相対化する知性---人工知能が世界の見方をどう変えるのか [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 本書は、「人工知能の発展とそれが人間の認識や社会に与える影響をテーマ」として、松尾豊氏、西山圭太氏、小林慶一郎氏が分担執筆した書。3部構成で、
    第1部 人工知能──ディープラーニングの新展開 (松尾 豊)
    第2部 人工知能と世界の見方──強い同型論 (西山圭太)
    第3部 人工知能と社会──可謬性の哲学 (小林慶一郎)
    となっている。

    全体的に、哲学的で小難しかった。特に第2部は殆んど理解不能だった(「DXの思考法」と同じパターンだな)。

    それでも、第1部はディープラーニングの仕組みを直感的に理解するのに参考になった。「深い関数を使った最小二乗法」による近似、「何段もの中間的な関数をはさむことによって、より深い関数になる」、「工程を数によってできる料理の幅が非常に増えることと、深い関数を使えば関数の表現力が上がるというのは、直感的には同じ」等々。

    第2部では、「出現したマクロ的な秩序はその基底をなすミクロの活動に関する情報だけでは完全に予想・記述できない」エマージェンス(立ち現れ)という現象の部分は理解できたが(そして面白いと思ったが)、マルコフ・ブランケットのメカニズムや「強い同型論」(「物理的秩序と記号秩序に共有される同型性があるという主張」??)を持ち出して一体何を言いたいのか、よくわからなかった。人工知能進化との関係もあるんだかないんだが。

    第3部も難解ではあったが、人工知能が社会理念や社会構造を(いい方向に)変える可能性を論じてる部分は結構面白かった。「理性は万能であるという理性信仰は凋落したが、人工知能によって「拡張された理性」は限界なく進歩するという新しい進歩史観の信念体系を再生できるかもしれない」、「人工知能と人間との協働による拡張された理性は、永続的に真の世界理解に向かって進歩していく、という信念を我々は持てるに違いない」、「経済成長は、科学的な実現可能性の有無を度外視して社会が目標とするという意味で、現代の「信仰」と言っていいかもしれない」が「人工知能や情報技術による「知の進歩」が、経済成長に代わる新しい社会理念となるのかもしれない」、といった辺りが興味深い。また、可謬性と自由について論じた部分にもなるほどと思った。「一つだけ無謬の真理があるとすれば、それは「すべての知は、間違いでありうる(可謬的である)」という可謬性の信念だけである。」、「我々の社会で自由が必要不可欠であるのは、社会が直面する問題や我々の社会の行く末について、誰も正解を知らないからである」、「試行錯誤に踏み出す自由の保障こそが社会の進歩の前提条件なのである」等々。

  • 松尾さんが哲学側に興味を示してくれたのがとても嬉しい。生命を作るのが実はニューラルネットワークの作り方と一緒で、それが一番ホットなんだって話をどこかで読んだんだけれど、強い同型性の議論ってのはそのような話なのかな。記号としての文章を読み飛ばしているうちに何か閃くってのが読書におけるいちばん楽しい体験なんだけど、久しぶりにその楽しみを感じさせてくれる。わからないけれども面白いという感覚を思い出した。中沢新一とかね。繰り返されるということがとても重要。繰り返しの中からしか意味は生まれなくてそれは知性の根本。だからノスタルジーってのはすごく本質的。記憶を掘り起こす方法論を共有する。死者に対して。それが記号化の本質なのかもしれない。最後の可謬性のところは、大きく同意する。悪人正機みたいなレトリックかもしんないけど。全体主義と無謬性の話、自由からの逃走という本に書かれていそうな気がします。読んでないけど読みたいと思っている本。経産省すごい。クールジャパンなのかと思ってたけど。

  • ディープラーニング 学習する機械 ヤン・ルカン、人工知能を語る (KS科学一般書)

    因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか 因果推論の科学 ジューディア・パール, ダナ・マッケンジー他(文春)

    からのこの本。

    このAI vs 哲学 vs 脳科学 みたいなの余り得意ではありませんが、やはり抑えておかないと行けませんよね。

  • 人工知能と哲学を絡めて述べている書籍は何冊かあるが、そのような中では本書が一番興味深く、面白く読むことができました。3人の専門家が、ディープラーニングについて、世界観について、今後の社会について、それぞれの主張を述べています。なお3名とも、多かれ少なかれ、ユヴァル・ノア・ハラリ の著作「サピエンス全史」、「ホモデウス」を引き合いに出して論じているので、前もって読んでおくとよいかもしれません(ちなみに、私は、読んでいました)。SFのストーリーによくある汎用的なAI、人を脅かすAI とはまったく違うAI(というかディープラーニングがもたらした世界のありように対する解釈?)感を感じ取ることができました。いやー、世の中、どんどん複雑に多様になってきている、これからもその傾向が拡大しそうだと感じるのは私だけでしょうか。

  • 第一章の松尾豊さんの箇所を読んだが、以下の感想。
    ①ディープラーニングの基本的な説明は(同分野を学習した人からすると)復習として適度な読書体験
    ②随時ちりばめられている筆者の論考のうち、特に「社会的蒸留」に関しては、目が開く体験

  • AI時代の新たな政治哲学をどのように構想できるのか?

  • 1部はいままでの人工知能の俯瞰。
    第二部は「強い同型論」による知能の説明の提案、そして認知構造がかわっていくであろうということ。
    第三部は「可謬性の哲学」によって、正義もイデオロギーも変わっていくだろうという。。
    話の展開がちょっと強引感があり、もう少し咀嚼しないとうまく納得できないかんじ。

  • AI業界に身をおいている人にとっては,第一章はおさらいといった感じ.
    「多パラメータの科学」のサブセクションが一番おもしろかった.
    第二章は非常に知的好奇心がくすぐられる内容で,この章だけで本書の価値を大幅にペイ出来ている.
    第三章は難しかった..

  • ・人間の知能は、「身体性のシステム(知覚運動系RNN)」のうえに、「記号のシステム(記号系RNN)」を乗せているのではないか。
    ・人間の理性が認識する世界は、人工知能が認識する世界の部分集合となる。
    ・人間の本能によって決まる利他性は、財政危機や環境危機のような持続性の問題を解決するには弱すぎるということである。
    ・アーレントによれば、全体主義体制の指導者の「無謬性」に対する絶対的な信奉が、全体主義を駆動する原動力であった。

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著者プロフィール

経済産業研究所コンサルティングフェロー、経済産業省商務情報政策局長

「2020年 『相対化する知性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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