平泉 北方王国の夢 (講談社選書メチエ) [Kindle]

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  • 北方世界の平和を目指して
    大鰐の神岡山には大安国寺が存在。浪岡城は、平泉と関係か?平泉の富の3点セットは金・馬・鷲羽(北海道産)。

  •  
    平泉を旅する機会があったので、平泉の歴史に関連する本を読もうと思い、電子書籍版の中からこの本を、選んでみました。
     
    本書はまず、奥州藤原氏とはどういう存在だったのか、アウトラインを序章で提示しています。
     
    その上であらためて、奥州藤原氏誕生前の東北地方がどのように統治されていたのかを解説し、奥州藤原氏誕生の起点となった、前九年の役へと進みます。
    後三年の役を経て北日本の統治者となった藤原清衡がどのように基盤を固めたのか、平泉を中心にどのような統治体制を敷いたのか。
    「仏教都市」という面での平泉はどのように整備されていったのか、それは奥州藤原氏のどのような考えが反映されていたのか。
    そして絶頂期を迎えた平泉の街がどのように整備され、「北方王国の都」となったのかと話が展開して、終章にてその滅亡に至った道筋を解説しています。
     
    本書を読んで、奥州藤原氏という存在は、日本国の指示に従っているような形をとりながらも、自治国家的な面が強かったのだと、初めて理解できました。
    その統治には、精神面については、仏教の「平和と絶対平等」が根底にあり、そして経済面では、地理的条件を生かした、日本国そして現在の北海道との交易が柱となっていたのですね。
     
    また、奥州藤原氏成立前の歴史を読むことによって、現在の東北北部が、長い間、日本国とは別の道を歩んできたこと、それはどのような歴史だったのかも、知ることができました。
    奥州藤原氏の繁栄と滅亡は、日本という国の形、範囲の形成に、大きなインパクトを残していたのだと、認識しました。

    著者の主張の裏付けとなる文献や、遺跡調査の記述を読むと、鎌倉期よりも後の時代になると、平泉に関する記録がずいぶんと少なくなっているのだなあ、と感じました。
    そして20世紀後半以降、高速道路の建設に伴い、この地域の発掘調査が進んだというあたりは、何が歴史解明のきっかけになるのかという意味で、興味深く感じられました。

    北日本、そして日本という国の成り立ちについて、考えを改めさせてもらえました。
    平泉の旅を、より充実したものに変えてもらえた、一冊でした。
     
    同じカテゴリーの本;
    『伊勢神宮の謎』高野澄
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B010LYGB1Q
     
     .

  • 2017/8/6読了。
    夏休みの旅行で東北に行くので、その予習に読んでみた。
    歴史の授業で習った平泉と言えば、源義経と中尊寺金色堂で有名な藤原の何とかの領地、ぐらいのものだった。今回、実際に中尊寺に行ってみたのだが、本書を読んでいなければそのイメージが変わることはなかっただろう。それぐらい平泉に対する認識が改まる本だった。
    平泉を理解するには、単に藤原を名乗る貴族が支配した地方政権としてではなく、どちらかというと琉球王国的な半独立国家だったと捉えたほうが良いというのが、本書の説だ。日本国が南(西)へ伸ばしていった支配の手の動きを表すのが琉球王国の歴史、北(東)へ伸ばしていった手の動きを表すのが平泉(に統合される蝦夷)の歴史であり、それを本書は考古学的なエビデンスを挙げながら丁寧に論証している。
    なるほど、そう考えると分かりやすいし、面白いし、日本史全体の流れや大袈裟に言うと大震災後の東北地方の扱われ方までを正しく把握できるような気もしてくるのだ。ぎりぎり旅行の前に読み終えられてよかった。読んでなければ危うくただの観光旅行になるところだった。

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著者プロフィール

一九五〇年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。現在、弘前大学教育学部教授。専攻は日本中世史。主な著書に、『平泉』(岩波新書)、『奥州藤原三代』(山川出版社)、共編著に『北の内海世界』『北の環日本海世界』(いずれも山川出版社)、『十和田湖が語る古代北奥の謎』(校倉書房)、『北の防御性集落と激動の時代』(同成社)がある。

「2014年 『平泉 北方王国の夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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