銀河鉄道の夜 [Kindle]

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  • 2016年4月19日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 河合隼雄の「人生読本」を読み進めるうちに、先生が紹介される本に自分でも読んでみたいと思った本が多数あったのだが、その中でまずこの本を読んでみることにした。

    日本人なら誰もが知っているこの本、未読だけれども今さら読む意味があるのかという気持ちのまま今日まできたが、河合先生のオススメに背中を押され、夏休みの少しの夜更かしを利用して読むことにした。青空文庫に感謝。

    主人公ジョパンニとその友人カムパネルラの銀河鉄道の旅の物語。いや、主人公ジョパンニの夢の中の物語か。
    単なるファンタジーではなく、様々なとらえ方ができる小説だと思う。著者はハッキリとした結論めいたことで小説を締めてはいない。

    以下、ネタバレとなります。後日、何かの発見があるかもしれないので、自分なりの大まかな粗筋をメモっておくこととします。

    ***

    「午後の授業」では、理科の授業で、ジョパンニやカムパネルラが銀河についての授業を受けるシーン。

    「活版所」ではジョパンニが放課後、活版所でアルバイトをするシーン。

    「家」では、ジョパンニと病床に伏せる母親との貧しい暮らしのシーン。父親は出稼ぎで戻らない。友人のカンパネルラの家には、アルコールランプで走る汽車がある。

    「ケンタウル祭の夜」では、ジョパンニは祭りのために飾られた街で、「星座早見」を見つけ、その図に見入る。学校での授業も思い出しながら。しかし、祭の賑わいを通り越して、母のための牛乳を求めに行く。

    「天気輪の柱」 ジョパンニは、牧場のうらの丘の頂上に寝っ転がると、夜空に星がまばたき、そこへいつのまにか野原から汽車の音か聞こえてくる。

    「銀河ステーション」 いつのまにかジョパンニは列車に乗っていて、その列車にはカムパネルラも同乗していた。窓の外の幻想的な景色が流れる。

    「北十字とプリオシン海岸」 白鳥の停車場で20分の停車時間に銀河の川の水に触れたり、プリオシン海岸で考古学者が遺跡を採掘しているかのような不思議な現場に出くわす。

    「鳥を捕る人」でも不思議な光景。白鳥区で列車の中で鳥を捕る人と出会う。彼が鳥を捕ると平べったくして保管し、時おりそれを食べるとお菓子ようにうまい。

    「ジョパンニの切符」では、車掌が切符の拝見にくる。鳥捕りも、なんとカンパネルラも切符を持っていたが、ジョパンニは切符の意識がない。苦し紛れに上着のポケットに入っていた紙切れを出すと、それはどこまでも乗車できる切符だった。

    その後列車の中で、船が難破したという姉弟と同行の青年と出会う。彼らとの旅が始まる。様々な会話や体験があり、ジョパンニの感情は変化するがやっと仲良くなれたころ、サウザンクロスで姉弟と同行の青年は下車し別れる。彼らは天上の世界へ行ったのか。

    再びカンパネルラとの二人旅となったジョパンニは「本当の幸いをさがしに、どこまでも行こう」と決意をする。が、カンパネルラの姿はいつしか見えなくなってしまう。

    一人になったジョパンニは、自分のために、母のために、カムパネルラのために、みんなのために本当の幸福を探す決意をする。

    そうして、ジョパンニは丘の草の中で眠っていた自分を発見する。ちょうど夢を見ていた頃、友人のカムパネルラが水に溺れた友を助けるかわりに自らの命を失っていたことを知る。

    同時に、出かけたままの自分の父が、帰ってくるという元気な便りを数日前に送っていたことを知る。

    様々な思いを胸にいっぱいにし、牛乳を持って、父のことを知らせようと、病床の母のもとへ駆け出すシーンで幕は降りる。

  • 初出は1930年代。最終形に至るまで、大きな改稿が繰り返されたらしい。

    当時の時代背景を考えると、かなり先進的な表現だったのではないだろうか。幻想的で空想的な世界観は唯一無二だと思う。

    この描写と、「ほんとうの幸福」を探す、というテーマが本作を名作たらしめているものだと理解した。テーマのほうはそこまで汲み取れなかった。

  • 初めてちゃんと読んだ。
    らっこの上着くるかな?

  • とりあえず他の感想をいろいろ読む前に自分の印象を残しておく。

    人はみなカンパネルラ。
    自分の人生という汽車をどこに向けることもできる。どこへでもどこまでも行くことができる。でもこの汽車にはさまざまな人たちが乗ってくる。女の子、老人、宗教の違う人、お菓子(?)を売る人…
    それぞれわかり合うことはできないし、乗った人は降りてゆく。
    完璧に最後まで添い遂げることなんてできないけど、ただほんとうのしあわせはなんだろうか、どうしたらほんとうのしあわせの一助になれるだろうか。考え合いながら人生は交差する。
    カンパネルラ、そんな関係性を築けたらいいな。

  • 映画 銀河鉄道の父を観た後、読んでみた。
    むむむ…難解です。
    途中、原稿が欠如してるし。
    しかし、幻想的ストーリーは解釈出来た。

    文章も現代風に手直ししてくれる人が居たら、小さい子でもわかるのになぁ。
    あ、原文だから良いのか?

    検索してみると、過去に実写化されたようだが、やはり難解の為か賛否両論のようだ。
    また、アニメとして映画化もされたようだ。

    宮沢賢治は、妹の為に執筆してたようだから、妹が喜んでくれれば良かったのかもしれない。
    ‘23.05.13読了

  • あらすじ等は知っていたけれど、ちゃんと読んだのは今回が初めてだった。キラキラ光る鉱石の表現が素晴らしかったけれど、自分が読んだ版では途中で原稿が抜けていたのが残念だった。カムパネルラの優しさがこれからのジョバンニを支えていくのかなあと考えると切ない。

  • 途中まで、ジョバンニは死んだのだと思ってたけど、本当は夢を見ていたってことにびっくり。カンパネルラだけが死んだってことだと思うけど、なんでジョバンニはカンパネルラと一緒に鉄道に乗ったのかが謎。あの切符は死んでないけど、乗れる券っていう理解できる正しいのか…?

  • 題名は知っていたし、ジョバンニとカムパネルラも聞いたことがありましたが初めて読みました。

    なかなか、難解だと思いました。
    情景描写が素晴らしく、想像力がかきたてられます。

    銀河鉄道の乗客は、きっと死者なのだろう、と読み進めるとだんだん気づきます。

    あれはどうなったんだろう、これはどういうこと?
    たくさん気になる部分がありますが、これが宮沢賢治の世界ですね。

    あらゆるひとのいちばんの幸福をさがし、みんなといっしょに早くそこに行くがいい、そこでばかりおまえはほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょに行けるのだ。

    まわりの人の幸福を想っての行動をとってはじめて、自分もいっしょに幸福になれるのだろう、と改めて感じました。

  • なかなか理解するのか難しい話だ。情景の描写を想像してゆくと、色鮮やかな世界が浮かび上がる、少しジブリ的とも言うか。長い銀河鉄道の旅は結局は夢だったのだけど、天国への旅だったのか。色んな解釈ができる話。

  • 初読。昭和初期頃に執筆された作品だろうけど、古臭さを全く感じさせない。幻想的でとても素敵な物語だった。

著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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