時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「時の流れ」は物理現象なのか、「時間が経つ」「時間が流れる」とはどういうことかを、現代物理学の "場" 考え方を用いて解説した書。

    いやあ、難しかった。「相対性理論を認めるならば、「現在」だけがリアルなのではなく、「過去」も「未来」も同じようにリアルだと考えざるを得ない。「現在」という物理的に特別な瞬間など、もともと存在しないのである」、とか「時間は、流れるものではなく、空間と同じような広がりである」、「時間そのものに過去から未来へと向かう性質があるのではなく、「ビッグバンから遠ざかる向き」として時間の方向性が定まったのである」、「物理的な不可逆変化の向きが逆転しない理由は、時間が一方向的に流れるからではなく、「時間の端っこ」となるビッグバンが、きわめて特殊な状態だったせいである」、「人間が過去の記憶しか持たず、未来についての情報がほとんど得られないのは、…宇宙全体のエントロピーが、ビッグバンから遠ざかる側に向かって急激に増大することの結果である」、「「時間の流れ」が物理現象でなく、人間の意識に由来する」、などとさらっと説明されても、常識が邪魔してすんなり理解できない。「ミコンフスキーの幾何学」がどういったものかイメージするのも難しかった(諦めた)。

    それでも、ビッグバン理論など、宇宙物理学や素粒子物理学が発展していることを実感した。数十年前に高校で習ったのとはだいぶ違うな。

    「重力源の周りで時間・空間の尺度が場所ごとに異なることが、他の物体を引き寄せる重力の元」である(重力は空間を飛び越えて作用する魔術のような力ではない)とか、ビッグバンの様相は爆発と全く異なり「宇宙は、カオス的な爆発とは正反対の整然とした状態から始まったのである」、物質を構成する「素粒子は粒子ではなく、場の振動が特定の共鳴状態となったものである」(「宇宙に存在する物質は、ビッグバンのエネルギーが希薄化されず、共鳴状態の振動エネルギーとして保持されたもの」)、炭素原子が六角形に並んだベンゼン分子は「正六角形になるように、原子核と電子の波が、共鳴パターンとなる定在波を形作った結果である」、「相対性原理とマクスウェル方程式を組み合わせると、光速不変性は方程式から即座に導けるので、原理と見なす必要はない」とか、知らなかったなあ。物質がエネルギーの定在波、共鳴状態とはねえ。

    また、太陽からのエネルギーを受けて複雑な組織を作り上げる生命活動は、「低温の宇宙空間にエネルギーが拡散していくエントロピー急増の過程」の中で部分的にエントロピーを減少させているのだが、そのことを「巨大な滝における水しぶきのような、付随的な現象にすぎない」(すなわち、大量の水が高い所から低い所へ勢いよく流れ落ちる中で、途中の岩棚で跳ね返されて上昇する僅かな水滴のようなもの)と例えているのが、イメージしやすくて上手いな、と思った。

    難しいとはいえ、宇宙や物質の成り立ちへの興味は尽きないな。

  • Amazon Audible にて。
    たぶん専門書としてはめちゃくちゃわかりやすく、初心者向けに向けて書いてくれてるんだけど、まあ難しかった。特に、耳慣れない物理学用語に集中力を要するので聞いてて疲れた。

    時間が場所によって一定ではなくて、空間と時間は密接に関係していて、人間の時間認識は脳で後付けの辻褄合わせをしているだけだから全然当てにならない、ということは理解できた。

    どうして物理学では、ビッグバンで宇宙が始まったとか、気が遠くなるような宇宙の果てのことかが分かるんだろう、と思ってたけど、その入り口だけフワッと分かった気がした。

  • 半分は理解不能だが、面白かった。

  • “時間の流れは現実に生起する物理的な出来事なのか?”ニュートン流の時間観を否定し、新たな時間概念を示す。量子論や相対性理論の入門書をてがけてきた著者が時間を物理的に捉えて解説。

  • アインシュタインは時間は宇宙に均一に流れているのではなく、その”場”に応じて定まる相対的な値として捉えなおしたという。
    その理論について本書は語っているわけであるが、正直素人にはついていくだけで精一杯の内容であった。

    ただ、時間の流れをエントロピーの増大によるものと説明する件についてはなるほどと感じるところがあった。

    頭の体操にはなったが、やっぱりこの手の内容は若い方がよいだろうな。

  • 時間って面白いね。物理学的な時間の定義から、人間はなぜ「時間は流れる」と意識するのかという話まで。
    著者のweb。http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/

  • 難しい。なんとなく分かった気分にはなるんだけど。時間をあけて再読予定。

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著者プロフィール

1956年三重県生まれ。大阪大学理学部物理学科卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専攻は、素粒子論(量子色力学)。東海大学と明海大学での勤務を経て、現在、サイエンスライター。 著書に、『時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」』(講談社ブルーバックス、2020)、『量子論はなぜわかりにくいのか 「粒子と波動の二重性」の謎を解く』(技術評論社、2017)他。

「2020年 『談 no.117』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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