日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • アジア太平洋戦争についてもう少し色々と読んでいきたい。
    爆雷による水中爆傷の話は、今だとジェットスキーの事故等でみられる外傷と病態生理は同じなのかなと思う。

  • 太平洋戦争期の日本軍について詳しく知りたいと考えて読みました。

    経済力・工業力・人的資源など様々な面でアメリカと戦争するには力不足だったのだと、改めて実感しました。

    また、補給や兵站線の軽視やで過大な精神主義の重視など、軍事思想面でも色々と敗北要素があったのだと感じました。

    大日本帝国における国家的エリートであった戦争指導者たちが、なぜあのような負ける戦をしてしまったのか、もっと別の本を読んでみようと思いました。

  • 愚かな指導者によって死に追いやられた人々のことを思うと、何とも遣る瀬ない思いがする。無駄死にと言うのは心苦しいが、生きてその人の人生を全うできなかったことが無念でならない。このような状況を放置し続けて、見込みのない戦争を続けた理由が全く理解できない。
    言葉だけ勇ましいことをいう、愚かな自称愛国者たちには、眼ん玉かっぽじってこの一冊を読めと言いたい。英霊なんて言葉で、このような人々の死を誤魔化すなと言いたい。

  • 戦争を、戦闘そのものではなく、補給(兵站)や軍隊内の生活からとらえた本。太平洋戦争は、大和魂 vs 合理性の戦いでもあったんだな、と改めて思う。勝ち目はないわな。戦闘で死んだ日本兵より、病死、餓死したり、自殺したり、歩けなくなって味方に「処置」されて死んだ兵隊のほうが相当多かったようだ。軍靴に打つ鉄の鋲や、雑嚢に使う革さえ入手に事欠くような状態で、近代戦に勝てるわけはない。途中でこりゃダメだ、と思った高級軍人も少なくはなかったろうが、結局精神論に押し切られて、死なずに済んだ大勢の兵士、民間人が犠牲になった。

    そもそも人の国に攻め入った時点で合理性もクソもないが。

  •  アジア・太平洋戦争における日本軍の死者は、敵との交戦で死んだ人より飢えや病気で死んだ人の方が多いとはよく聞く話だ。本書は兵士たちが戦闘以外の長い時間をどのように過ごし、どのような境遇におかれ、どんな原因で死んだり病気になったりしたかを多くの一次資料から整理している。

     食糧の供給、傷病者の治療、衣服・靴・鞄などの装備の調達など、描かれているのはどれをとっても悲惨な有様だ。日露戦争の時代の兵隊は「誇り高き皇軍」だったのに、終戦間近の日本兵はボロボロの惨めな姿で戦っていたようだ。

     兵士に食糧が供給できなくなり、現地調達という名の略奪が正式な手段になってしまった時点で、もう日本に戦争継続能力は無くなったと判断して降伏すべきだっただろう。なぜそこまでなっても降伏しなかったかは本書のテーマとは外れるが、諸悪の根源がそこにあることは間違いない。

     それほど劣悪な環境に置かれて兵士のモラルも崩壊する中で、切々と記録を残した人々がいたことにも感心する。自分がそこにいたら何を残せただろうか。多分、何もできず恨みながら死んでいっただろう。そういう人もたくさんいたに違いない。

  • 兵士にとって太平洋戦争とは何だったのかを論じた著作。彼等の境遇はただただ悲惨。

  • 記録

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著者プロフィール

吉田 裕(よしだ・ゆたか)
東京理科大学准教授。専門はカリブ文学及び思想、文化研究。著書に『持たざる者たちの文学史 帝国と群衆の近代』(月曜社)。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望 核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社)、ポール・ビュール『革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房)、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』(月曜社)、スチュアート・ホール、ビル・シュワルツ『親密なるよそ者』(人文書院)など。

「2023年 『アンカット・ファンク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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