ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 本書を踏まえた上で廣瀬さんの『ウクライナ危機の真相』を読めばさらに詳しくプーチンの戦争を読み解くことができるんだろうけど、本書でお腹いっぱいな感じ。

    ロシア、東欧、アフリカの歴史から知らないことが多すぎて現代のサイバー空間の攻防まで意識がついていけなかった。大枠のストーリー(背景)は掴んだので今はここまでにしておこう。

  • Premium Selection vol.7

    ハイブリッド戦争とは、政治目的を達成するため、軍事的脅迫とそれ以外の手段を組み合わせた戦争の手法だ。軍事的な戦闘に加え、政治、経済、情報、心理戦などが組み合わされる。

  • ハイブリッド戦争という言葉はしれども、これほど大規模に行われているというのは知らず。ロシアのように国民からの批判や倫理観を鑑みる必要がない場合(国際関係、国際法については曲がりなりに配慮しているとしても)、証拠があるない、認める認めないで大胆な行動を取れるというのは、対応する民主主義にはできないつらいところと感じた。
    国力が衰えたなりに、大国として、世界でのプレゼンスを高めようとする努力については、日本は決してロシアのようなやり方はやらないでほしいが、その危機感だけは学ぶところがあるのではないだろうかと思ってしまう面もありました。

  • ロシアの戦略を詳細に解説している。これを読むと、あらゆる手段が戦争の手段となり、明確な勝敗がつかないままに永続的に戦争状態が継続することになる。恐ろしい世の中になったものだ。

  • ハイブリッド戦争という概念について簡潔・十分に解説した著作。戦いが自分の条件を改善させることを目的とし、一般市民に混じり合い、紛争の終結が見えなくなり、総力戦ではなくなり、新しい用法が採用され、国家ではない主体が参加しているなど、その特徴を手際よく整理している。また、ロシアの戦略が基本的に変わっておらず、その戦略を知ることで、なぜウクライナが何度も侵攻されているのか、といった点の理解を助けてくれる。ぜひ一読をお勧めしたい。

  • 今日の戦争は、正規軍が戦うだけではない。プロパガンダ工作、サイバー攻撃、民間軍事会社等。多彩な手法を用いる「ハイブリッド戦争」の実態と、それを進めるロシアの戦略に迫る書籍。

    ハイブリッド戦争とは、政治目的を達成するため、軍事的脅迫とそれ以外の手段を組み合わせた戦争の手法。軍事的な戦闘に加え、政治、経済、情報、心理戦などが組み合わされる。

    ハイブリッド戦争は、2013年の「ウクライナ危機」でロシアが行使したものとして注目されるようになった。その際、ロシアは正規軍の他、特殊部隊やフェイクニュースなどの宣
    伝戦、サイバー攻撃などを組み合わせ、領土併合を実現した。

    ハイブリッド戦争には「低コスト」「効果が大きい」「言い逃れができる」というメリットがある。
    米中と比べ軍事予算が少ないロシアにとって、これらのメリットは重要である。

    ハイブリッド戦争の担い手は多様だ。
    主な担い手としては、多様な任務をこなす「特殊任務部隊」や、作戦対象の地域で政治工作を行い、親露的な指導者の擁立やメディアを通じた情報操作を行う「政治技術者」などが挙げられる。

    近年、戦争の「場」は陸・海・空から、サイバー空間へ広がった。軍事衝突の際は、裏でサイバー攻撃が展開されることがほとんどで、サイバー攻撃はもはや戦争と切り離せない。

    ロシアは、中国につぐサイバー攻撃の発信地とされている。
    ロシアの場合、国家レベルの関与が多く、相手に与える打撃も大きい。また、攻撃の内容は、目的や相手によって変わる。(エストニアへのサイバー攻撃)

    ハイブリッド戦争は、日本にとっても脅威だ。しかし、日本の現状は、危機意識が薄く、その備えは脆弱である。

  • ウクライナや、ジョージアでロシアが展開した新しい国際紛争の形態は”ハイブリッド戦争”と呼ばれ、従来の軍事一辺倒ではなく、政治工作による世論の操作や、インターネットを利用した情報操作、サイバー攻撃などを複合的に活用しています。ロシアが用いる”ハイブリッド戦争”とはどういうものか、ロシアの国家戦略と絡めて解説しています。
    従来の戦争は国と国との間で宣戦布告から始まって開始されるのに対し、軍が動く前にサイバー攻撃で相手国のインフラ等に混乱を生じさせたり、フェイクニュースの流布で世論を有利に導いたり、どこからが戦争なのか明確でない形で戦争が開始されるようになっています。また、ロシアで顕著なのは民間軍事会社が活発に活動している点です。民間軍事会社は、最新式の装備をそろえ、訓練も行き届き、正規軍と変わらない能力を保持するまでになっており、ロシア軍として活動してはロシアの関与が明確になり、国際法上の問題となるような状況において、ロシア軍に代わって紛争地域に展開し、治安維持やロシアが支援するグループの将兵への訓練なども請け負っているとの事でした。
    ロシア自体が民主主義国家ではないが故、肩入れする相手国の政治体制が非民主主義的であったり、独裁制に近く人権の扱いに問題がある政権であっても躊躇なく支援している実態を、多くの実例を挙げつつ解説しています。実例としてはトランプ大統領が大統領選に勝利した2016年のアメリカ大統領選挙や、ウクライナのクリミア併合、ジョージアでの武力介入、アフリカ諸国への接触など、かなり具体的に挙げられています。
    中国やアメリカを扱った書籍が多い中、ロシアを扱った書籍はあまり多くないので、読んでみました。
    新書1冊にしては情報量も多いですが、あえて1点だけ気になったのは、著者の文体に「~であるという。」が多用されている事です。ロシアだけに直接取材が出来なかったりという制約もあるのでしょうが、あまりに伝聞っぽい印象が強く、読んでいてちょっとすっきりしませんでした。

  •  1991年にソ連が崩壊しロシアがその継承国家となって30年。冷戦時代には米国と覇権を競った国だが、その後の経済的低迷により国力の低下は否めない。軍事費では中国やインドに抜かれ世界4位となっており、国際社会における影響力の維持に苦労している。そのロシアが最近使っている戦略がハイブリッド戦争だ。

     ハイブリッド戦争とはまだ明確な定義のある言葉ではないが、通常の軍隊による軍事力に加え、民間軍事企業やサイバー攻撃、経済援助と結びつけた政治工作などを巧みに組み合わせて影響力を高める手法だ。利点として軍事力に比べてコストが安いことや、非合法な活動を政府主導で行っても発覚しづらい点が挙げられる。

     本書では、近年ロシアが使っている手法を具体的な事例を挙げて紹介している。かつて連邦を形成していた隣国に破壊的な工作をしかけ、自国ジャーナリストの暗殺までやってしまう国家というのは実に恐ろしく「悪の帝国」のような印象を受ける。

     しかし内情を探っていくと、直接戦争では米国に勝てる見込みはなく、中国とは協力関係を築きながらも信用しきれず、周辺国以外への影響力もソ連時代に比べて著しく低下しているという、ロシアの弱い面が動機になっていることが分かる。ロシアほどの「大国」が被害者意識にかられているというのも奇妙に見えるが、過去の歴史を振り返ると、衰退することに対する危機感は切実なのだろう。

     手法自体は新しいものではないし、ロシアの専売特許でもないが、近年のロシアが特に力を入れて効果を発揮している。日本も十分にその実態を理解して対策を立てる必要があると感じられた。

  • ロシアが対ジョージアから、世論の操作などサイバー空間の制圧を含めた戦略を取っており、ウクライナでは実際の戦闘においてもフルに組み込んで勝利(?)した。

  • セキュリティ対策をしっかりしないと、露中のフェイクニュースに騙されそう。国家の分断を煽り、民間軍事組織を進入させ、自国に有利な環境を作り出すハイブリッド戦争は始まってます

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著者プロフィール

政治学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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