世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知 (ちくま新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • いよいよ現代編。最終巻。別巻を除けば(これは今のところ読むつもりはない)。

    面白いことに中田考(「現代イスラーム哲学」)と千葉雅也(「ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理」)の名が目次に並んでいる。

    本巻でも示唆されているとおり、やはり日本に哲学はない、といっていいのかもしれない。

    アフリカと哲学(西洋的な意味での)が結びつくことで、欧米が、そして私たちがいかにアフリカ的なるものを下に見ているかが、構造的に、如実に浮き彫りになる。もはや見ないふりはできない。
    欧米におけるユダヤ人問題はまだ問題の圏内にあるだけましである。アフリカ、というとき、根本的に何かが奪われている。

    現代の哲学、世界哲学というものは、政治哲学たらざるをえない。というか哲学そのものが政治と不即不離の関係にあるということを痛感させられた。
    これは世界哲学という視野でなければなかなか見えてこないことだ。

  • 『世界哲学史』(ちくま新書)全8巻を読み終わった。いろいろレビューはあるけど、ぼくは面白かったな。きれいにまとまらないのがいいんじゃないかなと思うよ。最終巻で印象的だったのはアフリカ哲学だな。
    「アフリカ文化の基底には、一者としての神、生命力、神の想像的力による生きとし生けるものの生命力の付与といった根源的な存在=生命観がある。その創造的生命によってすべての力は内的に結びつく。力は本質的に関係的に働く。個々人が孤立した魂を持つといった個人主義は、この力と生命の原理を理解できない。知恵と知識とはこの存在=生命についての知識にほかならない」p256
    分析哲学の言い出した「事実と価値」の分離って、つっこんでいくと融合しちゃうのねという話や、ポストモダンのところで最後にでてくる「(たがいに?)異質な普通」とか、最後の「人類の遺産」としてのゲノム情報とか、こういうのも面白い考えでした。現代中国の話もたくさんでてきます。

  • 分析哲学、ポストモダン、フェミニズム、現代イスラーム哲学、現代中国哲学、現代アフリカ哲学、ラテン・アメリカ哲学といったトピックスについて読了。/普段哲学書読まない身にはやはり歯ごたえあり。/「分ける」ことが「分かる」ことに直結する、「分ける」ことこそが「分かる」ことなのである/哲学は、語りうるものを明晰に表現することによって、語り得ぬものを指し示そうとするだろう/脱構築とは二項対立の「決定不可能性」に着目する技術/ダブルバインド思考とは、二項愛だの否定を「未完了」まま宙づりにすることで、二項を同時保持することである/といったあたりを読んでいくと、「分ける、から、分かる」「分かる部分をはっきりさせれば、分からない部分もはっきりする、から、そもそもそれは本当に分けられるの?」という流れになるのか。ただ、ポストモダンは「物事はどうにでもいえる」という粗雑な相対主義的理解は誤解であり、”規範からの逸脱を行旅しながら、人々を機会的にではなく動的な「信頼」形成の運動において共存可能にする「準安定的」な社会状態をたえず再構成していくことである”という一節に希望を見出す。また、現代中国哲学、ラテンアメリカ哲学、現代日本の哲学シーンにおいても、西洋哲学の輸入、研究が、大きなインパクトを持っていたことが示される。そして、刺激的だったのが現代イスラーム哲学。日本語で書かれたイスラーム哲学は日本文化の一部でしかない。真のイスラーム哲学は理解し得ない。”新語を作らず古語に重層的に意味を重ねていくアラビア語の特質に基づき、アラビア語自体は現代においても大きく変わっておらず”って、これはおそろしい一面を持つな、と。なぜなら、現代と500年前、1000年前とで、同じ言葉で語り合って、理解し合えるかと思いきや、そこにのせられた意味は時代によって(あるいは地域によっても?)変化し続けているというのだから、ある時代ある地域のこの語の意味はこう、という辞書がなければわかり合えないのではないか?イスラム学者たちは、その差異までをも自家薬籠中のものとして、文献にあたっているのだろうか?そして信じる者たちは…とさまざまなに疑問がわきあがり、なかなかに刺激的な一章だった。

  • 終章を読んでの星5つ。うまくまとまることもないんだなと思った。世界は一つという訳にもいかないと改めて感じた。

    全巻に言えることだと思うが、前半の章で西洋哲学について扱われ、残りは非西洋の哲学が取り上げられている。

    それと、もう一つ。哲学と思想のあり方。今回のシリーズは世界思想史としたほうがよかったのではないか?

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著者プロフィール

京都大学名誉教授

「2020年 『世界哲学史 全8巻+別巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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