Black Box (文春e-book) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 「ブラックボックス」と呼ばれる第三者の目撃や記録がないところで行われたことに関しては、事実の確認ができない。この本で明らかにしたのは、女性の発言が不利に働くに決まっているということだ。それは、男性中心から変わってない法律、権力側に男性が多い社会、「自己責任」がうたわれる社会。そんな中で声をあげている女性に対して、一定の「伊藤詩織が嘘をついている」と信じてるそうがいるのは予想ができる。

    私は人は信じたいものを信じ、みたいようにものを見ると思う。
    だからこの本を読んで、やっぱり彼女は怪しいとか、事実の証拠が甘い、売名だ、とか言っている人は、この社会構造が変わって欲しくないんだろうな。そして、難しいよねで終わってしまうのは、まだ自分が被害者になった時のことを想像してないんだろうなと思う。私はこのままの司法と社会構造で子供を(性別関係なく)育てたくないなあ

    印象に残ったフレーズ

    「それまでに何度かのぞき見た日本の報道現場は、完全な男社会だった。私が甘いのかもしれない。こんな風に踏まれても蹴られても、耐えるべきなのかもしれない。魔が差したように、そんな考えが頭をよぎった。しかし、そんなことを受け入れていたら、自分を失ってしまっていただろう。」p60
    「私は何のために、この仕事につきたいと願ってきたのか。自分の中で真実と向き合えないのであれば、私にこの仕事をする資格はないだろう、とも思った。たとえ志していた業界で働けなくなっても構わない。信念をもって生きていかないのなら、どんな仕事をしたって、私は私でなくなってしまう。」p71

    →以前ウーマンリブ運動の田中美津さん(か上野千津子さん)が講演会で、「画一化した女の生きかたの方が利口。・・・でも『私』としていきたい。その私はゆらぎの中に存在する。それは何か、はっきりとは言えないが、考え続けるものである。」と言っていたのと重なった。世間に求められること、とかみんながしている「利口」に生きるのではなく「自分」を失わないために抵抗することは勇気のいること。しかしこういう勇気が社会を変えるのだろう。

    ・「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」p74「処女ですか?答えづらいかもしれませんが」「『第三者が犯行現場を見ているか、その犯行ビデオがないと、準強姦罪の適用は難しい』」「日本の『準強姦罪』はあってないような法律なのだ」p162

    →記憶がない間に性行為を強要されていたのは、よくある話って治安を守る側の人が当たり前にいうの、怖い社会。

    ・「もっと泣くか怒ってくれないと伝わってこない。被害者なら被害者らしくしてくれないとね」p76
    →とか、服のボタンが空いていたから、そういう女だとか、わかりやすいステレオタイプに当てはめて理解、違ったら嘘つきと非難する愚かな人間・・・・。

    ・「レイプはどの国でも、どんな組織でも起こる得る。組織は権力を持つ犯罪者を守り、「事実」は歪められる。キャリーさんの身に起こったことは、決して珍しいことではない」

    ・「『被害者のAさん』ではなく、実際に名前と顔がある人間として登場したことが世の中に与えた影響は大きかっただろう」p219

    ・「そんな可愛いビキニ着てるからだよ」

  • (読了後の感想)
    女なら、誰にでも起こりうる危険。男でも、誰でも起こしうる過ち。特に女性は、自分が思わぬところで被害にあうかもしれないことからも、年頃になったら一度は読んでおきたい。

    #metoo ムーブメントが一部の男性からの拒否反応を引き起こすのは、自分も水面下の加害者であるという人がいるからなのだろう。それだけ、性犯罪やセクハラは日常的かつ身近なものである。そして女性は、それほどの理不尽や恐怖心を日々の生活の中で感じて生きているということを、男性には知って欲しいと思う。

    伊藤詩織さんは、心身ともに傷だらけになりながら、自身のレイプ被害と性暴力を黙殺する日本の司法に立ち向かっている。そんな彼女の勇気と覚悟に、尊敬の念を抱きました。


    (読書初日の感想)
    読んでいてとても苦しい。
    私が過去のこととして葬り去ったはずの怒りや悔しさが、どんどん込み上げてくる。
    この本を読んで泣くつもりなんて微塵もなかったのに。

    私も留学中にレイプされたことがあります。
    飲み会帰りにいきなり抱きついてキスしてこようとした先生を拒んだ翌朝、お酒のせいにされたこともあります。
    インターンで遠方に出かけた際、滞在先のエレベーターで酔っ払った社長に「もっと一緒にいたい」と言われたこともあります。
    何より腹が立つのは、決まって「お酒のせい」にされること。
    そして何より傷つくのは、こういう話をしたときに人から咎められること。
    「なぜもっと強く抵抗しなかったの?」「少女漫画じゃないんだから」
    そうして私は、これらを「黒歴史」として葬りさることにしたのです。

    あれから数年が経ちました。
    レイプにあったことは、当時の彼氏とカウンセラーにしか喋っていない。
    セクハラは、もはやネタにしてしまっている。本書を読んで自分に怒りました。
    私はあの時の怒りを忘れない。忘れてはならないのだ...
    そう思いながら、明日も読み進めることにします。

    (追記)
    私には今まで、フェミニズムや#metoo 運動にまつわる話題から何となく距離を置いてきた経緯があります。本書は、私がこの類で手に取った初めての本。そして本書を読んで、私がなぜあえて#metoo と距離を置いてきたのかがストンと腑に落ちました。
    私は研究者を志しています。本書を手に取ったのも、研究者としての興味関心からです。つまり、世の中で起きている運動のうねりを把握し客観的に分析するために手に取ったのです。それが、読み進めているうちに、知らずして私も当事者になってしまっている。個人的な当事者感情に支配されて、気づけば客観性のかけらも無い自分がいる。つまり、研究者としての客観性と当事者女性としての感情のバランスをうまく制御する自信が私にはなかったのです。
    本書はきっと、当事者としての「私」が解放されるきっかけになる。今後は、研究者として、また当事者として、いかに #metoo と付き合っていくべきかを模索する時期に入るのかな、と思います。

  • 断捨離していたら本棚の奥から出てきましたよ。なんで今まで読まずにとっておいたのか自分でも謎…まあ忙しかったからなあ。
    しかし出版から3年が経ったから賞味期限が切れてしまったかと言えば、そうではない。なぜなら著者が本書で訴えようとしたのは政治スキャンダルにおける自身の主張ではなく、性暴力被害にあったときに適切な支援も正義ある裁きも行われない日本の現状を変えることだからだ。この事件は、一面では官邸とつながった権力の介入という特殊性をもつ一方、ある一面においては、性暴力の不処罰というきわめて「ありふれた」問題でもあるのだ。
    本書の前から存在していたその問題は、本書が出た後も大きく変わっていない。被疑者が「合意はあると思った」といえば多くの被害がレイプとして認められず、声を挙げた者がいっそう傷つけられることを前提に、はした金で黙らされるやり方も横行し続けている。そして権力のトップでは、検察への介入を許した官邸における権力濫用の主が、さらにそのやり方を続けていこうとしているのだから。
    それでも著者が声を挙げたことによる変化はなお地面の下で続いていると思いたい。誰、ではなく、どの男が首相の座を引き継ぐのかだけが権力の問題なのだと思ってきたのは、マスコミや社会の多数の人たちも変わらないだろう。しかしそうした権力の見方こそが、無数の人たちの被害を生み出し沈黙させてきた力でもあるのだ。詩織さんの訴えはそのことを問うている。

  • 日本の司法制度というか法に問題があるということが、明確に示されていると言う点でも、この本は単なるゴシップ本なんかではなく、レイプ被害を実際に受けた人の取るべき姿を勉強できるものになっている点で優れていた。つっこみどころは、あるかもしれないが、それは目をつぶって、彼女の主張に耳を傾けるのが良いように思える。レイプ被害者というよりも、それを書いたジャーナリストのような冷静さによって、ただの感情論ではなく、何が問題なのかを浮き彫りにさせているという点が、この本の良いところなのである

  • デートレイプドラックのことや、この国で性被害に遭ったときにどんな対応をされるのか、知識を得ることができた。辛い経験を勇気を持って発信してくれたことに感謝。

  • 近年のフェミニズムの流れを知るにあたり、
    避けては通れない一冊。
    ジャーナリスト伊藤詩織さんの性被害との格闘。
    司法は、今後、より一層この問題を真摯に受け止めて変革されるべきだと私は思う。

  •  ジャーナリスト志望の伊藤詩織が元TBSワシントン支局長だった山口敬之に強姦されたことを実名で告発した事件について、被害者側から詳しく経緯を説明した本。

     この事件については山口敬之と安倍首相との関係や不可解な逮捕中止など、政治絡みの疑惑が取り沙汰されているが、そういった特殊な事情を抜きにしても、性犯罪に対する捜査の実状と課題を知る上で参考になる。

     強姦(現在は法改正で強制性交に変わった)は、色々な点で特殊な犯罪だ。同じ行為でも合意があれば罪にならないし、通常は第三者の目がない場所で行われるため証拠や証言が残りにくい。

     そして推定無罪原則のもと、犯罪性を被害者側が証明しなくてはいけない。極めてハードルが高く、この事件以外でも信じがたいような無罪判決がしばしば報じられている。

     疑わしきは被告人の利益に、という原則は確かに大切だ。しかし性犯罪に関して現在の日本の判例では、この「利益」が「やりたい放題」に近くなっているのではないか。一部法改正は行われたがまだ十分ではない。

     少なくとも、夫婦でも恋人でもない相手の場合、合意がなかったことを被害者に証明させるのではなく、明確な合意があったことを加害者に証明させるようにするくらいは必要ではないだろうか。

     この事件は刑事で不起訴になったが民事ではまだ係争中だ。どのような結果になるか注目したい。

  • 本当に何があったかは、証拠が残っていないこの状況では当事者しか知り得ないけれど、セクハラやレイプ、司法問題など事実存在する問題を解決していくには、彼女のように声をあげる人が必要なのかも感じた。

  • P.2018/4/30

  • テレビでサラッと報道をみただけだっので、気になって読んだ。

    彼女と同じように、子供の頃から痴漢にあっていた私からみると、警戒心が 少し足りない感じがした。
    薬を盛られた証拠はないのに、盛られたかのような書き方。

    レイプ被害に合う前と、あった後の行動に疑問。

    事実は、この本を読んだだけでは わからない。
    モヤモヤしている。

    この本で、学べる事は、

    仕事の話で会食するなら、お酒は一杯でやめておく。
    もしくは飲まない。

    レイプ被害にあった時に、やるべき事。

    性犯罪は、結局 被害者が弱い立場だという事。



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著者プロフィール

1989年生まれ。ジャーナリスト。「アルジャジーラ」「エコノミスト」「ロイター」などの映像ニュースやドキュメンタリーなどの制作を行う。著書『ブラックボックス』(文藝春秋)

「2018年 『しゃべり尽くそう! 私たちの新フェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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