御社のチャラ男 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • タイトルからして笑えるけど、読みはじめからすごくおもしろかった。
    とある中小企業の「チャラ男」と呼ばれる中年サラリーマンをめぐって、その会社の社員たちがそれぞれ自分の会社員生活を語るみたいな話で、文章にユーモアがあるどころか本当に笑えて、よく言う「意識高い系」のことを「石北会計事務所」とか、いろいろツボにはまった。日本の、たぶん日本でいちばん多い普通の「会社」というのはこういうところだ、っていうのが手にとるようにわかるようでもあって。
    笑えるだけじゃなくて、年代も性別も違うそれぞれの社員たちの心のうちを読むと、みんなとくに優秀でも善人でもなんでもなくてむしろ問題があったりするんだけど、年代の違う若者や年配者に対しては、そんなふうに考えてるんだなーと思えたり、同年代に対しては、思い出話含めてわかるわかるわかるとめちゃめちゃ共感したりで、だれのことも嫌えない。「チャラ男」でさえも同情する。たぶん、現実で、親しくもない会社の人のことあんて表面だけ見て嫌いとか思うんだろうけど、こんなふうに心のなかがわかったらやっぱり嫌いにはならないのかもとか思ったり。
    あと、読みながら社会情勢についてもいろいろ考えさせられた。わたしと同年代の女性が会社員の娘を見て、自分たちが性差別や女性の働きにくさについて黙っていたから、今になってもなにも変わっていないんだ、って思うところとか、本当にそうだなあと。
    ほかにも、これから日本がどうなっていくか、例えば、相続放棄された土地が出回って地方の駅前に学校と町工場が戻ってくるかも、とか、タバコがNGになったら次はお酒、コーヒーがなくなるかもしれなくて、そうしたら出てくるのはフルーツかも、とか、これはまあ登場人物の勝手な想像なんだけど、へえーなるほどーと思ったり。
    本当に読んでいて楽しくて、いつまでも読んでいたかった。だから、ラストは会社が解散状態になってちょっと寂しかった。


    (あと、ラストで、結局、幸せになるには、自分のためじゃなくて、人のためになることをする、みたいなことがいわれていて、それは本当にそうだなあと思うんだけど、子育てができればそれがいちばんいいんだろうな、とか思ってちょっと苦しい気持ちになった。子どもを育てるかわりに、なにか人のためになることをするってすごく意識的に積極的にボランティアとかなにかわからないけどなにかやらないとならないような気がして。)

  • ふむ

  •  読んでいて胃が痛くなるというか、ああ……ほんとにこういう人いるよね、と思えてしまうがゆえに身につまされるというか。このネタで最後まで読ませるのはすごい。途中で心が折れるかと思った。
     チャラ男になりたい。

  • 食用油やお酢を扱うブラック企業ジョルジュ食品社員の面々が、社長にヘッドハントされてやってきた三芳部長(チャラ男)について語る。

    会社やチャラ男や社長への愚痴を延々聞かされる。そして愚痴を言いつつ浮かび上がるのは、言ってる本人たちの闇。会社の暗い一面を凝縮したような内容の本で、鬱々とした気持ちにさせられる。

    チャラ男も含め、個々の社員たちは心の病を抱えていたりもするけど基本的に悪人はひとりもいない。みんなそれぞれ会社を盛り立てようと頑張っていて、どの会社にも1人はいそうな人物ばかり。
    社内の人間関係を円滑に保つためにみんな自分を殺して会社に尽くす。それを理解しない上司がいるのも会社あるあるかもしれない。

  • 入院中・手術前に読了。

    思ったほどチャラくなかったな。
    チャラ男さんに振り回される(あるいは振り回す)人々の物語。

  • チャラ男にまつわるそれぞれの方々
    の話。
    いろいろ考えさせられ興味深い‼︎

    チャラ男
    =三芳部長
    もしっかり登場。
    意外な一面も感じつつ…

    相関関係まとめてくれないかなぁ。
    などと、思いつつ。
    話しがまとまるので‼︎うなります。

  •  ちょっと「タイトル」が気になったので、普段手に取らないテイストの本を読んでみました。
     中心人物は「三芳部長」。彼に関わる人々が、彼について、他の会社の人々について、あるいは自分自身について語るのですが、それは人物評でもあり、会社を舞台にした人生話であったりします。
     一連のストーリーが一定方向に流れていくのではなく、それぞれの登場人物による語りが15編並んでいて、ところどころで描かれたシーンが伏線的に交錯するという変わったつくりの物語です。

  • どこにでもありそうな、普通の会社に勤める普通の人達の群像劇。チャラ男さんも、正義感強くて病む人も、社内不倫も、依存症のような個人的な問題抱える人も、そういう諸々の人が集まってるところが会社っていうところで、煩わしくもありながら呉越同舟、乗り合わせた以上は簡単には降りるわけにもいかず、自分のアイデンティティーとの線引きも難しく、あーでも無いこーでも無い、ってもがきながら何とか生きていこうと奮闘する人達の群像劇。単純に「あるある」って言葉では片付かない、世の中のバカバカしさってどうよ?みたいな目線が好印象でした。

  • (本を封印して挑んでいたことが一旦流れたため、
    超久しぶりに本を読んだ それで、超久しぶりのレビュー)

    タイトルから、若い人についてなのかと思ったら、バブル組のおっさんチャラ男だったのが面白い。
    絲山さんの人物はいままでの本でもこの本でも、ほんとに居そうでにやにやしながら読んだ。
    好きなムードのまま、好きな印象で読了。

    自分も大きく食品会社にいたので、あちこち「あるある」だった。

    最後の方でほんの一言二言パンデミックに触れてて、いままさに渦中というのが恐ろしい。そんなのは創作の世界でのたとえごとに違いない、と誰もがこれが出版前の原稿だった時には、気にとめてもいなかったのだろうと思う。

  • 想像していたより三芳部長はチャラ男という印象ではなかった。
    仕事ができず、綺麗ごとばかり言って、業務に支障をきたすどこにでもいそうな上役。

    うちの職場にもこんな人いたなぁ。辞めたけど。

    自分の職場以外はよく分からないけど、日本の会社って、どこもこんな感じなのかなと妙に納得してしまった。

    章ごとに1人称で進んでいきます。主格が変わっていくので、最初は理解できたけど、後半になるにつれて、このときの自分て誰だっけ?となります。

    フッダーに章のタイトルをつけてくれるともっと分かりやすかった気がします。

    あと、ハードカバーに薄い紙はちょっとページがめくりにくい気がしました。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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