死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 [Kindle]
- 河出書房新社 (2018年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (363ページ)
感想・レビュー・書評
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週刊誌の書評で知った本だ。
「死に山」 世界一不気味な遭難事故 《ディアトロフ峠事件の真相》
内容が余りにも不気味で、途中、この本を選んでまずかったかも・・・、
と弱気になったりしたが、著者の想像を絶する「真相」解明への努力や、
解明への「不思議な力」を与えられた結果、ことの成り行きが明らかにされたのだった。「超低周波音」・・・、1959年当時、この自然現象はまだまた「未知」の現象だった。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1959年1月、ロシアの大学生によるトレッキングチームが、真冬のウラル山脈へ出発した。当時の学生たちには、自らの限界への挑戦としてトレッキングが流行しており、このチームもより難しいコースに挑んでいた。
しかし、チームは遭難。捜索隊が発見したのは、テントからかなり離れた場所で、氷点下の中を薄着で靴を履いていない遺体だった。また異常な濃度の放射線が検出されていた。このチームのメンバーに一体なにが起きたのか?
チームが残した日誌や写真から、当時のチームの目から見たトレッキングの様子。
捜索隊の目から見た捜索の様子や現場の状況。
2012年に、アメリカのドキュメンタリー映画作家である著者が同じ真冬に現地を調査した様子や、科学的に検証していく過程。
この3つの流れが、入れ替わりながら進んでいく。
旧ソ連時代の秘匿性もあり、政府の秘密裡の核実験説や、UFO説や隕石説を打ち消すことができていなかったが、科学の進歩が十分に納得できる説明をしてくれた。
現地に古くから住むマンシ族からは「死の山」と名付けられていた現場。遭難当時には解明されていなかった現象も、言い伝えとして残っていたということか。 -
あぁ、面白かった!
本書は世界一不気味な遭難事故とされる「ディアトロフ峠事件」を主題にしたノンフィクション。
1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で、登山チーム九名がテントから1キロ半ほども離れた場所で、 奇妙な死体で発見されました。
彼らは氷点下の中で衣服をろくに着けておらず、全員が裸足。うち、3人は頭蓋骨折などの重傷、女性メンバーの一人は舌を喪失していました。さらに、遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出されました。
事件の異常性から、昔から多くの推理がなされました。冷戦下で秘密兵器を目撃したために抹殺されたという説、ソ連軍の軍事実験の失敗に巻き込まれたという説、エイリアン説などなど。
本書はこの事件に深い興味を持った米国人ドキュメンタリー映画作家が事件の謎を追い、ある結論に到達するまでを描きます。単行本で320ページの大作ですが、一気に読めました。
本書は事件前の学生たちの行動、事件発生後の捜査活動、そして現地で謎を追う著者の考察と結論。まさに事実は小説よりも奇なりという言葉そのものの興奮のノンフィクションです。
本書は謎解きノンフィクションですが、人権のないようなソ連で普通の学生が何を目的に、何を生きがいに生きてきたのかもいきいきと描かれています。このあたりも本書の読みどころと思いました。
おススメの★★★★★。 -
結論にちょっとがっかりだが、まあそういうことですよね。そこまで引っ張っていく取材力と構成力は秀逸。
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登山家グループの奇妙な遭難と、その原因の究明
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トレッキングに精通している登山サークルの学生9人が
不可解な死を遂げた。
マイナス30度を超える吹雪の雪山、
組み立てたテントを内側からナイフで引き裂いて、裸足で飛び出した形跡。
逃げ出した人間は、それぞれに、身を寄せ合って、または杉林で焚き火をして
なんとか暖をとろうとするが、
結局自然には勝てず、全員が凍死。
2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は舌を失っていた。
また、何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射性物質が検出された。
彼らに、一体何があったのか。
題材にしている事件「ディアトロフ事件」自体が、
50年以上経った今でも不明な点も多く、興味深い事件なので、
その軌跡を辿る内容は間違いなく面白い。
旧ソ連体制下の若者の生活など、(本や詩は禁じられていたため、暗唱するしかなかったとか)
無線は禁止されてなかったから、工学系の学生は短波無線を聞くのが流行っていたとか。
ロシアってドイツみたいに堅いイメージあったけど、歌ったり、踊ったり、結構リア充で驚いた。
その他には、アメリカ人の映画監督が、ロシアに旅するという内容になるので、単純に旅のルポとして面白い。
食べ物や文化の違いに戸惑いながら、世紀の難事件の謎に挑む。
あとは、北朝鮮を旅したルポのように、現地で同行してくれる人や
案内人の挙動にも怪しいところがおおく、
この事件、まだまだ裏がありそう。 -
ディアトロフ峠の遭難事件は、冷戦下のソ連、ウラル工科大学の山岳部の経験豊富な学生たちが、ウラル山脈の北側で雪山登山中、一夜にして全員が遭難死するというもの。
著者、当事者、遭難発覚後の遺族や捜索者たち、という3つの視点と時空を行き来しながら、事件の核心に迫る。
この多視点の描写、フィクションではよく見かける手法だったが、私の経験ではノンフィクションでは初めて。著者が「死に山」の謎めいた真相に近付けば近付くほど、当事者たちの山行記録が最期の幕営地であるディアトロフ峠に近付けば近付くほど、引きずりこまれるような感覚で読んだ。
事件そのものが興味深いが、当時のソ連の若者たちの登山文化とはどんなものだったのか、またそれをフロリダ生まれの何の縁もない筈の現代アメリカ人が紐解いていく過程も、冒険譚としておもしろい。
何故こんなにもこの事件に惹かれてしまうのかと自問自答しながら調べ物を進めていく著者の胸中。
ロシア人たちとの「異文化コミュニケーション」の様子。
当事者の若きトレッカー達の行動をかなり精細に記述しながら、彼らの旺盛な冒険心や興奮、厳しい自然に挑む逞しさに対する憧憬と、若者らしい姿の描写にはっきりと親愛が感じられる。
事件の核心に迫ると書いたが、本書の主旨は、事件の真相解明だったのではなく、著者を含め事件に関わった人々の物語という印象だ。
タイトルと書影から、もっと陰惨でスリリングなノンフィクションものかと思っていたが、知的好奇心を満たしつつ、思いがけず暖かみのある読書体験となった。 -
今年今まで読んだ中では一番感銘を受けた。ディアトロフ峠事件といっても普通の人は知らない。これは1959年2月2日、ソ連時代にロシアで起きた9人ものトレッカーの遭難死の話。なぜだかこれに興味をつ直抱いたアメリカ人映画作家の著者が2010年も超えてその真相に迫るという。雪崩や強風、ソ連の秘密工作、UFOまで様々な説が提示されつつ、陰謀説を廃する著者の姿勢には強く共感する。現地にわざわざ赴いて考察してたどり着いた著者の説には十分に納得できた。