未来のイヴ (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 正直かなりキツかった。
    訳文は平明で読みやすい。「エウォルド卿の恋愛」と「エジソンの人造人間の作製」で成り立つ筋立ても面白いし、「ハダリー」の無機質な魅力は"アンドロイド"の原点ながら、今もなお色褪せない素晴らしい描写だ。しかし、如何せん、時代性として女性への侮蔑と偏見について延々と目を通す必要があるので、そこは本当にうんざりする。
    そこの認識が完璧にずれてしまうので、エウォルド卿の当時は高貴で崇高なものであったのだろう(と、もちろん思いながら読みはするのだが)愛を希求する精神が、独りよがりで支配的な満足感を求めるものとして、私には捉えられる。
    あるいは当時も、純粋さと滑稽さを表裏にした人物という造形が彼なのだろうか?

  • ヴィリエドリラダンが19世紀に書いたアンドロイド、いやAIとの恋を描く先駆的SFの傑作が遂に新訳で読みやすくなった。絶世の美女アリシアに恋したエウォルド卿は彼女の世俗的内面に絶望する。彼の友、発明王エジソンは彼を救うべく高貴な精神を持つアリシアのアンドロイドを作りだす。コンピュータのない時代に電気仕掛けの理想の女性を作り出すのだ。男が女に恋する理由、女という生き物について、と仏文学につきもの独言のような哲学的会話が続くが新訳だから読みやすい。そしてエジソンはアンドロイドの仕組みを一つ一つ400頁に渡って語る。目、皮膚、肉、関節、体臭、二足歩行や表情の仕組み、会話する秘密など当時の科学の学説を持ち出し、その事細かな説明がリアルを肉付けする。そして完成したアンドロイドは超常的なことに魂、あるいはそう感じさせる原因不明の何かを持っていた。道理という現実を捨て感性を信じるべきとアンドロイドは言う。新しい生活を決意した2人は何も知らない本物のアリシアと帰国するため船に乗るが…。何という切ない結末!ハラハラドキドキのSFではない。恋とは何か、現実と幻影とはを考えさせる哲学的小説なのだが、やるせない結末にいたたまれなくなる。実に面白い!

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