怒り DVD 通常版

監督 : 李 相日 
出演 : 渡辺謙  森山未來  松山ケンイチ  綾野剛  広瀬すず  宮﨑あおい  妻夫木聡 
  • 東宝
3.78
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感想 : 141
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988104106544

感想・レビュー・書評

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  • よかった。
    なのに★4つにしたのは、なんとなく、5つはつけたくないなーと思ってしまうから。
    この映画って、単純に★5つとはしたくない、何か重いものがあるんだよね。

    そんな「怒り」だけど、おもしろいなーと思ったのは、他の方の感想を見ていた時。
    いろいろな方が書いている、“他者を信じることの難しさ”みたいなことって、他の方がそう書いているのを見て初めて、「あ、そうか。そういうことか」って、初めて気づいたのだ。
    タイトルになっている“怒り”についても、他の方がそう書いているのを見て、「そう言われてみれば、“怒り”だなー」なんて(^^;
    自分では気づいてなかったけど、もしかして、そのくらい引き込まれて見ていたんだろうか?

    あと、出演した役者たちの演技について評価している方も多かったが、自分としては、よくわからないっていうのが正直なところ。
    確かに、見ていてハッとさせられたところは多々あるんだけど。でも、最近の日本の映画やドラマって、役者が絶叫すると「演技力がすごい!」って絶賛される傾向ない?(^^ゞ
    いや、この映画を見ていて、もし、生まれ変われるなら役者を仕事にしてみたいなーって思ったくらいで、素直に言っちゃうなら「演技力すごいなー、迫力あるなー」なんだけど。
    でも、それが本当に“すごい演技”なのか、自分にはよくわからない。


    映画というのは時間が限られているから、どうしても“わかりやすさ”が必要なんだろうけど、犯人の家の中が言葉だらけだったという、あれはどうなんだろう?
    だって、犯人は決して殺人狂ではないわけでしょ?
    もちろん、普通とは何かがちょっとズレている人だからこそなんだろうけど、でも、派遣会社の手配係のミスで炎天下延々歩かされて。問い合わせたら小バカにされ、疲れ切ってある家の前でへたり込んでいたら、その家の奥さんが見かねて冷たい麦茶(?)を出してくれた。
    そこで、何か勘違いがあったのか、ちょっとした言葉のいき違いがあったのか。
    もしくは、派遣会社の手配係の思いやりのない仕打ちが当たり前になっていた彼には、むしろ、自らにかけられた優しさの方が理解できなかったのか。
    そうではなくて、思いもかけずにかけられた優しさに、過剰な甘えが出てしまったのか。
    その辺りはわからないけど、たぶん、自分に出された麦茶を見たその瞬間、彼自身もわからない激情に駆られて、その人を殺してしまった。
    だから、別の犯罪者が言っていたように、彼は“生き返らせようとしていた”んだと思うのだ。
    それは、おそらく後悔からで、決して殺人狂ではないし、やり場のない怒りで殺人を楽しんだわけではないのだろう。

    それは、ストーリーとして描かれる3人の男の内のその一人の行動を見ても、そんな感じがする。
    彼は殺人狂どころか、普通の人として生きている派遣会社の手配係よりよっぽど他者を思いやれる心を持った人なんじゃないだろうか?
    そういう人を、家中に言葉で書き散らしてあった→それって異常だよね→だから、人を虫けらみたいに殺せる狂った人、みたいにわかりやすさで表現してしまうのは、この映画の内容にはそぐわないように感じる。

    ただ、それは原作通りかもしれないわけで、この話は原作を読んでみないと何とも言えないとこあるんだろう。
    他の方の感想を見ていると、刑事のパートや房総のパートの女性がああいう風になってしまったいきさつのエピソードもあるみたいだから、その内読んでみたい。


    ストーリー上では脇役だった、殺されてしまった八王子の奥さんのエピソードがすごく印象に残っている。
    だって、あの人って、炎天下でへたり込んでいる彼を思いやって、冷たい麦茶を出してあげなければああいうことにはならなかったのだ。
    それこそ、「家の前に変な男が座って動こうとしないんです。気持ち悪いからなんとかしてください」と警察に通報していれば、あの人はずっと幸せに生きていられたろうし。
    彼だって、警察に注意されるという一時的な不快さこそ感じても、あんな風に世間から逃げ回る生活をおくらずに済んだわけだ。
    でも、だからって、暑さでへたり込んでいる他人を見て、警察に通報するのが当たり前なんて世の中は誰も望まないはずだ。

    でも、都会や街というのは、お互いが他人で、他人に関わらないという不文律がある。
    だからこそ、都会や街では他者から見て誰でもない自分として気楽に暮らせるわけだ。
    都会や街に住んでいる人というのは、そういう風に他人との関係が希薄であることを良しとしているわけだ。
    いや、それを批判しているのではない。
    だって、自分自身もそれを良しとして、そういう暮らしをしているから。
    都会や街に住む人は誰もがそれを当たり前のこととして暮らしているから、他人に自分の生活をとやかく言われたら「お前は関係ない」と怒りだすのが普通だ。
    たぶん、“(迷惑行為がない限り)他人に口出ししない”というのは、都会や街の暗黙のルールであるわけだ。

    つまり、暑さで家の前でへたり込んだ彼に冷たい麦茶を出した奥さんは、都会や街の暗黙のルールを破ったということになるのか?
    暗黙のルールを破ったから、仕返しされたということになるのか?
    そういえば、映画の中で、女の子が公園で乱暴されていた騒ぎに気づいた近所の家の奥さんがさっと窓を閉めるシーンがあったけど、でも、他人に口出ししないを良しとしている都会や街に住む人だって、そこまでも良しとはしないと思う人の方が多いと思うのだ。
    それを、世間は“人情がまだ残っている”と言うんだと思うんだけど、でも、その“人情”を、今の日本の世間はどこまでの人にかけて、どこから切り捨てているんだろう?
    極端な話、この映画を見た人は、どの人まで“人情”をかけて、どの人からは“人情”を切り捨てているのだろう?

    この映画を見ている間、ずーっと胸に重いものを感じていたのは、もしかしたらそれなのかもしれない。
    もちろん、だからって、今の都会や街のドライな人間関係が悪いなんていう気はない。
    でも、家の前でへたり込んだ人に思いやりを示せないような人の暮らしというのは間違っていると思うし。
    公園で乱暴されている人を関わりになりたくないからと窓を閉めて見ないふりしたり、困って電話をかけてきた人を冷たくあしらって、せせら笑う仕事の仕方も絶対間違っている。
    というか、情けは人のためならずだ。そういう行いは、やがて必ず自らに災いとして返って来る。
    もしかして、それは、基地反対のデモを見て「こんなことして、なんの意味があるんだろう」と言っていたあの場面にかかっているのかもしれないなーなんて思った。

  • 見応えありです。いろんな怒りが、スクリーンに溢れています。救いようのない気分にもなりますが、救いもあります。キャスティングの豪華さが、すごいです。もったいないようなキャスティングです。役者さんたちの熱演が光ります。

  • 数年前に観ました。今回は2度目の鑑賞。なぜかまた無性に観たくなってしまい。結末を知っていても、引き込まれました。
    2回観てもタイトルの真意は未だわからないのですが、全て「自分に対する怒り」が共通するところのなのかなと。
    数年後、また観たくなるかもしれません。

  • 一体 何を怒っているのだろう?
    一体 何に怒っているのだろう?
    すべては、自分に対して 怒っている。
    自分のなかにある疑り深さ。

    犯人の画像を見ることで、愛している人を疑う。
    ほんの些細な きっかけで、
    愛していると言うことが崩壊する。

    愛しているのに、その人を信じられない自分を。
    愛しているのに、その愛を信じられない。
    愛しているのに、守ることができない。
    愛の不確かさ。

    そして、怒りをどこにぶつけたらいいのだろうか。
    渡辺謙の父親としての もどかしさとむなしさ。
    宮崎あおいのどこか、こわれていても、
    人を好きになる純真さ。
    松山ケンイチの 目立たないようにし、おどおどしている。
    妻夫木聡の あいかわらずの 泣き顔。
    綾野剛の 頼りなくも、はかない愛の行方。
    森山未来の 定着するところがない、浮遊性。
    広瀬すずの 広い大きな青い海に向かって 絶叫する。
    佐久本宝の いいようのない 無念さ。
    みんな 自分 に腹を立てていた。
    それぞれの 個性がひかる映画だった。

  • ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起こった。
    窓は閉め切られ、蒸し風呂状態の現場には、『怒』の血文字が残されていた。
    犯人は顔を整形し、全国に逃亡を続ける。その行方はいまだ知れず。
    事件から一年後。千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れた。

    千葉 ―――――――
    3か月前に突然家出をした愛子(宮﨑あおい)が、東京で見つかった。
    彼女は、歌舞伎町の風俗店で働いていた。
    愛子を連れて帰った父・洋平(渡辺謙)は、千葉の漁港で働く。
    8年前に妻を亡くしてから、男手一つで娘を育ててきた。
    愛子は、2か月前から漁港で働きはじめた田代(松山ケンイチ)に出会った。

    東京 ―――――――
    大手通信会社に勤める優馬(妻夫木聡)は、日中は仕事に忙殺され、夜はクラブで出会う男と一夜限りの関係を続けていた。
    彼には末期がんを患う余命わずかな母がいた。
    ある日、優馬は新宿で直人(綾野剛)に出会った。

    沖縄 ―――――――
    また男と問題を起こした母と、
    夜逃げ同然でこの離島に移り住んできた高校生の泉(広瀬すず)。
    ある日、無人島でバックパッカーの田中(森山未來)に遭遇した。
    いつしか交際を始めた愛子と田代。
    二人の幸せを願う洋平であったが、前歴不詳の田代の過去を信用できず苦悩する。
    同居を始め、互いの関係が深くなっていく優馬と直人。
    しかし直人の日中の不審な行動に優馬は疑いを抱く。
    ある事件をきっかけに心を閉ざした泉と彼女を救えなかったことに苦悶する同級生の辰哉。
    親身に支える田中であったが、無人島で暮らす彼の素性を誰も知らない。
    洋平は、愛子と田代が一緒に住むことになった時に知った田代の履歴を調べるが、八王子の事件の犯人ではないかと疑う。
    優馬は、仲間が相次いで空き巣に入られたことと直人の特徴が八王子の事件の犯人と同じことから、直人を疑う。
    泉の同級生・辰哉は田中の言動から、田中を八王子の犯人と疑う。
    信じた人は、愛している人は、殺人犯なのか?揺れ動く彼らに、信じたくない結末が、突きつけられる。
    「悪人」の吉田修一の傑作ヒューマンミステリー小説を、映画化。
    今回のテーマは、身近な人や愛している人の素顔と向き合えているのか、信じきれるのかです。東京と千葉と沖縄を舞台にしたストーリーを上手く整理しながら交錯して、前歴不詳の3人の男の誰が殺人犯なのかの謎解きと3人の男を疑ってそれでも信じきれるかの周辺の人の葛藤を軸にした重厚なヒューマンミステリーが展開していくのは、「悪人」以上の見事な語り口。
    メインの「人を本当に信じるとは何か」を軸に、優馬の同性愛者として堂々と生きながらも、母の葬式に直人を参加させることが出来なかったり、泉が遭遇するある事件の背後にある沖縄とアメリカ軍基地の問題、八王子の事件の犯人の動機にある社会の理不尽さを絡まして、現代社会の闇を炙り出した社会派の要素もあり、ツンデレな妻夫木聡や子犬のような綾野剛や愚直な父親の渡辺謙や闇を抱えた松山ケンイチや一見チャラいが狂気を抱えた森山未來の丁寧にナチュラルにキャラクターの心の襞を演じ切った俳優陣のアンサンブル、日本映画の真骨頂そのものの傑作ヒューマンミステリー映画です。

  • 誰しも他人には話せない秘密がある。
    しかし、その秘密が、
    ある一つの事件をきっかけに
    疑いへと変わっていく。
     
    吉田修一原作の小説を映画化した本作品。
    吉田さんらしい、人間の心の闇の描写が秀逸。
     
    イギリス人英会話学校講師を殺害し、
    逃亡した市橋達也の事件が
    基になっているのは明らか。
     
    願わくばラストは、犯人以外の皆がハッピーに
    なってほしかった。
     
    現代日本に巣食う問題を知るためにも
    皆に見てもらいたい作品です。

  • 苦しい。重い。圧倒されました。
    信じられなかった事を後悔するのか、信じた事を後悔するのか。
    こんな結末になったら悔やんでも悔やみきれないです。特に東京パートと沖縄パート。
    怒りは自分に向けるものが1番大きい気がします。自分が壊れるのも1番早いけど。。

    殺人事件の容疑者の似顔絵、松山ケンイチさん・綾野剛さん・森山未來さんを足して3で割った絶妙な顔でこれは…となりました。身体つきや佇まいも似てる気がするのでよく集まりました。
    お一人ちょびっとだけ空気が違う人が犯人だったですけどね…豹変っぷりが凄かったです。

    松山ケンイチさんが関わる千葉パート、綾野剛さんが関わる東京パート、森山未來さんが関わる沖縄パート、それぞれ良かったですし他のパートに関わらないのも好きでした。
    役者陣の皆さんの演技合戦も凄かったです。中心人物に微妙な人がいない。
    宮崎あおいさんの設定が解らず仕舞いでしたが演技派の片鱗が戻ったと思いましたし、広瀬すずさんはこの系統の役を初めて拝見しましたがこちらのほうが好みです。
    妻夫木聡さんと綾野剛さんの関係とても好きでした。かなり良かった。ふたりとも本当に愛おしそうな顔してて。一緒は出来なくても隣のお墓に入れてください。。
    メインの方々は勿論、サブの方々も良かったです。特に辰哉役の佐久本宝さんかなり凄かった…デビュー作っぽいですが1番彼が良かったと思います。辰哉くんだけ、信じた後悔に加えて何も出来なかった後悔も抱えているから辛いだろうな。これから注目しようと思ってたら既にドラマの『3年A組』で拝見してたらしい。検索したら薄っすら記憶にあるキャラでした、この時の役も良かった。

    情けは人の為ならずと言うけど、情けをかけて殺されるんだから非情な世界です。
    こんな状況になったら果たしてわたしは相手を信じきれるのか……ぐるぐる考えます。
    原作も読みます。

  • 『怒り』(吉田修一)
    観るものに‘逃走の殺人犯人の影’を据えながらながら、それぞれ同時に3つのストーリーが進んでいく形で作られている。
    同じような作りの作品『恋人たち』(橋口亮輔)を一月ほど前に見ていたが、こちらは通底するテーマが共通だったのに対して、こちらの『怒り』は‘逃走の殺人犯人の影”が共通だった。
    タイトルの『怒り』よりもむしろ「『信じる』ことの難しさ」というものが共通項として3つのストーリーに流れていたように感じるように作られている。

    まずは『怒り』を感じることのできたストーリー(森山未來、佐久本宝、広瀬すず)。自分の存在が蔑まれたことをきっかけに、自分の感情の抑制が効かずに暴走していく、森山未來。たったあれだけのストレスで怒りの感情が暴走し、とてつもない行動にでる姿は‘精神が病んでいる’ことを確信させる。
    平常なときの広瀬すずや佐久本宝との会話は穏やかだが、むしろそれは意識して抑制を効かせて装っている。
    「俺はお前を守るから」と佐久本宝に言った言葉は、森山未來の世の中に向けた自分の願望のように聞こえた。

    (欲をいえば、この『怒り』の背景や、波紋を全編を通じて描いて欲しかった)

    (宮崎あおい、渡辺謙、松山ケンイチ)
    幸せなんて絶対つかめそうもないように映る娘が、小さな幸せの可能性を嗅ぎとって、松山ケンイチを手放さないように健気に必死に『信じて』生きている。そこに、「疑う」という影がさし始めると一転して、同じ実像がまったく違う風景になっていく。父(渡辺謙)が、娘(宮崎あおい)を『信じる』姿には祈りが感じられもした。
    この『疑い』が『信じる』ことをより強いものにしていくか、あらたな嵐を呼び込むものにするかは『信じる』対象を相手にするのではなく、自分自身にするに至るしかない。
    「私が信じた選択だから…」と

    (妻夫木聡、綾野剛、高畑充希)のストーリー。『大切なものは増えるんじゃなくて、減っていくんだ』(原日出子、高畑充希(綾野剛のことば)
    がテーマになっている。「人は社会で生活してく過程で様々な欲望に心を移し、「大切なもの」を獲得していくけれど、経験を経るにしたがい、その多くの「大切なもの」のなかにその感情を駆動させる「信じる」ということが宿っていることに気づき始めて、「大切なもの」と思っていたものを少しづつ手離していく。そして手もとには『信じる』ことを中心にしたものだけが残される。
    妻夫木聡の絶望感はこの『信じら』れずに大切なものを失った人間の姿を映していた。
    (綾野剛の新しい境地、高畑充希の会話のタメが新鮮だった)

    2017/05/15

  • 面白かったけど、2度は見ないかな。

    発端となった住宅街での夫婦殺害事件は意味深な「怒」とのメッセージを残しながら、実は元々猟奇的な人格を有する男の深い意味を持たない犯行だった。

    その犯行のせいで、暗い人生を背負わされた関係のない二人の男とその男を取り巻く人間の間の絆が揺らいでしまう。
    しかも絆が揺らいだのは、他でもないその男を一番大切に思っていた人間の心にふと生まれた不信感。

    地味に犯人のモンタージュ写真がすごい。確かに3人の誰かかもと思わせるような、輪郭がいまいちはっきりしないどこにもいそうな誰にでも当てはまりそうな顔。
    あと、妻夫木聡のゲイの演技もすごい。全く自分の中になかった人格をここまで真に迫った人物として成立させてしまうなんて。

  • ストーリーが3つ同時に進んで行くので誰が本当の犯人なのかわからなくてドキドキが止まらなかった。
    信じることの難しさと、裏切られることの簡単さ。

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