フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ユダヤ人として白人たちから迫害された身でありながら、黄色人種に血も涙もない仕打ちすんのとか、ほんま人はわかりあえないんやなって思った。

  • ノイマンについて、コンピュータを作った天才というくらいしか知らなかったので、購読。コンピュータに限らず、ゲーム理論(経済学)、気象予報(気象学)を生み出し、集合論(数学)、量子論(物理)、原爆開発の発展に大きく貢献する、というどれ1つとっても現代文明の土台となるレベルの業績を幅広い分野で達成しているというのに驚愕した。研究者としての哲学が非常にドライなのも良かった。

  • コンピュータや原子爆弾、ゲーム理論を生み出した稀代の天才科学者、フォン・ノイマン。とりあえず彼の天才エピソードは事欠かない。一度読んだ本や記事を一言一句違わずに引用することができたり、大学院の授業で紹介された未解決の定理をたった5分で証明してしまったり、自分で開発したコンピュータと計算勝負に勝ち、「ようやく私の次に計算の早い機械ができた!」といってみたり。彼の興味関心は一分野にはとどまらず、論理学、数学、物理学、化学、計算機科学、情報工学、生物学、気象学、経済学、心理学、社会学、政治学に関する150編もの論文を発表している。それでいて社交的な面も持ち合わせ、天才科学者にありがちな気難しさもなかったという。

    ノイマンは1933年にプリンストン高等研究所で専任職の得たのを機に、アメリカ合衆国市民権を申請する。そして、世界は第二次世界大戦に突入していくわけだが、そこで原子爆弾の開発を進める。そしてまた、その開発にあたって膨大な計算が必要だったため、コンピュータの開発を行うようになる。そしてノイマンは、一科学者として原子爆弾の開発を進めるだけでなく、第2次世界大戦中の日本や、冷戦中のソ連に対して、早期の原爆投下を大統領に対して進言する。確かに非人道的な兵器かもしれないが、戦争を早く終結させることを優先すべきである、と。そして、日本の爆撃地としては、占領統治下を利便性を考えて東京はやめておくとして、日本人の戦意を喪失させるため文化的な価値が高い京都を強く主張した。

    「ノイマンの思想の根底にあるのは、科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきだという「科学優先主義」、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという「非人道主義」、そして、この世界には普遍的な責任や道徳など存在しないという一種の「虚無主義」である」
    「内面の彼を貫いているのは「人間のフリをした悪魔」そのものの哲学」
    原爆の一件があるので、歴史的な評価(とくに日本人的には?)は分かれるかもしれないが、現代社会に大きな大きな影響を与えた稀代の天才の哲学に触れるのは良い機会だったし、個人的には、天才ってこうなのねという感じではなく、ある程度共感できてしまったのが怖い。

  • フォン・ノイマンの哲学については少ししか述べられていないのが残念なところである。しかも、その根拠が弱い。彼は本当に虚無主義者だったのか?

  • 科学の進歩は、戦争のような圧倒的目的と資金とともに生まれやすいということが明らかに理解できた。天才は子ども時代より親の資産とコネクションの庇護を受け、早々に開花するもの。コンピュータの大元を生み出したノイマン、特許も出さずにオープンにした功績なくして今日の生活と仕事はないと思う。一方で遠い国の人を惨殺する痛みに目をつぶってしまったのは科学の道を外れている。科学者がどういう思考で自己を正当化するのか、やはり視野は狭いと感じる。ノイマンは人間のフリをした悪魔だろうか、悪魔のフリをした人間ではないだろうか。そして科学の飛躍的発展と戦争は表裏一体に見えるが、果たしてどうなのだろうか。

  •  間違いなく、最高級の天才と呼ばれるに値する人物。そして、かろうじて人間的にもまともでありました。量子論、ゲーム理論、そしてコンピュータの草創期から、それらの学問を方向づけた功績は計り知れない。関わりのあった科学者たちとのエピソードを読むことで、難解な理論の道筋がわかりやすかった。

  • 現在のコンピューターの原型となる計算機を発明したとして有名なノイマンですが、その功績ははるかに広い範囲に及びます。本書「はじめに」でも紹介されていますが、論理学、数学、物理学、化学、計算機科学、情報工学、生物学、気象学、経済学、心理学、社会学、政治学におよぶ150編の論文を発表しています。そのノイマンの生い立ちをたどるノンフィクションです。
    6歳のころ、任意に指定された電話帳のページを暗唱したり、そのページの電話番号を全て暗算で足し合わせたりといったすさまじい記憶力と計算力のエピソードに始まり、成長に伴って次々と常人からかけ離れた頭脳の持ち主としてのエピソードが続きます。
    20代以降、ともに研究に携わった科学者としてヴェルナー・ハイゼンベルグ、エルヴィン・シュレーディンガー、ポール・ディラック、ニールス・ボーア、エンリコ・フェルミ、ロバート・オッペンハイマー、アルバート・アインシュタインなど、大学で理系だった人なら一度は名前を聞いたことがある錚々たるメンバーが挙がっています。数学、物理学にとどまらず、ゲーム理論や数値シミュレーションの概念を最初に構築したのもノイマンでした。
    本書の書名で”人間のフリをした悪魔”との副題がついているのは次のような発言からです。マンハッタン計画に従事していた際、「我々が作っているのは怪物で、それは歴史を変える力を持っている!それでも私は科学者として科学的に可能だとわかっていることは、やり遂げなければならない。それがどんなに恐ろしいことだったとしても」と語っているところによるものです。本書に「ノイマンの思想の根底にあるのは科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきという『科学優先主義』、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという『非人道主義』である」との一節もあります。戦後、ソ連がアメリカに続いて原爆を開発した際、「(アメリカ有利なうちに)ソ連を攻撃するか否かが問題なのではなく、いつ攻撃するかが問題だ。明日攻撃するというなら、なぜ今日ではないのか。今日の5時に攻撃するのなら、なぜ1時ではないのか、と言いたい」とインタビューに答えた証言が紹介されています。
    科学技術に対する姿勢としては、今の時代から考えると非常に危険な思想と言えますが、ただこれぐらい突き抜けた才能の持ち主によって科学技術のステージが大きく進んだのは否定できないと思います。

  • 学生の頃、がんばって「量子力学の数学的基礎」を読んだ頃を思い出した。
    それにしてもやっぱりノイマンは天才だったんだな、と再認識。

  • 業績を振り返る限り20世紀最高というか、明らかに人類史上最高峰の頭脳と言えるノイマンですが、その経歴を振り返ってみると、努力云々の問題でなく脳みその構造が完全に違う人間というのがちゃんと居るんだということがよく分かってある意味安心します。数々の社会性の欠如したキチガイ天才らも登場する中で、彼の人間性の高さはもはや逆に恐怖を抱く点でその対比もまた面白いです。
    それにしても高橋昌一郎氏の知識の深さと文章の上手さは相変わらず素晴らしいです

  • フォン・ノイマンの思想と自伝。火星人のようだと言われたノイマンの生まれ、成長した後の仕事の業績を描く。とてつもない頭脳で色々な分野でも超一流の業績。五十台で亡くなったが、もっと生きていればどんな業績を残していたのかと残念である。表面的には温和なノイマンであるが、内心は徹底的な合理主義者で、ソビエトへの核先制攻撃を主張したという。ゲームの理論を考えた頭脳は合理的には共産圏を先に滅ぼすことが自由主義圏の善と考えたのだろう。

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著者プロフィール

國學院大學教授。1959年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。専門は論理学、科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

「2022年 『実践・哲学ディベート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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