人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) [Kindle]

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  • AI(人工知能)が発達した未来に、いったい何が起こるのかについて書かれています。AIの未来に対しての否定的な意見と、その検証が書かれており、現在のAIから未来の姿と、それに関わる私たちの生活(主として働き方)について、具体的に説明されています。また経済学的にその場合の、私たちの経済がどうなるのかも分かり易く書かれています。そのうえで、社会としてはどのように対応していくべきか、主に政策からの解決策を述べられています。実際には、困難なことや出来ないことも多数発生すると思われますが、方向性として、私たちの価値観から変えていかなければならなくなる大きな変革の予感を感じさせます。常識が覆される未来の姿があるということ(良かれ悪しかれ)は、近い未来に対して心構えをしておかなければならないと感じました。

  • 信じる信じないはともかく、面白かった。
    著者は、本書において、2030年頃に汎用AIによる第四次産業革命が始まり、徐々に人工知能が人間の労働を代替し、人間の労働需要は急速に減退し、2045年頃には人間にしかできない仕事の範囲はかなり狭いものになっているはずと予想する。具体的な数字としては、全人口の1割しか働かない社会になっているかもしれないとする(機械に奪われにくい仕事として、創造性、経営・管理、もてなしの3つを挙げる)。
    また、汎用AIを早期に導入した国とそうでない国との間で大きな格差(第二の大分岐)が生じるとも予想する。さらに純粋機械化経済においては、限界生産力逓減という制約がなく、年々経済成長率が上昇していくとする。
    この辺りになると、かなり眉唾で労働力の制約がなくなっても資源とかどうなるのと突っ込みを入れたくなる。まあ、一定の仮定をおくとこうなるってだけだろうけど。
    純粋機械経済では人間は労働から解放されるが、これを遊んで暮らせるユートピアの到来と喜んでよいのか、仕事がなくなる大半の人は食べていけなくなり、餓死する自由を行使せざるを得なくなるのかは大問題。そこで著者はBI(ベーシック・インカム)の導入を主張する。本当に9割の人の収入の道が絶たれるなら、BI導入は人道的だとは思うが、富裕層の大抵抗は間違いなしで、政治的に大変そう。
    おわりにの章が一番面白かった。フランスのジョルジュ・バタイユを引用し、現在が資本主義に毒され、人々は「有用性」に取り憑かれ、未来のために現在を犠牲にしているとして、批判し、AIが人間の労働を代替する未来は、「至高性」、人間の生それ自体に価値があるという価値観の転換が必要になってくるとする。

  • 新しい価値観を得たり。

  • 本書は、人工知能がもたらす未来と、それに伴う経済について論じた本である。以前、人工知能に関する本を一冊読んだことがあったが、人工知能と経済の関係性について論じられていた本書は大変面白く感じた。本書は主に経済との関係性について論じられていたが、このような議論を通じて、ゆくゆくは人工知能と社会および政治の関係性についても、全世界的に考えていかないといけないと思った。
    個人的に関心が高いところとしては、人工知能の躍進に伴って所得分配がどのようになるか、どのようになるべきか、という点である。本書で論じられている通り、確かにこのまま人口知能が躍進すれば所得格差は広がると思うのだが、当然それによって反発は大きくなり、分配に関する正義思想が問われることとなると思う。よって、今後ますます市民に政治哲学的な嗜好性が真剣に問われることとなると思う。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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