働く女性 ほんとの格差 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 望む支援や制度の在り方は、女性一人一人によって違うのだ。一律で行えばうまくはいかない。
    「(ある女性の声を要約すると)育児休暇を取るならもっと申し訳なさそうにしろ」という意見も衝撃..。
    ★本の概要・感想

    「全力の子育てと充実した仕事」、必ず両立を目指さなければならないのだろうか?両立を目指すからこそ、苦しい思いをしているのではないか。というのが率直な感想だ。本書では、「女性の働きづらさ」や「子育てのしづらさ」が多くのケースである。その背景としては、おもに職場の制度が不十分とか、理解が無いからではないか、という論調に思える。本書のターゲットは職場環境の構築の責務を担っているマネージャーや経営者だからだろう。ただ、私は読みながら、この問題の広さと深さに頭を抱えてしまった。「これだけの問題があるのか、よしもっと活躍できるような場を作ろう」という、作者の期待する方向ではない。私は闇落ちした。「こんなに多種多様な悩みを抱える人を全員救うのなんてムリゲーなのでは?」という思いが強くなってしまったのだ..。もうちょっと、企業側も女性側も「最高の仕事と悔いのない子育ての両立を諦める」というような、アプローチがあってもいいんじゃないのかなぁ、と思う。というか、そうして理想を下げないと、やっていられない。ただ、女性活躍推進はあくまで経済的な戦略である。どの企業も働き手が不足するこの社会で、「女性の働きやすさの確立」を目指すことは避けられないのだろう。しかし、「女性だって出産後も正社員でバリバリ働いてもらわないと困るよ」という価値観がデファクトスタンダードと化すのは、またある種の生きづらさを生むような気がしてならない。子育てと仕事の両立は非常に難しいのが、この社会の現状であることが分かる一冊。

    ★本の面白かった点、学びになった点
    *日本にとって女性活躍推進は経済戦略
    ・女性活躍推進が女性の地位向上策というのは一面的な見方にすぎない
    ・男女差別の是正といった社会的平等や正義が目的ではなく、目指しているゴールは経済効果だ。乱暴な言い方になるが、女性自身がどう思っているかは優先順位で高くない

    *女性だって育児休暇を取る同僚に反発する
    ・「いくらなんでも場違いですよね。育児ストレスを解消するためにママ友とリフレッシュも必要なんでしょう。でも黙っていればよいものを、半期の締めでみんなが忙しく働いている9月末に、わざわざ職場で話すかなぁ。」

    *育児休暇が時短勤務が認められる職場が増えてきた。しかし、その余った仕事をカバーするために、周りの女性社員に負担が強いられている

    *「子あり」ほど女性活躍を実感している
    ・その一方、子どものいない女性の方が実感をしにくくなっている
    ・(ある女性)「同じ早退するにしても、子どものためならOKだけど、シングル女子がリフレッシュっしたくて買い物や映画に行こうとしたら、たぶん上司や同僚は許しませんよね。やっぱり子育ては特別扱いなんですよね。」

    *女性活躍推進施策は「ケア施策」と「フェア施策」の2つに分けられる
    ・ケア施策は法定を上回る育児休業やベビーシッター代の給付、育児期の在宅勤務学校行事へ参加するための有給休暇など仕事と家庭の両立をしやすくするための取り組み
    ・フェア施策は、女性管理職の登用や、女性採用の拡大、女性社員を対象にした社内研修など男女格差の解消を目的とした均等施策

    *八木氏「終身雇用や新卒採用偏重、年功序列、長時間労働など高度経済成長期に男性が作り上げ、今も守ろうとしている職場風土をリセットしないと、女性活躍推進は望めないと断言する」

    *OECDは日本の高学歴女性の就業率の低さに注目。優秀な人材が働いていないのは経済的な損失だと指摘

    *「慈悲的性差別」に男性は気をつけろ
    ・過剰に紳士ぶって、女性をいたわり、弱いモノあつかいすると、それは差別になる

    ※個人的には、他の人がカバーする前提で認めらる育児休業や時短勤務の制度が狂っているように感じる

    ●学んだことをどうアクションに生かす
    *育児休暇や時短勤務を認めるなら、「その人が休むことによって他の人に負担が集中しない」仕組みをセットで考える必要がある
    *俺が企業を作るなら、「働く時間の柔軟さ」と「責任量とタスクが他人に染み渡る」ことが無いように設計する
    *ケア施策とフェア施策を同時に行うように心がける

  • ・「ケア施策」と「フェア施策」、企業は前者を優先する
    →前者の恩恵は子どもを持つ女性社員のみが受けるため、整ってきたら、フェア施策も進めるべき

    ・次世代法・女活法による歪みの是正は必要
    →行動計画を策定する、目標数値を達成する、ということに目が行きがちで、企業の中には不幸な登用が行われてしまう事例も

    ・先輩WMが、両立施策を目いっぱい活用しきるノウハウを伝えるようになっていくと、ぶら下がり女性社員が増えてしまう

    ・女性差別は二通り「敵対的性差別」と「慈悲的性差別」
    →きつい仕事をさせては気の毒、責任を負わせてはかわいそう、一見配慮・やさしさに見えて実は差別

    ・同じWM内で比較される
    →短時間勤務を続ける女性をとりまく環境(夫の家事関与・実家の支援)に目を向ける

    ・SCSKの社長、娘に叱られる
    →おっさん世代は女性が働くのは経済的理由との思い込み。

    ・復帰支援・両立研修に、女性社員の配偶者を社内外問わず呼ぶ企業あり

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著者プロフィール

東京・編集局経済解説部編集委員
1964年新潟県生まれ。早稲田大学卒。1988年日本経済新聞社入社。少子高齢化や女性のライフスタイル、企業の人事制度などを主に取材・執筆。2015年法政大学大学院MBA(経営学修士)取得、修士論文のテーマは女性管理職のキャリア意識とその形成要因。女性面編集長を経て現職。

「2019年 『味の素 「残業ゼロ」改革』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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