飲食店が増えている。これは食品廃棄を減らす上で、極めて重要だ。
     ほかにも組織的な解決策が出てきている。食品廃棄の削減が国の最優先課題になっている英国では、「フィーディング・ザ・5000」という草の根運動が進行中。良質だがスーパーマーケットの規格から外れた農産物を農家や梱包業者から集めて調理し、5000人に無料でランチを提供している。

     食品の無駄を減らす第一歩は、人々にそうした問題があることを知らせ、理解してもらうことだ。知らなければ、改善は望めない。食品の値段が上がるにつれて、人々の考え方は少しずつ変化しつつある。

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

     なんとも居心地の悪さを感じながら、この記事を編集した。居心地の悪さは、自分が食品廃棄に加担しているからだろう。わが家の冷蔵庫の中にある食べ残りの野菜や瓶詰のトマトソース、キャビネットには数年前のセールのときに買った缶詰やレトルト食品・・・。年に数回、「えいやっ!」と食品の整理をする。整理というと聞こえがいいが、要は、ずっと食べずに放置してある食品を処分するということ。罪悪感がないわけではないが、すっきりとした気分になることも確か。でも、やはり間違っている。「食べ物を粗末にすると、罰が当たるよ」。祖母によく言われた言葉を思い出した。(編集S.O)

    米国南東部 湿地帯が抱く歴史と自然

    かつて稲作で栄えた米国サウスカロライナ州の沿岸部。一帯をうるおす川の頭文字からACE流域と呼ばれる湿地帯には、豊かな歴史と自然が今も息づく。

    文=フランクリン・バローズ/写真=ビンセント・J・ミュージ

     今から数百年前に稲作で栄えた、米国のサウスカロライナ州。その南東部に位置する湿地帯には、豊かな歴史と自然が今も息づいている。

     アシュプー川、コンバヒー川、エディスト川という3本の川が流れるこの一帯は、その頭文字をとって、ACE流域と呼ばれている。ここでは原生の自然に比較的近い環境に、豊かな生態系が保たれている。
    稲作が生んだ独特な景観

     陸地と陸地の間に、大小の川や湿地帯が血管のように張りめぐらされた一帯は、平らな島々が集まった群島のようにも見える。ACE流域のこうした景観を生んだのは、アメリカ独立戦争のはるか以前から行われてきた稲作だった。
     最も初期には、幅の狭い沼地の水をせき止めて貯水池を造り、しかるべき時期に水を流して低い土地を灌漑した。後になると、潮汐に伴う淡水の動きを利用する複雑なシステムも使われるようになったが、この方法が可能な地域は限られていた。

     灌漑するには、まず沼地を堤防で囲い、川の水が入らないようにする。次に取水・排水用の門を堤防に設置。これにより、田植えの際には排水し、その後は稲の成長に合わせて水量を調整することができた。9月の収穫期には田から水を抜く。この灌漑システムによって大規模な稲作が可能になり、多くの農園主の懐を潤した。

     それから長い歳月を経た今も、ACE流域は昔ながらの景観をとどめている。4カ所ある州立の野生生物管理区には、ハンターや釣り人、バードウォッチャーたちがやって来る。
     現在ACE流域で作られている主な作物はトウモロコシだ。畑は夏の間はずっと水を抜いてあるが、秋になると、未収穫のトウモロコシを残したまま畑に水を入れる。カモがそのトウモロコシを食べに集まり、ハンターがそのカモを捕るのだ。

     ACE流域を管理するサウスカロライナ州自然資源局の生物学者ディーン・ハリガルの案内で、流域の森を歩いた。川を見下ろす小高い丘に、なかば倒れかかったオークの古木が生え、周囲には石棺がいくつか置かれていた。
    「あの湿地の縁に見える水路は運河でしょう。収穫した作物を川へ運べる程度の幅があったはずです。この地で充実した生活が営まれていたことがわかります」

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

     米国の特集では珍しい、静かでしっとりとした空気感をたたえた写真が印象的。南東部にこんなにも自然豊かな湿地帯があるとは、新たな発見でした。筆者いわく、このACE流域にあるベア島の野生生物管理区は、「米国のどこよりも野生動物の種類と数が豊富」とか。この辺りでは幽霊やピューマがいるという噂があるそうですが、両方いてもおかしくなさそうな雰囲気です。(編集M.N)

    雪降る山に生きる モロッコのサル

    遊び好きかと思えば、物思いにふける。愛されているが、絶滅の危機にある。バーバリーマカクはいくつもの“顔”をもつサルだ。

    文=レイチェル・ハーティガン・シェイ/写真=フランシスコ・ミンゴランス

     バーバリーマカクは、いくつもの“顔”をもつサルだ。遊び好きかと思えば、物思いにふけったりもする。気性が激しい反面、臆病なところもある。人々から愛されているが、絶滅の危機にもさらされている。

     霊長類のなかでサハラ砂漠以北のアフリカ大陸にすんでいるのは、人間を除けばバーバリーマカクだけだ。彼らは環境の変化を生き抜き、アジア大陸以外に生息し続けている唯一のマカク属でもある。
     だが、このサルが注目を集めるのは、分布域が珍しいからというだけではない。
    古代エジプトやローマでも愛されたサル

     この地を旅した人々は、赤褐色の厚い毛皮と利口そうな目をもつ、尻尾がほとんどないこのサルに魅入られてきた。人間に捕獲されたマカク属のサルの骨は、ポンペイの灰の中や古代エジプトの地下墓地からも見つかっている。

     近年、バーバリーマカクの分布域は狭まり、ジブラルタルにいる半野生の集団を除けば、モロッコとアルジェリアの一部の森に生息するだけとなってしまった。彼らは現在も密猟者に狙われている。毎年300頭ほどの子ザルがモロッコ国外に違法に連れ去られ、わずか6000頭ほどを残すのみとなっている。

     写真家のフランシスコ・ミンゴランスは、中央アトラス山脈の高地で、1年以上かけてこのサルの群れを撮影した。
    「愛情をこめて子ザルと接する姿は、ほとんど人間と変わりませんよ」と彼は言う。「死んだ我が子を4日間も腕に抱いていた母ザルもいました。いたたまれない気持ちになりました」

    ※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年11月号でどうぞ。
    編集者から

     姿かたちといい、雪山で暮らす習性といい、親子の情愛といい、ニホンザルにそっくりだなあと思っていたら、それもそのはず、ニホンザルとバーバリーマカクは、同じオナガザル科マカク属に分類されるサルなのです。ユーラシアの東端からアフリカの西端まで、広い生息域をもつマカク属ですが、多くの野生動物の例に漏れず苦難を強いられています。
     特集で取り上げたバーバリーマカクに関していえば、環境の変化や人間による捕獲によって、種の存続が危ぶまれるレベルまで頭数が減ってしまったといいます。西洋では古くから愛されており、日本人も親近感を感じてしまう人気者ですが、それでも生きていくのは楽ではありません。その貴重なポートレートは必見です。(編集N.O)

  • 農場から食卓に届くまでに食品の3分の1が廃棄されている。何か改善する方法があるはずだ。
    先進国は年間6億7000万トンの食品を捨てている。これはサハラ以南で生産sあれている食品の送料とほぼ同じである。

  • 「心を操る寄生体」が興味深い。

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