死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 [Kindle]

  • 河出書房新社
3.75
  • (5)
  • (8)
  • (5)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 119
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (363ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 週刊誌の書評で知った本だ。
    「死に山」 世界一不気味な遭難事故 《ディアトロフ峠事件の真相》
    内容が余りにも不気味で、途中、この本を選んでまずかったかも・・・、
    と弱気になったりしたが、著者の想像を絶する「真相」解明への努力や、
    解明への「不思議な力」を与えられた結果、ことの成り行きが明らかにされたのだった。「超低周波音」・・・、1959年当時、この自然現象はまだまた「未知」の現象だった。。

  • 1959年1月、ロシアの大学生によるトレッキングチームが、真冬のウラル山脈へ出発した。当時の学生たちには、自らの限界への挑戦としてトレッキングが流行しており、このチームもより難しいコースに挑んでいた。
    しかし、チームは遭難。捜索隊が発見したのは、テントからかなり離れた場所で、氷点下の中を薄着で靴を履いていない遺体だった。また異常な濃度の放射線が検出されていた。このチームのメンバーに一体なにが起きたのか?

    チームが残した日誌や写真から、当時のチームの目から見たトレッキングの様子。

    捜索隊の目から見た捜索の様子や現場の状況。

    2012年に、アメリカのドキュメンタリー映画作家である著者が同じ真冬に現地を調査した様子や、科学的に検証していく過程。

    この3つの流れが、入れ替わりながら進んでいく。

    旧ソ連時代の秘匿性もあり、政府の秘密裡の核実験説や、UFO説や隕石説を打ち消すことができていなかったが、科学の進歩が十分に納得できる説明をしてくれた。

    現地に古くから住むマンシ族からは「死の山」と名付けられていた現場。遭難当時には解明されていなかった現象も、言い伝えとして残っていたということか。

  • あぁ、面白かった!

    本書は世界一不気味な遭難事故とされる「ディアトロフ峠事件」を主題にしたノンフィクション。

    1959年、冷戦下のソ連・ウラル山脈で、登山チーム九名がテントから1キロ半ほども離れた場所で、 奇妙な死体で発見されました。
    彼らは氷点下の中で衣服をろくに着けておらず、全員が裸足。うち、3人は頭蓋骨折などの重傷、女性メンバーの一人は舌を喪失していました。さらに、遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出されました。
    事件の異常性から、昔から多くの推理がなされました。冷戦下で秘密兵器を目撃したために抹殺されたという説、ソ連軍の軍事実験の失敗に巻き込まれたという説、エイリアン説などなど。

    本書はこの事件に深い興味を持った米国人ドキュメンタリー映画作家が事件の謎を追い、ある結論に到達するまでを描きます。単行本で320ページの大作ですが、一気に読めました。
    本書は事件前の学生たちの行動、事件発生後の捜査活動、そして現地で謎を追う著者の考察と結論。まさに事実は小説よりも奇なりという言葉そのものの興奮のノンフィクションです。

    本書は謎解きノンフィクションですが、人権のないようなソ連で普通の学生が何を目的に、何を生きがいに生きてきたのかもいきいきと描かれています。このあたりも本書の読みどころと思いました。

    おススメの★★★★★。

  • 結論にちょっとがっかりだが、まあそういうことですよね。そこまで引っ張っていく取材力と構成力は秀逸。

  • 周木律の『アールダーの方舟』の謎の連続死に原型があった?!。そしてこの事件は『ディアトロフ・インシデント』という映画にもなっている。2024年
    はこの『死に山』を読んでから『ディアトロフ・インシデント』を観たい。(2023/12/29)

    [Kindle版|2018/8/28発売|363p]を2023/12/29に購入。(2023/12/29)

    『死に山』を読み始めた。(2024/1/1)

  • 登山家グループの奇妙な遭難と、その原因の究明

  • 映像作家の著者がディアトロフ峠事件にハマってロシアへ二度の現地取材まで行ったり、原因と思われる現象の専門家に意見をもらったりして真相を追いかけた本。こういうルポものがもともと好きなこともあり、面白く読んだ。

    この事件は謎めいた点が多く、舞台がロシア(事件当時はソ連邦)というお国柄もあって、未だに核実験の影響を受けた事故だとか、そのため政府によって事実が隠蔽されているとかいった陰謀論がつきまとっていて、被害者遺族や事件に深く関わった人の中にもそういう陰謀論が強く根を下ろしている。

    被害者に近い人ほど、この悲しい事件の原因に「納得できるストーリー」を求めてしまう。だからこそいつまでも政府隠蔽説や陰謀論が消えないんだろう。この事件に深く魅入られたにも関わらず、筆者はそういった感情的なわだかまりに捕らわれず、あくまで冷静に可能性の低い説を否定していくのがいい。

    ただ、章ごとにばらばらの時系列が入り乱れて出てくるので大変読みづらい。
    ・収集した情報をもとに推測によって再構築されたディアトロフ一行の足取り
    ・事故直後の捜査の進行状況
    ・著者のロシア取材、ディアトロフ峠を目指す行程
    この3つが1章ごとに入れ替わる。

    ただでさえ覚えづらいロシア系の名前がばんばん出てくるのに、この構成のせいで余計に苦労した。そしてラストまで読んで気づいたけど、巻末に主要な登場人物名一覧が…早く気づけばよかった

    結論だけ知りたい層には著者の2度のロシアへの調査旅行やその過程で関係者と過ごした描写などは雑音にしかならず、むしろすぱっと結論提示しろ!とイラつきの原因になるかもしれないが、私はそういう部分がすごく面白かった。特に外国人である筆者だからこそ見えるロシア人の気質の件とか。
    巻末の解説もよかった!ぼんやりと感じていたことが明確に言語化されていて、そうなんだよ、それ!とかゆいところに手が届いてる解説だった。

    この本は2018年に日本語版が発売されているが、英語版は2013年発売。その後の2019年、2021年に雪崩を原因とする調査結果が新たに発表されているが、この本が主張する説である「カルマン渦」についてももっと他の専門的機関による検証がなされてもいいんじゃないのかな~。
    正直なところ専門家に写真を見せてコメントもらっただけではやはり検証不足な感も否めないし、雪崩説とは別軸としてこっちももっと突っ込んで調べられたらいいと思う。ただ、どちらにしろ、現在陰謀論的な説を支持している人たちを納得させるような、皆があっと驚くような結論にはならなさそう。
    往々にして世間は無責任にそういう派手な話を求めがちだし、お金のかかる調査に資金を出してくれるスポンサーがいたとしてもおそらくそっちを欲しがるんだよなあ…w

    (Twitterより)

  • トレッキングに精通している登山サークルの学生9人が
    不可解な死を遂げた。

    マイナス30度を超える吹雪の雪山、
    組み立てたテントを内側からナイフで引き裂いて、裸足で飛び出した形跡。
    逃げ出した人間は、それぞれに、身を寄せ合って、または杉林で焚き火をして
    なんとか暖をとろうとするが、
    結局自然には勝てず、全員が凍死。

    2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は舌を失っていた。
    また、何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射性物質が検出された。

    彼らに、一体何があったのか。

    題材にしている事件「ディアトロフ事件」自体が、
    50年以上経った今でも不明な点も多く、興味深い事件なので、
    その軌跡を辿る内容は間違いなく面白い。
    旧ソ連体制下の若者の生活など、(本や詩は禁じられていたため、暗唱するしかなかったとか)
    無線は禁止されてなかったから、工学系の学生は短波無線を聞くのが流行っていたとか。
    ロシアってドイツみたいに堅いイメージあったけど、歌ったり、踊ったり、結構リア充で驚いた。

    その他には、アメリカ人の映画監督が、ロシアに旅するという内容になるので、単純に旅のルポとして面白い。
    食べ物や文化の違いに戸惑いながら、世紀の難事件の謎に挑む。

    あとは、北朝鮮を旅したルポのように、現地で同行してくれる人や
    案内人の挙動にも怪しいところがおおく、
    この事件、まだまだ裏がありそう。

  • ディアトロフ峠の遭難事件は、冷戦下のソ連、ウラル工科大学の山岳部の経験豊富な学生たちが、ウラル山脈の北側で雪山登山中、一夜にして全員が遭難死するというもの。
    著者、当事者、遭難発覚後の遺族や捜索者たち、という3つの視点と時空を行き来しながら、事件の核心に迫る。
    この多視点の描写、フィクションではよく見かける手法だったが、私の経験ではノンフィクションでは初めて。著者が「死に山」の謎めいた真相に近付けば近付くほど、当事者たちの山行記録が最期の幕営地であるディアトロフ峠に近付けば近付くほど、引きずりこまれるような感覚で読んだ。

    事件そのものが興味深いが、当時のソ連の若者たちの登山文化とはどんなものだったのか、またそれをフロリダ生まれの何の縁もない筈の現代アメリカ人が紐解いていく過程も、冒険譚としておもしろい。
    何故こんなにもこの事件に惹かれてしまうのかと自問自答しながら調べ物を進めていく著者の胸中。
    ロシア人たちとの「異文化コミュニケーション」の様子。
    当事者の若きトレッカー達の行動をかなり精細に記述しながら、彼らの旺盛な冒険心や興奮、厳しい自然に挑む逞しさに対する憧憬と、若者らしい姿の描写にはっきりと親愛が感じられる。

    事件の核心に迫ると書いたが、本書の主旨は、事件の真相解明だったのではなく、著者を含め事件に関わった人々の物語という印象だ。
    タイトルと書影から、もっと陰惨でスリリングなノンフィクションものかと思っていたが、知的好奇心を満たしつつ、思いがけず暖かみのある読書体験となった。

  • 今年今まで読んだ中では一番感銘を受けた。ディアトロフ峠事件といっても普通の人は知らない。これは1959年2月2日、ソ連時代にロシアで起きた9人ものトレッカーの遭難死の話。なぜだかこれに興味をつ直抱いたアメリカ人映画作家の著者が2010年も超えてその真相に迫るという。雪崩や強風、ソ連の秘密工作、UFOまで様々な説が提示されつつ、陰謀説を廃する著者の姿勢には強く共感する。現地にわざわざ赴いて考察してたどり着いた著者の説には十分に納得できた。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

「2018年 『死に山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドニー・アイカーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×