神様メール [DVD]

監督 : ジャコ・ヴァン・ドルマル 
出演 : ピリ・グロワーヌ  ブノワ・ポールヴールド  カトリーヌ・ドヌーヴ 
  • KADOKAWA / 角川書店
3.38
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988126209711

感想・レビュー・書評

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  • ポップ、ダーク、リアル、シュールの四つの配合バランスが絶妙な、超ハイセンス作品。

    「ある日突然自分の寿命を知ってしまったら、人は残りの人生をどう過ごすのか」

    そんな永遠の大課題を、超絶大胆奇抜なシュール設定、主役少女のキュートな魅力、ポップな映像をベースに、厳しい現実や社会問題、毒も闇もたっぷり含んだブラックジョークを織り交ぜながら、軽やかだけどしんみり考えさせて見せてくれる。

    ブリュッセルのとあるアパートの一室には、本物の神様一家が住んでいた。
    全能の神は、慈悲深いどころか、自分が作ったはずの人間たちに試練とは言えない様々な悪業を働いて傷つけることで、日々の退屈を紛らわしている。
    そして、家族に対しては、完全にDVとモラハラの毎日。
    神の実態は、正真正銘のクズオヤジだった。

    神の娘で10歳のエアは、そんな父へ反発から、父の力の源であるパソコンを使って全世界の人々に各人の余命を知らせるメールを送ってしまう。
    エアは父に対抗するため、「兄」の助言を受けて、余命騒動に混乱する世間の中から6名を「使徒」に選んで奇跡を起こして「新・新約聖書」をつくろうと、街へ家出する…。

    選ばれた使徒たちは、年齢も、性別も、境遇も、抱える問題も、寿命も様々。
    だけど、彼らが体内に秘めていた孤独や鬱屈は、どことなく、似通っている。
    彼らは突きつけられた寿命に初めはショックと混乱を隠せなかったけれど、エアとの接触を機に、長年胸に秘めていた思いと向き合って行動を起こし、そして、手を取り合って…。

    もう、本当に、誰か見て欲しいです。
    そして、十人十色だろう感想を聞きたいです。好評でも酷評でもいいので。
    むしろ、半々くらいかな、と予想。
    それぐらい、あまりにも大胆奇抜。
    なのに、ハイセンス。
    (多神教で神様も人間並みに自由な神道に馴染んだ日本はともかく、キリスト教の強いヨーロッパで無事に受け入れられたのか、ちょっと気になりますが…)

    受け付けない人もいるとは思いますが、ツッコミどころ満載のありえない設定は、コメディとしても、十分楽しめると思います。
    エアの兄の設定とか、あのカトリーヌ・ドヌーヴ演じる金持ちマダムが衝撃の恋に落ちる相手とか…。

    私は観終わって、自分の余命がわかってしまったらどうするかの答えはまだ出なかったけど、なんだか前向きな気持ちになれたので、個人的にはオススメな作品です。

  • LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT
    2015年 フランス+ベルギー+ルクセンブルク 115分
    監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
    出演:ピリ・グロワーヌ/カトリーヌ・ドヌーヴ/ブノワ・ポールヴールド
    http://kamisama.asmik-ace.co.jp/

    何を隠そうブリュッセル在住の「神様」は、かつて世界を創生し、今では部屋に閉じこもってパソコンですべてを管理している。性格悪くて陰険なこの神様は、事故や天災を起こしたり、人間を苦しめる小さな法則(ジャムつきパンは必ずジャムの面から落ちるなど)を作ってはニタニタしている。その妻は愚鈍で夫に口ごたえひとつできず、10歳娘のエアは横暴で自己中なモラハラDV親父に猛反発!かつてやはり父に反抗して家出した兄のJC(言わずと知れたジーザス・クライスト)のアドバイスで、6人の使徒と「新・新約聖書」を作るため、洗濯機の通路から人間世界への家出を決行。その前に父への嫌がらせとして、パソコンから「余命宣告メール」を全世界に発信、さらにパソコンを使えなくしてしまう。

    監督は『トト・ザ・ヒーロー』が大好きだったジャコ・ヴァン・ドルマル。ゆえに設定について細かいツッコミなど入れてはいけません。これはあくまでコミカルでブラックなファンタジー。最近たまたま旧約聖書を何冊か再読していて、神の横暴、モラハラ、パワハラ、DVっぷりに大変憤りを感じていたので、娘を追いかけて現世へやってきた神(=ふつうのおっさん)が、威張りくさって横暴な言動をするたびに、オヤジ狩りの不良少年どもにボコボコにされたり、運び込まれた病院で子供のジャムパンを奪って母親に殴られたり(しかもジャムパンはジャム面から落ちる!)、難民救済院みたいなところで炊き出し貰うのに順番抜かしをしてまたボコボコにされたり、庇ってくれた信者に息子JCの悪口を言いまくってまたボコボコにされたり、とにかく踏んだり蹴ったりの酷い目に合いまくるのが痛快(笑)それでもまだ「イナゴ降らすぞ」とか言ってるし、これよく宗教関係機関からクレームつかなかったなあ。

    エア役のピリ・グロワーヌはとにかく可愛い。そして兄のJCほどじゃないけど、ちょっと水の上を歩いたり、一つしかないハムサンドを二つにしたりくらいはできるし、人間に固有の音楽を聞き取ることもできる。父の書斎からランダムに盗んだファイルの6人を自分の使徒にすると決めた彼女は次々と彼らに接触していく。美人なのに左手が義手のオーレリーのエピソードがシュールで一番好きだった。テーブルの上でスケートをするように失われた左手が踊る場面の、グロテスクと紙一重の美しさ。使徒たちはみんなちょっと変で不幸だけど、ちょっとした映像のファンタスティックさで全体的にとても可愛らしい印象。恋をした殺し屋の周りに浮かぶ花、女の子になりたい少年にまとわりつく魚の幽霊、冒険家を誘導する鳥の群れ、そしてサーカスのゴリラと恋に落ちる大女優カトリーヌ・ドヌーヴ(笑)さすがデルヴォーやロップス、マグリットの国ベルギーの映画。

    個々の余命を宣告された人類の反応も面白い。余命62年の青年は、何をやっても死なないと証明するために何度も飛び降り動画をアップするし、紛争中の軍隊は戦争を止めてしまう。神自身がいうように余命=いつ死ぬかわからないことが、神が握っている人間の「弱み」で、それがあるから信仰されていたのに、余命を知った人々は生き方の指針を変えてしまう。最後に必要とされるのは神ではなく愛だというベタだけどポジティブなメッセージは、しかし微笑ましい。6人目の使徒である少年ウィリーの余命最後の日にエアのママ=夫である神にさんざん愚者よばわりされていた女神が起こした奇跡も、ひたすらハッピー。ガーリィなエンディングも可愛いけれど、実はすごくシニカルな映画でもあり、個人的にはとても面白かった。

  • うれしい未来、受信中

  • ヘンテコで多幸感溢れる世界になって良かったです。女神ママ最強。
    ブラックでシュールで、好きな空気でした。

    神は初めにブリュッセルを作った。神は今では災害を起こしたり地味な不幸を制定して暮らしてる乱暴な父親。
    野球と刺繍が好きな母、磔にされた兄(JC)。
    娘である主人公・エアは父親のパソコンから人々に余命をカウントダウンするメールを送り、家出(出エジプト)。そして新・新約聖書を作り、使徒を探す旅に出る。
    エア、人の音楽が聴こえるって素敵。わたしはどんな音楽なんだろうと思いました。
    使徒になる皆さんもそれぞれ個性的でした。6人目の使徒の子が可哀想だったな…昔でいう代理ミュンヒハウゼン症候群の母親で。カトリーヌ・ドヌーヴも美しかったです。

    どうして使徒を6人集めてるんだろう…って思ってたら、野球が出来る18人揃えたら何かが起こる、っていうエアの願いでした。「最後の晩餐」の絵画に人が増えていくの笑いました。
    空が花柄だったら、元気無くても空見上げたらなんとかなるかもと思いつつ、でもちょっと鬱陶しいかもな…。
    ママやりたい放題で微笑ましかったです。神は因果応報でした。

    余命を知らされたら、自分なら何するかな…と思いました。少なくとも、まだ期間はあるからって飛び降りまくりはしない。飛んでる飛行機に着地したら死ななくてもかなりの大怪我は負うと思う。

  • 上司のおすすめ映画。設定がよい。神さま心狭い。スーパーのレジは隣の列の方が早く進む。

  • 何これ?と思いながらもどんどん観ちゃう。
    神様のキレっぷりが妙に好きだよ。

  • はちゃめちゃやりよる、この神の子は

  • あなたの未来決めちゃうゾ

  • 「もしも、神様がこんな形で運命を決めているとしたら?」というIfの世界の着想が面白い。フランスの映画は過去にあまり見たことが無いけど、どの作品も話がほのぼのとした雰囲気で見ていて心地よい。(リュック・ベッソンみたいにリアル志向な作品もありますが)この映画も終始そんな雰囲気で見ていてほのぼのとさせられた。感想はこんなところです。

  • 好き嫌い分かれるジャコ ヴァン ドルマン監督の作品ですが、私は大好きです。
    今回のこの「神様メール」はコメディとの事だったので、可愛い女の子が主人公のポップでほっこり系のファンタジーかと想像していましたが、けっこうダークで大人向け。
    やはり監督らしいかなりシニカルな展開と美しい映像表現になぜだかホッとしてる自分がいました。

    モラハラ神に、人々は弱味を握られ世界が混沌としてしまっていることが発覚!
    神の娘のエアちゃんが兄(イエス キリスト)が救いきれなかった世界を救うために、新・新約聖書つくろうとアットランダムに6人の使徒を探します。
    義手の美女、単調な毎日の男、殺し屋、性的妄想男、ゴリラに恋した主婦、両親に病気にされた少年。
    エアちゃん家族同様に神の暇つぶしによって鬱屈した人生に縛られて身動きがとれない彼らが、突然やってきた神様メールと、少女エアとの出会いによってドカンと大きな爆弾して自由の道へ解放されていく過程がそれぞれ描かれていきます。このどうにもならない現実世界の描写と、エアちゃんのもたらすファンタジーの絶妙な抑揚がドルマン監督らしくて好きでした。

    この監督の作品は神の意志とか天国から視点なんかを薄っすらと絡めつつ、哲学的な観点で描かれているようなものが多いですが、
    こちらの作品は今まではオブラートに包んで来た「神」そのものの存在をかなり斜め上から描いてます。
    もう、内容としては神への冒涜に近いです ので、敬虔なクリスチャンの人はきっと混乱するでしょう。

    ある日突然余命のメールが来て、余命わずかなら何するか?
    家族愛、夫婦愛、親子愛、そして神の民への慈愛など、簡単にハートフルに描けそうなものを全部取っ払って、魂を解放して見たら性別や宗教、生物の既成概念を超えて愛を育めるようになってしまう人間の可能性の深さが素晴らしい。
    もちろん多少はコメディタッチに描いてるけど、ふと未来の人間達はもっとボーダレスでこんな感じかも?とワクワクしてしまう私がいました。

    できの悪い上司に出来の良い部下が付いてやっと会社が機能するように、しょうもない父親によく出来た妻と賢い子供が出来て、世界はなんとか回っているだけなのかもしれません。
    いまもまた混沌とした私たちの地球、そろそろエアちゃんみたいなかわいい神様の子供が地上に舞い降りてきてもいいかも。
    もしかしたら天然ママの素敵な奇跡の魔法もほしいな。
    それにしても、私の中に流れている音楽はなんだろう?

    あらゆる箇所にブラックさたっぷりの、かなり危険な橋を渡ったストーリーではありますが、観た後からじわじわ好きになる不思議な魅力がある作品でした。

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