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- / ISBN・EAN: 4988105071193
感想・レビュー・書評
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2015年公開作品。今月8月は先の大戦に関わる映画を3本観ました。3本とも感想は当然ながら戦争は愛する人との別れをもたらす起こってはいけないことだという事。この作品は、観ていて映像作品というより報道映画を観ているような印象を受けます。重厚な作品です。昭和34年生まれの私にとっては昭和天皇が、やはり身近に感じます。思想的なものは私自身持ち合わせておりませんが、終戦に向けての天皇の苦悩を感じることができました。松坂桃李さんの青年将校、見事でした。将校の一途さ、ある種の狂信的さを演じきっていました。憑依しているかのようでした。眼のイキかた、おでこに血管が浮くあたりは凄いなあと感じました。少し感想から外れるかもしれませんが、何かの本で全ての生物の中で、同じ生物同士で大量殺戮が出来るのは人類だけだと読んだ記憶があります。世界情勢が、きな臭い昨今、決して戦争は起こらないことを祈ります。
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8月は原爆の日、終戦記念日と続く大事な月。例年、個人でできる何だかのことはしようと考えているが、昨年は何もしなかった。今年はせめて『日本の一番長い日』を観て、終戦に向かうまでの歴史転換となった日々を見極めようと思った。
学校では現代日本史の授業はいつも時間切れとなり、特に昭和の時代は駆け足で、肝心なことはほとんど知らないままで済ましてきた。大学受験が控えているからなのか、それとも故意的に知らされないままになっているのか。すでに高齢者の仲間入りをしているのだから知っておかないと恥ずかしい。
昨年亡くなった半藤 一利さんの『日本のいちばん長い日 運命の八月十五日』が原作となっている本作を選ぶことにした。1967年と2015年に2度ほど映画化されているが、今回は身近な2015年版を鑑賞。
太平洋戦争末期、戦況が困難を極める1945年7月。連合国は日本にポツダム宣言受諾を要求。降伏か、本土決戦か―。連日連夜、閣議が開かれるが議論は紛糾、結論は出ない。そうするうちに広島、長崎には原爆が投下され、事態はますます悪化する。“一億玉砕””本土決戦”など、ドラマや本、映画で何度も聞いてきたが、会議で議論されているのを目の当たりにすると、ぞっとさせられた。最終局面で天皇の聖断を元に政府、陸海軍主要人たちがポツダム宣言を受け入れたが、もっと早く受諾していればと思わずにいられない。
決断に苦悩する阿南惟幾陸軍大臣(役所広司)、国民を案ずる天皇陛下(本木雅弘)、聖断を拝し閣議を動かしてゆく鈴木貫太郎首相(山﨑努)、ただ閣議を見守るしかない迫水久常書記官(堤真一)。一方、終戦に反対する畑中少佐(松坂桃李)ら若手将校たちはクーデターを計画、日本の降伏を国民に伝える玉音放送を中止すべく、皇居やラジオ局への占拠へと動き始める・・・。
このクーデターは宮城事件と言われている。青年将校ら畑中少佐の狂騒や狂気が何とも怖かった。彼らを突き動かしていたのは利欲でも怨恨でも功名心でもなく、純粋無垢さ。彼らなりの「国体護持」を信奉して貫こうとする偏狭な信念がじりじりと表情に浮かんでいる凄まじさ。彼らは2、26事件をも口にしていた。本書で半藤さんは『今日の日本および日本人にとって、いちばん大切なものは”平衡感覚”によって復元力を身につけることではないかと思う。内外情勢の変化によって、右や左に、大きくゆれるということは、やむをえない。ただ、適当な時期に平衡を取り戻すことができるか、できないかによって、民族の、あるいは個人の運命が決まるのではあるまいか』と書いている。現在のウクライナ戦争もそうだろう。過去の間違いは反省されることなく誤った歴史が繰り返され、あり得ないことが現実に起きている。
★『日本のいちばん長い日』、映画に登場する用語解説と時系列整理 https://cinema.ne.jp/article/detail/37462
上記を参考にして鑑賞するととても分かりやすい!
勿論、読むだけでもためになるでしょう。
後手後手だったことがはっきりするだけに悲しく腹立たしくも感じられます。 -
評価できる点もありますが、一本の映画として単純につまらなかったです。
『日本のいちばん長い日』はほんとに色んな人に観て欲しい、お薦め映画なんですが、この2015年版は1967年版に比べてものすごくわかりづらく、しかも退屈になっています。理由は単純で、2015年版の方が20分以上も短いのに、組閣からの4か月の話を入れているので詰め込みすぎ、エピソード削りすぎ、駆け足になってて、セリフも早口でわかりづらくなっている。
戦争のこととか、よく「日本人なら知っておかなければならない」とか言うじゃないですか。群像劇で、人物相関がけっこうややこしいし、若い人とか特に歴史に詳しくない方が多いから元々難しい話なんだけど、より難しくしてどうすんの?と思いますね。
あと、67年版の方で宮城事件に関わる人たちは黒沢年男、佐藤允、天本英世などなど狂気を感じさせる、アクの強い昭和の俳優さんたちが演じてたのだけど、こちらは松坂桃李くんぐらいしか有名な人が出てないのもわかりづらくなってる原因。(松坂くんの方が実際の本人に近いと思うし、逆に狂気を感じさせる部分もあるので、彼の起用は良いと思ってます)
この点も、尺を短くした分端折ってるのと、昭和天皇と鈴木寛太郎、阿南惟幾の三人に重点を置いてるのが理由ですね、松山ケンイチとか急に出てくるし。
もっとも大きな違いは、昭和天皇が主役のひとりになってる点です。鈴木寛太郎のシーンもかなり増えたと思う。旧作で笠さんってこんな活躍してたっけなあ?
個人的には、67年版の昭和天皇の描かれ方がすごく好きでした。フィルムに映すとはなんたる不敬!ってな感じがして笑。
ただ、モックンも良かったしチャレンジングな試みだったと思うので、この点は評価してます。
何年か前に鈴木寛太郎のドキュメンタリー番組も観たけど、奥さん含めて昭和天皇とのつながりや、2.26事件の話も出て来た点は良かったです。
半藤さんの原作以外に、昭和天皇と鈴木寛太郎の伝記などからのエピソードを入れてるようで、そこが大きな違い、かつつまらなくなってる原因。入れるのはいいんだけど、上映時間を増やすか、別の作品にして欲しかったです。
阿南惟幾の割腹シーンも、旧作の方がものすごく痛そう、苦しそうでよかったのに。レイティングに配慮してか、バイオレンス要素がすごく薄まってます。
徳川侍従長の話がすごく好きなんだけど、これもカットされてました。
旧作は「玉音放送をいかにしてラジオで流すか」という、サスペンス的要素もあったので、「徳川侍従長がんばれ!」ってなるんですけどね。旧作とリメイク版では、活躍する人が全然違いますね。
というのも、これ英題が「The Emperor in August」とついてることからも明らかなんですが、昭和天皇が主役で、しかも海外を意識した作品なんだと思います。(テロップにもいちいち英語がつく。ちなみに旧作の英題は「Japan's Longest Day」とそのままです。元ネタが『史上最大の作戦』だし)
あと俳優さんも、役所広司とか海外でも有名な作品に多数出てるし、モックンも『おくりびと』って海外でも評価が高い作品ですね。
原田眞人って「ガンヘッドの監督」ってイメージが強くてですね……個人的にあの映画は好きだけど、かなり評価の低い作品です。だから、観る前から覚悟はできてました笑。
原田監督は67年版があまり気に入ってないようだけど、発言をみると「いやそれアンタ個人の好みの問題なんじゃね?」って思ってしまいます。
町山さんが言ってたことで僕も同意見なんですが、「良い戦争映画の条件」って、戦意高揚映画にも反戦映画にも取ることができる、そうなってる作品なんだと。それは徹底的に事実を描くとそうなる、と。
『日本のいちばん長い日』は、右翼の人も左翼の人も否定できない内容なんですよ。宮城事件なんてほんとに不敬じゃないですか。
というわけで、別にこれ観てもいいんだけど、「面白い映画」としてお薦めなのは1967年版の方なので、そちらをぜひ観てください。
あと、以前から観たかったソクーロフの『太陽』をより観たくなりました。 -
今年は沖縄返還50周年という年でもあるので、少し早く平和学習を。
見よう見ようと思っていて手付かずだった作品。
この戦争についてはあらゆる視点の作品があって見てきたけど、ポツダム宣言に焦点を当てた大本営を舞台にしたものは初めて見た。
まず印象に大きく残ったのは昭和天皇の穏やかさ。
もちろん作品なので、本来の昭和天皇がどの様な人でどんな空気を纏っていたのかは分からないところだけど、今まで私の中で想像していた人物とは乖離があった。
そして何より、こんな戦況の中の幹部クラスの人たちに流れる空気感に驚いた。本当に大戦中なのか?とさえ思えた。あまりにもゆったりと構えていて。
市民の犠牲や軍隊の末端の犠牲に焦点を当てた作品に比べると悲壮感がまるでない。
そして、内閣組閣から玉音放送までの数ヶ月を淡々と追っていく流れなのだけど、
展開が早く特に陸軍の人物をしっかりと把握できないまま進んでしまい実は2度見た。もう少し時間が長くなっても良いので、主要な人物はそれぞれスポットライトを当てて欲しい気もする。
この戦争全般に言えるのだが最後の方は、上層部は日本は劣勢であることを認識している一方で(受け入れられるかはまた別問題だが)情報を隠され続けた市民や一部隊の人間は本土決戦に持ち込めば勝機があると思い徹底抗戦の構えとなる構図になる。
この作品もその構図がはっきり描かれている。
非常に悲しいし、また松坂桃李演じる畑中が純粋で真っ直ぐでそれゆえ狂気じみているところが上手くて恐ささえ感じた。 -
戦争を終わらせるということは、なんと大変なことか――
昭和版「日本のいちばん長い日」は苦悩する阿南陸軍大臣の三船敏郎の切腹シーンが圧巻だったけれど
原田監督は、さらに阿南陸軍大臣がとても家族思いであるという人間味を足されていて感動的に仕上げていた
東条英機がサザエに例えて上奏するシーンでは昭和天皇が学者ならではの切り口から退けるシーンは印象的だった
人間ドラマも良かったけれど
一番に感心したのは舞台となった建物が美しかったこと
昭和初期(明治大正に建てられた)のモダンな建物たち
首相官邸や陸相官舎の日本の木造建築の屋敷そして夏の緑が映える日本庭園
本当に美しかった
「駆込み女と駆出し男」でも古寺が美しく撮っていた原田監督ならではだなと感心した
この美しい日本の建物文化の中で、汗だくで男たちが戦争を終わらせるか続けるかを巡って奔走してるなんて
滑稽だなと思った -
劇場にて視聴。オリジナルと異なるところは、やはり天皇を描いたシーンが多いところか。なんとも大胆ですが、なるほど、戦後生まれが戦争映画を描く意義とは、ここにあったのか。本木雅弘の演技も素晴らしい。
ただ半藤一利の原作を読んでから見ると、全体的には物足りない。エピソードがある程度カットされるのは仕方ないにしても、クーデターを起こした反乱軍が宮城を占拠しようとするシーンの緊張感がまったく映像から伝わってこないのはどうしたことか。あと日本映画界は「役所広司頼み」をなんとかしたほうがいい。 -
岡本喜八監督の名作のリメイク。
前作では笠智衆が演じた鈴木貫太郎首相を本作では山崎努が演じている。あまり評価されてない総理だが、本作ではなかなかの人物として造形されている。
阿南陸軍大臣は役所広司。旧作は世界の三船。奥さんを大切にされた方らしく、そういう面がよく出た造形。石原莞爾の同期だったらしい。反乱軍の畑中少佐に松坂桃李。旧作は黒沢年雄(笑)
脚色はあるのだろうか既知の史実を知っているものには結末は当然わかっているので、どうなるんだろう?的なところに力点を置いた作品ではない。その時の臨場感、でしょうね。個人的には新作版の方がしっくりくる。
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終戦直前の昭和天皇と政府と軍部。
皆がどんな思いでその時を迎えたのか。
ずしんと来る映画です。