夢みる葦笛 (光文社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 上田さんはパティスリーの話は何冊か読んだが、SFは初めて。
    だがこちらがお得意の作家さんなので、短編集ということもあり読んでみた。

    頭がイソギンチャクの形をした奇妙な生物は不思議な局で人間たちを魅惑し、異形のモノに取り憑かれた従兄は人の目では見えないものを見る。生体脳を奪い自らの人工身体に移植した人工人間は完全な人間になれるのか、光る繭の中に詰まった数々の石が見せる夢は誰のものなのか。

    短編集なのでテンポ良く読みやすいが、全体的に世紀末的設定で、人間が駆逐されたり住む場所がなくなったりと悲劇的な結末を感じさせるものが多く気が滅入る。
    悲劇的だからこその美を描こうとしているのかも知れないが。
    例えば人間は無理でも人間より能力のある異形のモノに未来を託したり、安易に取り込まれる人々に逆らって最後まで自分らしく抵抗を貫こうとしたり。

    宇宙開発やロボット、AIなどの未来を垣間見せてくれる内容で興味深い。
    ただ全体的に似たような展開と結末なので途中で飽きてきた。
    かと言ってSFが苦手な私はガッツリした長編になると読む気が起きないのだが。

  • 異形コレクションからの流れで。2009年から2015年までに発表された10編。ホラー系から本格SFまで、場所も時代もさまざまながら〝人間とそうでないものとの共生〟というモチーフが通底していて読み応え十分。スケールの大きな「氷波」「滑車の地」「プテロス」の3連打は圧巻だった。

  •  かつて共に過ごしたあの人と、忘れられない誰かと、それまでの自分の価値観をひっくり返されるような新しい存在と、珍妙な仕事仲間と――出会いと別れを描きながら、“わたし”とは、“世界“とは、“愛”とは何か……そんなことを静かに問いかける短編集。

     以前SF短編アンソロジーに掲載されていた『楽園(パラディスス)』が印象深くお名前を記憶していた作家さんで、同作が収録されているSF短編集とのことで手に取った本。どの作品もめちゃくちゃ好き。この作者さんの描く短編好きだなあ。

     どれも好きだけど特にひとつを挙げるなら、オカルト因習村のお話と思わせてSF的な考察に急カーブを切る『眼神』。

  • ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。

  • ややグロテスクと思える描写が度々あったが、全体としては良質な短編集。どの作品も濃い。

  • 基本的には事実が端的に書いてあり、そういうところに私にはヒトであることの悲哀をとても感じてしまうのですが、逆に言うと人間愛に溢れた著者さんであることが分かりますね。

    ## 氷波
    何が人たらしめるのか、個性となるのか。。
    器質的なものと外因性なものと、あなたとは、と問われる作品でした。

  • SF短編集。
    どれも、少しゾッとしたり、考えされられたりする。
    ハードめ。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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