花咲舞が黙ってない (中公文庫) [Kindle]

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  • \2024年4月13日(土)~ 今田美桜さん主演でドラマスタート!!/
    2024年7月末まで、ドラマ化記特別カバーで配信中。

    その日、東京第一銀行に激震が走った。頭取から発表されたライバル行との合併。生き残りを懸けた交渉が進む中、臨店指導グループの跳ねっ返り・花咲舞は、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまう。隠蔽工作、行内政治、妖怪重役……このままでは我が行はダメになる! 花咲舞の正義が自行の闇に切り込む痛快連作短篇。

  • 池井戸潤の経済小説。
    池井戸作品を読むのは、多分、初めてで、映像化されたものも見ていないのだが、売れっ子なのもなるほど納得である。
    本作の舞台は銀行だが、業界の裏知識も散りばめつつも、小難しくなく、よい意味でエンタメとしてさくさく読める。個性の強い登場人物たちの活躍ぶりも楽しく、爽快感のある読み心地である。

    ドラマにもなった「花咲舞」シリーズの2作目にあたるもの。
    シリーズ第1作は『不祥事』(2004)という連作短編集である。これをもとに「花咲舞が黙ってない」というタイトルでテレビドラマが制作された。女優・杏が主役を演じ、2014年・2015年と2シリーズが放映され、なかなかの人気だったようである。
    それを受けて、2016年に、花咲舞を主人公として、新たな連作短編が新聞連載の形で発表される。単行本化を飛ばして文庫化されたのが本書である。タイトルはテレビドラマの後追いとなっている。人気番組として人々の記憶にも新しく、また語呂もよかったということだろう。

    時代背景は20世紀末で、発表時よりもやや前のことになる。バブル崩壊後、大手ゼネコンや証券会社が破綻したり、銀行が合併して再編成されたりと経済的には大きな事件が相次いだ。「銀行に入れば一生安泰」というような時代ではない。
    主人公・花咲舞は、大手の東京第一銀行で「臨店指導」を行う。事務作業等に問題を抱える支店に赴き、問題点を分析して解決に導くのが仕事である。
    正義感が強く、曲がったことはズバズバ指摘する舞は、いささか「はねっかえり」とみられていて、上司の相馬には花咲ではなく「狂咲(くるいざき)」と呼ばれたりする。

    池井戸は銀行勤務の経歴もあるが、元々、ミステリを愛読していたそうで、本連作でもミステリ風味も大いに感じられる。
    銀行が抱える不祥事や不正、その後ろで糸を操る者は誰か、その動機は何か、となれば、これはもうそのままミステリとして成立する。
    本連作短編集では、短編ごとに小さな「事件」が起こっていく。だがその背景には、常に、東京第一銀行と別の大手、産業中央銀行の合併計画がある。大きな計画の前に、小さなミスで銀行の評判を落としてはならない。そのために暗躍する者たちもいる。
    舞たちは小さな不正と闘いながら、徐々に、銀行に潜む大きな「闇」に挑んでいくことになる。
    このあたりの構成も巧みである。

    別シリーズの半沢直樹は産業中央銀行に勤めているため、半沢が顔を出すシーンもあり、池井戸ファンの方がより深く楽しめる作品だろう。
    とはいえ、特に予備知識がなくても読めるし、巻末の丁寧な解説で背景もわかる。
    花咲舞シリーズはさらなる続編の予定はないようだが、数年後に、コロナ禍での銀行を舞台にした小説を著者が書くことがあるのであれば、読んでみたいような気もする。


    *なぜ今回手に取ったかといえば、出先で読む本がなくなったためでして(^^;)。田舎の新幹線停車駅、書店はないとしても多少は本は置いてあるだろうと思ったのですが、文庫本は売店の小さな棚に1列、およそ10冊ほどだったでしょうか。うち半分ほどが池井戸作品で、この「花咲舞」1冊と「半沢直樹」4冊。購入した本は2017年9月発行でした。多分、2017年当時からずっとあの場所にあったんだろうなぁ・・・(==)と思うと、なかなか感慨深いものがあります。いやぁ、列車で本を読む人は少なくなってるんでしょうねぇ・・・。

    *本作のトリックの1つに、ATMからの300万円以下の現金振り込みを利用したものがあり、2017年現在では10万円以下しか振り込めないという注意書きがあります。オレオレ詐欺の影響ですかね。これはこれで時代を感じて感慨深いです。

  • まさか半沢直樹が出てくるとは思わず。
    エリア51は、半沢直樹の本編で暴かれたやつか?

  • オーディブルにて。
    さすがにそれはないだろうとつい、突っ込みたくなってしまうようなところも多少はあるけれど、凄い取材力とテンポの良い展開につい引き込まれてしまう。
    短編ですぐに決着が付くし、小気味よくて後味が良い。水戸黄門のような安心感でつい、やめられなくなる。気楽に気分転換したい時に、持ってこいの一冊だった。

  • 銀行における大小様々な事件を相馬と花咲、事務臨店チームが解決していく痛快なストーリー。
    最後には半沢直樹も登場する。
    いわゆるバンカーそれぞれの矜持とプライドが交錯し、複雑かつ単純な人間関係の渦巻く銀行の姿を炙り出していた。

  • 面白い。けど銀行には腐ったやつばかりかと誤認しそう。組織なんてそんなものかもしれないが。

  • ・資金調達のために銀行へ提出される出店計画情報の不正漏洩
    ・死亡者の口座を使用した計画倒産
    ・水質洗浄会社のマネーロンダリング
    ・銀行会長による政治家との癒着
    社会常識<社内政治、出世競争渦巻く銀行の中でも常に自分らしく輝く主人公

  • 面白かった!

  • 7つの短編集。花咲舞が活躍するが、昇仙峡玲子の活躍を描くタイトルも欲しい。

  • "花咲舞が黙ってない"とその前日譚の"不祥事"そしてドラマの元ネタのひとつとして挙げられていた"銀行総務特命"
    銀行総務…は花咲舞ではなく、男の見た男の社会的なところに一人女の人が特命で入っていくのですが、花咲舞ほど面白くやり込める感じじゃない

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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