世間とズレちゃうのはしょうがない [Kindle]

  • PHP研究所
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感想・レビュー・書評

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  • 養老孟司先生と伊集院光さんの対談本。

    世間一般の価値観から、少しはみ出しているお二人が、「世間とはなにか」「ズレているってどういうことか」ということを、今までの経験などから語り合っているものでした。

    お二人とも、テレビなどでは見ることはあったけれど、経歴などはほぼ知らなかったので、どんなふうに人生を渡ってきたのか、そのズレかたや、さまざまな考え方を知るいい機会になりました。

    興味深い話題がたくさん話されていたのだけれど、気軽に読めてしまう分、スルスルっと頭を通り過ぎてしまった言葉もたくさんあって、ちょっともったいない読み方をしてしまったかも。気になったところをメモしておけばよかったかなぁ。

    また機会があれば、もう一度読み返したいと思います。


    メモなどをなしに思い返せるのは、伊集院光さんが学校を中退してしまった理由。小学生低学年では自分の「住んでいる区」を勉強して100%の知識を得たのに、一年上がったら、さらに広い範囲の「東京都」の勉強をすることになって、また100%を目指して勉強して、さらに一年上がるとさらに広い「日本」、そして「世界」…と、次々に対象が大きくなっていって、いつまで経っても100%にならない。学年が上がれば上がるほど自分が「バカになっていく」と感じたから、だとか。
    100%理解できる、という意識で勉強していることがすごいな、と。そして、範囲が広くなっていくことに対して、自分の知識量が相対的に小さくなり続ける、と感じることがすごいな、と。

    養老孟司先生の話の中では、第二次世界大戦の終戦によって、自分の周りの世界が「ガラガラポン」と崩された経験についての感じ方、考え方が興味深かった。

    戦時中を知らず、ガラガラポンも知らず、ただただ成長していく日本の社会だけを見て育った自分には、そういう視点が完全に抜けているよなぁと。

    いろいろな物事に、いろいろな視点を与えてくれる、いい本でした。

  • 養老さんの話はときに難しいというかよくわからないところもあったけど、伊集院さんがわかりやすい言葉に置き換えてくれたのが良かった。
    状況次第で人間は性悪にも性善にもなるし、自分が我慢したからお前も我慢しろはおかしい、のところ、すごくよくわかる。
    シーラカンスの話で「旧価値観のままのやつも進歩しているやつもある程度棲み分けながら同時に存在できるのは大事なこと」というところが1番印象に残った。ほんとにそう思う。

  • <感想>
    世間に違和感を感じながら生きてきた二人の対談。違和感を感じながらもそれぞれが社会的に成功していると言える。この本を手に取る読者は生きづらさを抱えている人だろう。そのような人にとって、漠然とした違和感を抱えながらも成功している著名人の考え方は生きる上での指針になると思う。

    <アンダーライン>
    ★★虫には「違い」しかないんですよ。「あいつはおれじゃない」ということしかない。
    ★★★人間は言葉で線を引いてますよね。解剖をやると、そのことが嫌っていうほど分かりますよ。まず、どこからどこまで手か、という問題が怒るし、足ってどこからどこまでだ?
    ★★芸能人の不倫に怒っている人の中に不倫願望がある人多いと思いますよ。めちゃめちゃ自分も我慢して自制している人か、過去に不倫が見つかってひどい目にあってる人。男の不倫にすごく怒る男の人は、この2パターンが多いと思う。すごく嫌いなことって、自分が本当は興味があることだったりしますよね。
    ★★★100%にならないことを「おもしろい」とするのか「きりがない」とするのか…。
    ★★★★★ものすごく大変なのに、ここまでやったらゴールだよっていうのがない。だから自分が好きなことをやるほうに向かったんですね。
    ★★★かみさんはしゃべることが快感で、僕は通じることが快感だから、そこはもう全然会話の意味が違います。
    ★★★歴史的に、外見は世間に属するか外されるかに大きく関わっているんです。それを象徴するのが「五体満足」という言葉です。日本では五体満足でなければ共同体から外される傾向がありました。
    ★★自分の家族が亡くなったときに、亡くなった人を「死体」と表現する人は一人もいません。本人の名前で呼びます。つまりまだ生きているわけです。
    ★★★「都市化」というのは「意識化」であって、意識の中に住めば住むほど高級だという考え方です。
    ★★お笑い芸人は基本的に「笑われる」ことを嫌います。あくまで自分の秩序内で人の秩序にアプローチして、計算したもので笑わせたい。
    ★★★★★お笑いに世間との共通体験を言い合う「あるあるネタ」というジャンルがありますが、その「あるある」がはみ出る瞬間ってすごく気持ちが悪いんです。「子供のころって残酷あから、よく虫なんか殺したりしたよね」と二人で笑って話しているときに、相手が「そうそう、猫とかさ」と言った時、急に笑いが消える。あれだけ笑っていたのに逆に恐怖です。今までなんでこいつと一緒に笑い合っていたのかが急に分からなくなるから。
    ★★★★ギリギリから外を見ながら、中心部に見えたことを伝えると、内側で大事にされるというのがこの商売だから、世間の外側にいるわけじゃないですね。
    塀の上を歩くのが芸。

    ★★★★★排除しようとする対象は、その群れが長く生きるために、不必要なぐらい強くなったやつや、不必要なぐらい弱いやつ。

    ★★★思い詰めるって頭で考えるからですね。
    ★★★好きなことはだいたいパターンは分かってくるから予定調和になって、あんまり驚きはなくなってきています。それに対して、いちばん嫌いだったジョギングをやってみたら、「なるほど、こうことなんだ」と。
    ★★★★僕が企画をつくるときのコツが一つありまして「世の中で不便なものが便利になったときに、振り落とされたものは何か」と考えるんです。スマホができたら何がなくなったのか、とか。それは今必要じゃないことだから、趣味や娯楽に変えられるはずなんです。
    ★★★不便は半分楽しみなはずだと。便利にするのを世間が創造的だと思っているのなら、趣味の世界では不便を楽しんでいく方が創造的だなと思うんです。

    ★★★★★僕が本当に嫌いなのは、「自分は我慢したから、おまえも我慢しろ」という考え方です。
    ★★★★★深夜放送って何にでもケチつける性悪説でしゃべるほうがいいんです。世の中に不満のある人が「おれもそう思う」と共感してくれるようなしゃべりです。

    ★★実感が欠けると統一しようというする。

  • 世間からズレることは
    ・社会の視点では多様性であり
    ・個人の視点では仕事の動機になり努力の源になる

    いつも持論を押し付けようとせず、こちらの腑に落ちる話をしてくれる2人の対談

  • 世間からズレた2人の対談。
    かたや伊集院光は世間とのズレを意識しながらもそこから外れすぎないように生きてきた。
    かたや養老孟司は、終戦後の価値観のどんでん返しを経験した結果、言葉を信用しないことにして生きてきた。

    面白いのは、科学者である養老氏よりも伊集院氏のほうが理屈(ことば)にたよっていること。
    養老氏は考え詰めるのが良くないと何度か言っていた。また、都市化=頭でっかちになること、とも。

  • 科学的に証明されたから正しい」と思っているのは、科学者の意識でしかないわけでしょ。意識っていったん寝たら、なくなってしまうようなものですよ。

    世間とのズレを認識している時点で、実はある程度世間を把握している

    ズレている自覚がないままズレていたり、ズレていないふりをし続けるほうが、苦痛だし危険かもしれない

    歴史的に、外見は世間に属するか外されるかに大きく関わっている

    その人が死んでいるかどうか、その線引きは、客観的にはありません。生きていた間のその人との人間関係で決まります。

    日本の世間は、死んだ人に対しては、生きているときの資格を 剥奪 しますね。仲間から外すんですよ。

    死んだ人を扱う職業は、歴史的には都市ができると成立するんですよ。 都市というのは、根本的には「意識の世界」だからです。

    自然のものを都会の人はうまく扱えません。だからそれを扱う仕事は独立してしまうんです。それが日本の、中世、近世における 賤民 身分の「 穢 多」と呼ばれた人たちだったんです。

    都市は人間の意識で考えられたことに基づいてつくられた場所で、意識の中で自然は「扱えないもの」として排除するんです。

    過去のシステムがよくできていればできているほど、そこから何かをなくすとバランスをとることが難しくなってしまいますね。

    人の意識は「主人公になる」んですよ。 意識がすべてを支配していると思っている。

    脳は意識があるときは秩序のある活動をして、意識がないときは秩序的ではない活動をしているんです。意識が脳の活動をすべて支配しているわけではないんです

    AIに仕事を取られるというその根本は、世の中の情報化ですよね。

    つまり「われわれ人間は何か」というと、もはやノイズなんですよ。

    ああいう手作業の技術を伝えていく世界は、やっぱり徒弟奉公なんですよ。

  • ふむ

  • 私も世間とズレてるんだなと思った。仲間がいてよかった

  • 理論派というか、頭のいい2人の対談。
    とっても面白かった。
    さまざまなものの見方、考え方があることを再認識して、仕事を楽しみたいな。

  • 多感な時期に出会いたかった。世間との付き合い方のヒントをくれる本。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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