AX アックス (角川書店単行本) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 何というか、非常に愛らしい父親が主人公の連作短編でした、
    特に好きなのはBeeです。厚着をした主人公が庭に大の字で倒れている姿が非常に良いです。
    願わくば、もっと彼の話を読んでみたいなぁ。と思いました。この作品自体から父性みたいなものが溢れていて、あぁ、これは人の親が書いたものなのであろうと思った次第です。

    この殺し屋シリーズというのはどうしても主人公が、非合法な存在な訳で、こういった圧倒的に筋が通っていない状況からどうやって主人公の存在に筋を通すのかが、この手の物語の命題になってくるのでは?と思います。
    もちろん、そこらへんは全部投げ出して格好良さで持っていくであるとか、任侠映画みたいにその世界の正義に従うというのも一つの方法だとは思うんですが、もうちょっとそういった処理は幼稚だとか、古いと言われる時代だと思うんですよね。
    その中で「AX」では公平さという角度から主人公に筋を通させます。
    正義というのは間違いやすい、というよりも求めれば求めるほど中心から離れていく性質のあるものだと思うのですが、公平さというのは真芯を捉えることは難しくても向かう方向は間違えにくいものだと思うんですよね。そういった意味で公平に向かう努力というのは、こういった非合法な人間を扱う物語の一つの答えになる気がします。

  • 最初は、
    短編集かな?殺し屋だけど恐妻家のほのぼの話かしらん?という感じでした。その為、殺しのシーンが出ても、その「お仕事シーン」よりも家庭での「妻とのかけひきシーン」の方が緊張感あるぐらいでした。前2作でバタバタと人が死ぬのに慣れたせいかもしれません。
    ただ、
    途中からは一変、結末に向けて緊張感が増してきました。
    また息子が涙するシーンでは共に泣いてしまいました。
    あそこに…が行っちゃってたら、どうするのさ?!という疑問は残るにせよ、面白かったです。
    「蟷螂の斧」いつか、ガツンと。やるべきことをやりましょう。

  • 一日で読み終えた。
    読んでいて気持ちよく思える一冊
    読み終わるのが残念だった。

  • 殺し屋シリーズの最新作が出るぞ~!! ということで、実に6年積んだこちらを読むことにした。(なおSOSの猿)

    「兜」は抜群に腕のいい殺し屋だが、表向きは文房具メーカーに務めており、家庭では恐妻家でいつも妻のご機嫌を伺っている。
    そろそろ殺し屋を引退したいと考えているが、なかなか抜け出せず……といったお話。

    兜は恐ろしい殺し屋ではあるが、「フェアである」ことを大切にするうえ家庭では妻に頭が上がらないので、好感が持てる人物になっている。
    たまたま「フェア」=公正さにこだわる人物が登場する作品を少し前に読んだばかりなのだが、単純な勧善懲悪が古びた時代の新しい機軸なのかもしれないなと思った。

    しかし、実際には世界はアンフェアである。
    幼少期から親に愛されず、汚れ仕事ばかりやらされてきた兜と、両親に愛され受験生でペーパーテストに苦心する息子の克己との間の格差は大きい。
    「やれるだけのことしか人はできないんだから、やれるだけやって、無理なものは仕方がない」
    兜の妻は言う。このアンフェアな世界を生き抜くための指針だ。
    というか、ほかにどうしようもない。

    殺し屋を引退しようともがく兜の抵抗は、蟷螂の斧、はかないものであったかもしれない。
    それでも兜の人生は、まさに妻の言葉を体現したものだったと思う。

    蜜柑と檸檬、槿、蝉といった懐かしい名前にもオッとなった。
    『777』も楽しみだ。

  • もっと伏線回収あるんかと思ったまま終わった。
    家族愛は素敵。

  • 以前新聞で伊坂幸太郎さんを知ったので、図書館でなんとなく伊坂さんの本を選んだのがきっかけで読んだ。

    殺し屋が出てくる小説は初めてだった。この作品は、伊坂さんの文体で、不思議と小説の世界に引き込まれていった。読んでいて全然飽きなかった。また、殺し屋同士が向かい合う場面では本当に緊張感が伝わってきた。場面場面によって緊張、恐怖が伝わったり、また、思わず笑ってしまったりと、とにかく文章力が光っていると思った。主人公がビルから飛び降りるシーンは背筋がゾーッとした。それは描写というか、本当に自分もビルから飛び降りるような感覚になったからだと思う。文章でこのような感覚になったのは初めてのことだった。最後、主人公の部屋に医者が強引に入り、ボウガンの矢が高速で医者の胸に突き刺さり、医者が宙に浮くシーンに一番驚かされた。主人公が何故息子に、部屋に入ってはいけないと言ったのかが明かされ、衝撃的だった。この小説で一番印象に残ったシーンでもあった。それから、ボーガンというとこのことが真っ先に頭に浮かぶようになった。この小説を読んで、少し経った頃はちょうど元号が令和に変わる頃で、私は東北に旅行している頃で、平泉でワンプレートランチを食べていた時にTVに写っていたニュースに武蔵陵墓地でボーガン自殺を図ったというものがあり、ボーガンをこの小説で知っていたので、すぐ「あれか!」と理解できた。(5月1日のことでした)話が逸れました。とにかく、独特の語りが印象的な作品だったと思う。

  • 不幸な生い立ちから殺し屋を生業としてきた1人の男が、愛に目覚め、自分が冒してきた罪の大きさを知って足を洗う決意をする。ところが足抜けを許さない殺し屋の元締めに命を狙われて……。

    とストーリーを書いてみると、ハードボイルド小説にでもありそうな筋書きである。だが「殺し屋シリーズ」3作目となる今作は、相変わらずこちらの予想を裏切るオフビートを刻む。

    描かれるのは息子を愛し、妻のご機嫌取りに滑稽なほど腐心する中年サラリーマンの日常だ。ほのぼのホームコメディと言ってもいいくらい和やかなストーリーに、一点、影を落とすのが、家族にも秘密にしている主人公のもう一つの仕事、殺し屋稼業。章を追うごとにその影は広がっていき、中盤を過ぎたあたりで急転直下、読む者の度肝を抜くような展開が待っている。

    これはきっと、ハッピーエンドなんだろうなあ。このシリーズには「悲劇と喜劇は紙一重」といった警句を思い出す。笑いと切なさが入り混じるような読後感が長く胸に残ります。

  • 物騒で、あまりに道徳を逸脱した自分の仕事については、もはや許してもらえるたぐいのものではないため、懺悔することはできなかった。願うのは、「自分の家族の平和」のことだ。妻と息子がそれなりに平穏な人生を送れますように、と念じる。(兜)


    再読。前回読んだ時よりも面白く、切なかった。
    殺し屋で恐妻家という設定がまず面白い。

    殺し屋3部作の中では“グラスホッパー”“マリアビートル”とハラハラする展開が多かったが、“AX”では日常とハラハラの緩急のテンポが良く、一気に読めた。

  • 蜜柑と檸檬がちょこっと出てきて嬉しかった

  • 伊坂幸太郎さんが度々テーマにする「殺し屋」シリーズ
    主人公の兜は殺し屋でありながら家庭の中での人間味のようなものを感じて交換が持てた
    中盤〜終盤の急展開が気になって一日で読みきってしまった
    個人的に、読後感がラッシュライフに近いものを感じた

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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