紙の月 DVD スタンダード・エディション

監督 : 吉田大八 
出演 : 宮沢りえ  池松壮亮  大島優子  田辺誠一 
  • ポニーキャニオン
3.32
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本棚登録 : 904
感想 : 197
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013254985

感想・レビュー・書評

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  • 銀行勤務の女性の横領の物語。

    一見優しいようでいて主人公の気持ちに鈍感で、独善的な夫に愛想笑いで合わせる生活。
    一方で、自分を求めてくれる彼氏との、甘く、手放し難い生活。

    そして真面目な主人公は、"善いこと"のために"少しの悪いこと"を行う。一度の成功は繰り返しに繋がり、やがて穴埋めのために止めることができなくなる。

    本作は、そういった行動に走らせた主人公や周りの状況を、登場人物の表情や視線、言葉遣いでうまく描いている点が素晴らしいと思う。

    ラストで主人公は「作り物の幸せ」と主人公は言った。それは若い彼氏との生活のことかと思ったが、それとも夫との乾いた生活のことなのかもしれないと感じた。

    お金と幸せについて、考えさせられる作品でもあった。ぜひ。

  • 中盤、やや冗長な気がして退屈に感じるところもあったものの、終盤がそれを補って余りある。
    邦画には2種類ある。お金儲けをほぼ全ての目的としてアホがアホのために作りそのアホが高評価するアホ映画と、少しでも他にはない何かを目指して、いい作品を作ろうとして職人たちが創意工夫を重ねて作り上げ、真面目な批評を受けた映画との2種類。本作は後者である。
    やはり終盤の展開は秀逸としか言いようがない。個人的にあまり好きなタイプのシナリオではないが、映画として良く出来ている。

  •  衝撃でした。序盤の描き方がとてもいい。これから不穏なことが起こるんだろうなという気配がじわじわと伝わってきます。全編を通して雰囲気の作り方がとても巧みでした。どこかぎこちない感じや不自然さ、ぎくしゃくした会話や関係の描き方が違和感のない範囲で不安を煽ってきます。
     劇中における要素を一つずつ抜き出したら大したことはないようにも見えます。それこそ「よくある」ことです。しかしそれらが積み重なっていくと、点でしかなかった要素が段々とつながっていき、大きな染みとなって心を締めつけてきました。
     俳優さんたちもすばらしいです。まず宮沢りえさんという主役。清らかさや美しさを感じられる人に不安をかき立てる行動を取らせる。これがとても効果的でした。まさに適役です。
     次に大島優子さん。軽薄そうでありながらもなにか鋭いところがある人物として物語を彩っていました。そんなことを言うのかと驚くようなせりふがあったりと、見ていておもしろいキャラクターです。
     最後に小林聡美さん。この人なくしてこの映画は盛り上がらないというくらい、とても魅力的でした。あの厳格な隅という人物がいたからこそ緊張感がありましたし、彼女が日常と非日常の(もしくは現実と幻との)一つの境目になっていたようにも思います。
     女性ばかりを挙げましたが、もちろん男性陣の活躍もすばらしかったです。夫役の田辺誠一さんは妻への気遣いのなさから来る主人公へのストレスの与え方がうまかったですし、近藤芳正さんは変革を示すようで保身的な優秀には見えない上司としての振る舞いが見事でした。
     そのほかにもお客様役の方々はどなたも適切な役割で主人公と関わっていました。人がよさそうな方ばかりで、そんな方々を利用して悪事を働いているのかと考えると見ているこちらがつらくなってきます。
     感情的になる場面が少ないのもこの作品における美点かもしれません。特に負の感情は激しい表現がなかったように思います。楽しそうな場面では思いっきりはしゃいでいましたが、それも主人公が抱える葛藤から来るものっだったのでしょうか。
     鑑賞し終わってしばらく経っても、まだまだ余韻に浸っていたくなります。静かな映画ではありますが、心に受ける衝撃は確かなものでした。

  • エロいシーンがたくさん。
    着服。
    セフレにも裏切られる。
    宮沢理恵の髪型が好き。
    「ダメだと思っていることを全部取っ払って、やりたいことを考えてみた」
    最後は外国で青リンゴをかじって去っていく。
    警察に捕まらなかったのかも。

  • 女優女優していない宮沢りえの素朴な美しさが出ていてよかった。
    あとからじわじわ良い作品だったなと思える。

    これを観終わってから原作の小説を読んだけれど、
    この映画の方が好きだった。
    登場人物を削ったり、足したりして、それがうまくいっていて自然だった。
    静かに狂っていく感じが良く出ていた。

    平林老人への色仕掛けが失敗したところに現実と梨花のギャップが出ていて◎。

    光太役の池松壮亮もとても良かった。
    最近ほっこり映画ばかりの小林聡美。こういう役がとても良い。

  • 40代の女が若い男との不倫におぼれ、老人たちのお金を横領。世間さまから後ろ指をさされることをこれでもかとやったあげく、破たんするも、これは堕ちる女の話ではない。むしろ逆である。お金という紙切れの魔力にとりつかれて狂った女の話ではない。むしろ逆である。
    私たちは世間体や社会規範でできたガラスのケージに自らを閉じ込めているのだということを、ときどき思い出す必要がある。ケージの外には、たとえば入れ込んだ男に施しを与えるためには老人たちの持て余したお金を使ってもよいという彼女独自のの良識がある。男との関係が破たんしようとも悲壮感はない。そこではお金はただの紙切れであり、彼女はケージを突き破って脱出してそこに到達したのだから。
    身も心もガラスのケージに入ってしまっていることを思い出させてくれるから、映画は現代人にとって欠かせない存在だなああっ!吠えたくなるような作品だった。

  • ただ惚れた年下の男に貢ぐために銀行の金を横領、という単純な筋だが、構成が巧みなので深みがある。
    ふたつの方向に掘り進めることができる。

    1、向こう側に行けた人と行けなかった人。
    つまりは宮沢りえと小林聡美の対立。
    「一緒に来ますか?」という問いかけはそのために。
    2、与えるということ。優越感の問題。
    募金をして返事の手紙をもらうことで、どこかねじが緩んだ。
    同様に、年下でセックスに溺れたのもあるだろうけれど、私が支えてあげているという自負が、周りを見えなくさせていたのだ。

    あとは、若い男のストーキングに応えるべく電車のホームの階段を降りていくときの、宮沢りえの、顔! たまらん!

    ラストの疾走感。
    そして卑小なる怪物は野に放たれる。

  • 結末がわかっているだけに見ているのが辛い部分があったが、とにかく中年女性の若い男性への執念というのがリアルに描かれていた。宮沢りえがおばさん→若返り→おばさん、と雰囲気が様変わりしていて凄い。これモデルの事件があった気が。

  • 私これ好きだわー。
    八日目の蝉もよかったしね。原作ともに。

    この雰囲気がなんともたまりません。
    静かに静かに、そしてゆるゆるとあがっていって、ガッシャーンですよ。

    最後の小林聡美とのシーンは名シーンすぎます。

  • お金は、信用の間でしか成り立たない紙切れと同じ。
    善による行動は、偽善による行動と何が違うのだろう。
    本物と偽物、過程は異なっていても、結果は変わらないのではないか。
    彼女の問いかけに、私はなんと返せばいいのだろう。

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