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感想・レビュー・書評
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宗教を抜きにしてアメリカを語れないことがよくわかる本。
アメリカの強さの秘密は、カトリックの権威主義への反発を源流とした、徹底したプロテスタンティズムにあることが解説されている。
ピルグリムファーザーズが、最初アメリカ大陸ではなくオランダに渡っていたのだとは知らなかった。
彼らが上陸前に内輪もめをし、それを解決するために結んだ「メイフラワー契約」は、今でもアメリカの人間関係やものの考え方の基礎をなしている。
歴史の中でキリスト教会派の勢力図が、17世紀から19世紀にかけて変わっていく様子も記述されていて興味ぶかかった。
長老派、会衆派、メソジスト、バプテスト、クエーカー、シェイカー、セブンズデー・アドヴェンティスト、クリスチャン・サイエンス、ユニテリアン、ユニヴァーサリスト、ルター派、聖公会、黒人教会、英国国教会、独立系、そしてカトリック。
こうして並べるといろいろある。
なお著者は「エホバの証人」に対してわりと好意的な解釈をしていて、信教の自由という考え方を広めた点で歴史的に果たした役割が大きいと述べている。
エホバ嫌いな人が多い日本では賛否がわかれるかも。
アメリカの都市化と資本主義経済がはじまっって格差社会が生まれてきたとき、イスラム勢力が台頭してきたときなど、アメリカのキリスト教をめぐる解釈はそのたびに行き詰まりを見せ、少しずつ修正してきているらしい。
「産業社会は労働力を使い捨てにし、強者の都合だけで弱者を顧みない。そこでは、聖書的な隣人愛の使信は、新たなキリスト教的現実主義が構想されない限り、矛盾か偽善のどちらかに陥る他はなかった。」
「ファンダメンタリズム」と呼ばれるようになったこの頃の保守的キリスト教勢力は、長老派でも「教理の五要点」(聖書の無謬、イエスの処女降誕、代理的贖罪、肉体的復活、奇跡の力)を再確認する一九一〇年の総会決議などを生んだ。
米国民の四部の一を占める福音派の定義ものっている。
聖書的権威の尊重、贖罪と回心の重視、伝道への熱心などが共通して含意される。堕胎や同性婚などをめぐる見解は保守的で、特にこれらhttps://booklog.jp/users/chankochan#を政治活動の議題とする人々を「宗教右派」と呼ぶこともある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アメリカの国民性が少しわかった気がします。
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まず、メイフラワー号云々の前にアメリカに先に上陸していたのはカソリック国だったという指摘が目からうろこ。
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何とか派とか、キリスト教のある程度の前提知識がないと、よく理解できないところもある。それでも、キリスト教(プロテスタント)がアメリカの歴史を今も動かし続けていることがよくわかる。トランプの登場に、分断も、その背後にはキリスト教がある。この本を読んで、アメリカのニュースや、映画・ドラマ・小説などの見方も変わる気がしてきた。
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大変難しい内容だった。
キリスト教を切り口にアメリカ大陸の「発見」から現在に至るまでのアメリカの歴史をたどる。
もはやアメリカという国にとってキリスト教というものは、国あるいは社会を支える思想の一つになっているのではないだろうか。
アメリカでは社会にとっての価値のありかを示す思想としてキリスト教があり、また一方で建国の理念としての自由と平等という思想とがある。時としてこの二つの思想はぶつかり合いながら、そしてたいていの場合自由と平等という思想が勝利を収める形で変動し続けてきた。公民権運動、同性婚、女性の権利など。
アメリカでキリスト教は大変強い。しかしそれ以上に自由と平等という価値観はもっと強い。だからこそ個人の自由は強く尊重され、政府や権威からの押し付けに対しては強い拒否反応が頻繁に起きる。政府や知的権威に対するそうした反発は「反知性主義」というような運動として形作られ、政府に対する不信感はとても強いものになっている。
そういった背景があるから、陰謀論というのはある種、アメリカの伝統のような感さえもある。
トランプ支持者が「Qアノン」というような荒唐無稽としかいいようのない陰謀論を信じるというのも、別に今に始まったことではないようだ。
16世紀ボストンを中心に始まる、キリスト者たちの入植と布教を通じたアメリカ初期の歴史のところがとても面白かった。