- Amazon.co.jp ・電子書籍 (217ページ)
感想・レビュー・書評
-
「ここはけっきょく最後はどうなるの?」とわたしはたずねた。「ZAFO企業が操業をはじめて、そのあとは?」
「つぎの大きなステップは税金ね」
「税金?」わたしはフンと鼻を鳴らした。「みんな税金を払いたくないからここにくるのに」
「税金はもう払っているのよーーKSCへの賃料というかたちで。これからは街の豊かさが直接、経済に結びつくように不動産所有と税金を導入したモデルに変えていく必要があるわ。でも実現するまでには、まだしばらく時間がかかるでしょうね」
彼女は眼鏡をとった。「すべて、ひとつの経済のライフサイクルのなかで起こることよ。最初は無法状態の資本主義。それが経済を阻害しはじめると、つぎにくるのが規制と法の施行と税金。そのあとはーー公共の利益と社会保障。そして最後が支出過剰と破綻」
「ちょっと待って。破綻?」
「そう、破綻。経済は生き物なのよ。元気一杯で生まれてきて、硬直して疲れ果てて死んでいく。そしてまた必要に迫られて、人は小さな経済集団に分散して、あたらしい、でも、より秩序のあるサイクルがはじまる。赤ん坊の経済よ。ちょうどいまのアルテミスのような」
「ふうん」わたしはいった。「じゃあ、赤ん坊をつくりたいと思ったら、誰かがやられちゃわないとだめなわけね」
彼女は笑いながらいった。「ジャスミン、あなたとわたしはうまくやっていけそうだわ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)
-
まさかこの内容で最後にダダ泣きさせられるとは。おじさん涙腺決壊。もっとも、こんな娘を持ったら、父ちゃん心配でたまらんぞ。
とにかく面白いので、読みましょう。
彼と藤井太洋、東西新世代の双璧で安心して読める。テクノロジーというよりも人の知性への揺るぎない信頼と、生きることへの素直なポジティブさに、元気にさせられます。
-
ジャズが依頼された破壊工作は、実は企業買収の前段なのですが、それに絡んでなんと……殺人事件まで発生してしまう。
しかも、マフィアの殺し屋に命を狙われるジャズ!
下巻になると上巻以上にドタバタになります。
上巻ではジャズの敵っぽかったボブやディルのプロフィールもわかるし、彼らがなりゆきでジャズに協力する事に。
そしてなんと、ジャズの恋愛要素も出て来て、ますます面白くなります。
敵だった人物も巻き込んで一時的な味方にしつつ、トラブルにつぐトラブルというのはまさに「スター・ウォーズ」的な面白さです。
あるいは、少年ジャンプ的と言ってもいいかなw
それにしても、ウィアーという人は、シミュレーションが巧みだな、と思います。
そうでなければ、ここまでリアルな月面都市は描けないと思うんです。ジャズが請け負う破壊活動についても同じです。
『火星の人』でもそうでしたが、科学的な裏付けもきちんとしているようで(私は科学者じゃないからそこはそう思うだけなのですが)、実に物語にはリアリティがあるのです。
まあ、リアリティがありすぎて、アルテミスで一番安い食べもの、ガンクがいかにも味気なさそうなのが残念でもあり、ちょっと笑えたりもするのですが。 -
SF映画を二つ思い出した。
ショーン・コネリーが出ていた「アウトランド」と
マイケル・クライトン原作の「アンドロメダ…」。
チームアルテミスが結成されてからは一気読み。