- Amazon.co.jp ・電子書籍 (449ページ)
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平泉を旅する機会があったので、平泉の歴史に関連する本を読もうと思い、電子書籍版の中からこの本を、選んでみました。
本書はまず、奥州藤原氏とはどういう存在だったのか、アウトラインを序章で提示しています。
その上であらためて、奥州藤原氏誕生前の東北地方がどのように統治されていたのかを解説し、奥州藤原氏誕生の起点となった、前九年の役へと進みます。
後三年の役を経て北日本の統治者となった藤原清衡がどのように基盤を固めたのか、平泉を中心にどのような統治体制を敷いたのか。
「仏教都市」という面での平泉はどのように整備されていったのか、それは奥州藤原氏のどのような考えが反映されていたのか。
そして絶頂期を迎えた平泉の街がどのように整備され、「北方王国の都」となったのかと話が展開して、終章にてその滅亡に至った道筋を解説しています。
本書を読んで、奥州藤原氏という存在は、日本国の指示に従っているような形をとりながらも、自治国家的な面が強かったのだと、初めて理解できました。
その統治には、精神面については、仏教の「平和と絶対平等」が根底にあり、そして経済面では、地理的条件を生かした、日本国そして現在の北海道との交易が柱となっていたのですね。
また、奥州藤原氏成立前の歴史を読むことによって、現在の東北北部が、長い間、日本国とは別の道を歩んできたこと、それはどのような歴史だったのかも、知ることができました。
奥州藤原氏の繁栄と滅亡は、日本という国の形、範囲の形成に、大きなインパクトを残していたのだと、認識しました。
著者の主張の裏付けとなる文献や、遺跡調査の記述を読むと、鎌倉期よりも後の時代になると、平泉に関する記録がずいぶんと少なくなっているのだなあ、と感じました。
そして20世紀後半以降、高速道路の建設に伴い、この地域の発掘調査が進んだというあたりは、何が歴史解明のきっかけになるのかという意味で、興味深く感じられました。
北日本、そして日本という国の成り立ちについて、考えを改めさせてもらえました。
平泉の旅を、より充実したものに変えてもらえた、一冊でした。
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https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B010LYGB1Q
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