なにかが首のまわりに (河出文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 当たり前のように、知り合いにテレビを盗まれた、とか、イスラム教徒とキリスト教徒の小競り合いから死者が出て暴動に、というとんでもない言葉がさらさら出てくる。
    異世界として捉えてはいけなくて、これはどこかで今日も、今も起きている現実だと思うと気が重い。
    この作品たちは女性であることのつらさなんかも描かれていたりして胸がつまる。
    読後感はあまりよくはない。でも、読まされてしまう。

  • アフリカに住むorアフリカ出身でアメリカに住む女性たちの短編集。「恵まれている」環境にいる女性たちの女性としての苦しさや言葉にはされなくとも見下されている感覚を掬い上げている。
    Twitterであるツイートを見て読んでみたら非常に良かった。

    いくつか印象に残った作品がある。
    ◾️ジャンピング・モンキー・ヒル
    ブリティッシュ・カウンシルから選ばれたアフリカ作家ワークショップ。主人公のウジュンワは現地ファシリテーターのエドワードからセクハラまがいの視線を浴び、自分に起きたストーリーを作品にしたらこう言われる。『「現実の生活では本当はそうじゃない、だろ?。女たちがそんな下品なやり方で犠牲になる事は絶対にないし、もちろんナイジェリアではありえない。ナイジェリアでは女性たちが高い地位についている。今日日もっとも権力のある大臣は女性だ」』

    ◾️アメリカ大使館
    主人公は夫が新聞社でジャーナリストとして勤務しており、子供がいる「彼女」。夫が現政権を批判した記事を書いたところ、政府から追われ、彼女は息子のウゴンナと共にいる時に武装したチンピラに襲われ、ウゴンナを殺された。アメリカへの難民ヴィザの申請に来た際、彼女はヴィザ申請の列に並び、赤いヤシ油のことを考えている。『ウゴンナが泣き出して、彼女のほうへ走りよったのはそのときだ。フード付きトレーナーの男は大声で笑いながら、女の身体がひどくやわらかかったと言って、銃で差し示した。ウゴンナはいまでは金切り声をあげている。泣いても金切り声を上げる子ではなかった。そういう子ではなかった。そのとき銃が火を噴き、ウゴンナの胸からヤシ油がほとばしり出たのだ。』

  •  ナイジェリア出身で19歳からアメリカに渡った女性作家による、12作の短編集。ヨーロッパ人の目から見たアフリカの異国情緒ではなく、アフリカ人自身の視点で描かれたアフリカの日常や、アメリカに移住したナイジェリア人女性の暮らしなどが描かれている。

     アメリカの黒人女性が置かれる立場や、ナイジェリアの伝統文化における不平等がしばしば描かれるが、強い口調で非難するわけではない。淡々とした文章と冷めた言葉遣いでありながら、その内側にある熱い感情が伝わってくる。

     アジア人男性としてどのように受け止めればいいか難しい作品だが、あれこれ論評や解釈を入れず、そのまま受け入れるのが一番良いのかと思われる。

  • ラジオNHK 都甲教授 カルチャーラジオで紹介され初めてのアフリカ文学で読みました。You Tube TEDでも作者チママンダ・アディーチェ: シングルストーリーの危険性というプレゼンも面白く読みました。都甲教授の解説で深く読めました。この作品集は短編なので読みやすいのと、日ごろ私には関係のない、ある意味恐ろしい世界が、淡々と描かれており、引き込まれました。一遍の中に不自然でない豊かなキラリとする表現があり魅了されました。この本を契機にアフリカ文学に挑戦してみようかと思ってます。

  • ナイジェリア出身の作者。短編集。
    多くは作者の体験をベースに描かれていると思う。
    アメリカ在住ということで、
    ・アメリカで移民としての体験
    ・二つの文化を行き来する者のまなざしで語られるナイジェリア。
    このテーマが一貫して繰り返し、少しずつ視点をずらしながら作品は紡がれている。それを追体験する面白さがあった。
    短編の構成はキレがあり、しゃれている。
    読んでみてよかった。

  • 欧米の作家が書いたものであれば、想像上の欧米の地を、アフリカの作家であれば、アフリカの地を、その前提で物語を読んでいき、読者の想像上の地で演じられる物語に触れてゆく。あたりまえのことではあるけれど、アフリカの地、時には米国を行き来しながら進んでゆく物語は、十分心の旅としては楽しめる。アフリカに届いた心は、読後感もアフリカのように人を寄せ付けずして優しい読後感として味を知ったような気がする。

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著者プロフィール

1977年ナイジェリア生まれ。2007年『半分のぼった黄色い太陽』でオレンジ賞受賞。13年『アメリカーナ』で全米批評家協会賞受賞。エッセイに『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』など。

「2022年 『パープル・ハイビスカス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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