夜が明ける [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 46
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感想・レビュー・書評

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  • 確かに飢えてる わけではない

    しかし 体や心を壊しながら

    弱いものほど虐げられ

    ハラスメントにさらされる

    今の日本の状態は 

    貧困だろう



    特に 自分が疲れ切っているということが

    よく分かっていない状態

    負の連鎖が続いて

    ずしりとした重いリアルを

    感じさせる小説です

  • 重い内容で、なかなか読む手が進まなかった。
    自分はとても恵まれていて、こんなふうにまだまだ苦しんでいる人がいる事が窺えるのが、苦しくて仕方なかった。
    唯一、主人公がこれではいけないと前に進めたことが救いだった。

  • 心の病みとは霧だと思う。
    霧に包まれると正しい判断を見失う。
    そして、ただ、霧の中で時だけが虚しく進む。

    一人でいい。一言でいい。霧を晴らしてくれる誰かと言葉に出会える奇跡を祈る。

  • これまた、なかなか凄まじい内容で。でも目が離せず続きが読みたくて短期間で読み終えました。

    正直、どうしてこうも負の連鎖って続いてしまうんだろう、とは思ってしまうけど…無知って怖いね。知識さえ手に入れる手段を見つけられればこんなお金のない状況や、ブラックな仕事からなんて抜け出せるはずなのに。。。でも、現実的にもその渦中に入ってしまったら、そこから抜け出す簡単な方法、例えば投資とか転職とか、考えられないんだろう。お金を一時的に得てもパーっと使ってしまう感覚とか理解はできないけれど、一定数そういう人がいるのもリアルに感じることができた。劇団の俳優目指すとか、マスコミ業界に入るとか…うん、理解は出来ないけれど理想を持ってその世界に飛び込んで行く人はいつまで経ってもいるわけだもんね。。。

    なかなか夜、明けないなぁと思ったけど、最後の方で光が射していて、それも完全にではなく余白が残っている感じも良かった。

  • これは、「すごい本」だ。

    読みながら、ずっと頭をつかまれてブン回されているような気持ちだった。主人公である「俺」は、かつては何不自由ない暮らしをしていて、むしろ貧困家庭で育ったアキや遠峯に憧れを抱いてすらいた。そんな「俺」が父親の死をきっかけに、”一見”強くなっているようで、実はどんどん自分を壊していくさまが、どうしても他人事とは思えなかった。それは、主人公が終始「俺」という一人称で呼ばれていることもおそらくひとつの要因ではあるが、それを考慮に入れなくても、他人事とは思えない気がする。
    「俺」は、社会に出るまでは信頼できる人がいて、その人に頼ることができていた。それができなくなってから、坂道を転がり落ちるようにどんどん壊れていく。頼れなくなった原因はなんだろうか?と読み終わった後に考えてみたけれど、精神的肉体的な疲労の蓄積や貧困だけでなく、他者を頼れなくなったことが大きいと感じた。
    じゃあ、いつから「俺」は頼れなくなったのか?どうして頼れなくなったのか?と考えると、社会に出て仕事に就いてからで、それは、仕事=勝負の世界だったから。
    勝ち負けのある「勝負」は、他者を傷つけることが自分を”有利”な立場に押し上げることになるし、他者が一人勝ち(=得)することは自分の「負け」につながる。だから、誰も優しくなれないし、他人のやさしさをそのまま受け止められなくなる。
    「俺」には強い野心と向上心があったけれど、その野心と向上心は他者を巻き込み、「負けたくない」という気持ちを生み出して、そこから、頑張っても「勝てない」経験を繰り返すうちに壊れていった。

    だから、「負けない!」とは思ったけれど「勝とう」としていない遠峯は結果的に強い人間になった。

    また、森の存在によって、物語が絶望的なものにならずに、むしろ希望を感じる読後感になっている。それは、森が”若い”からだと思う。
    森が職場の上司とかだったら、「あーそういうラッキーなこともあるよね」的な感じで読み流すけれど、森が”若い”ということは、次世代の人を代表しているということで、森の存在は、作者の「未来は明るい」とか「世の中は変わっている」というメッセージだと思った。

    一番わからないのは、アキの存在。差別や虐待を伝えるためだけに登場したとは到底思えないけれど、アキについては本当によくわからなかった。マケライネンと瓜二つの人生を歩んで、人生の終わりも同じ場所で過ごしていたけれど、じゃあどうしてこの瓜二つの人物たちが出てきたのか。アキとマケライネンの違いも今一つはっきりしない。
    今すぐにでももう一度読みたいと思う、読みごたえもあるし内容も刺さるし、自分の生き方に対して刮目するし、西加奈子さんこの本書いてくれて本当にありがとう!文庫が出たら絶対買います!!

  • 最初の9割は読むのが辛い内容であるが、それゆえに最後の40ページが輝いてくる。この小説の後のあの事件にも、繋がっているように思えてならない。少しずつでも、変えていかないと。

  • 最後の方で現実に起こった出来事が色々と取り上げてあるんだけど、私が私として生きてその出来事に接して受けたダメージと、アキや主人公の人生を追体験してから、その出来事に再度接して受けるダメージは桁が違う。

    何というか、圧倒的に生々しく身を削られるようなダメージがある。これが物語の持つ力なんだろうとなと思う。

    貧困や社会的弱者に関する本は一般の人よりも読んでいるし、そもそも私自身25歳ぐらいまで定職についていなかったり、30代にして1年以上無職の時期を過ごしたりしているので、主流からは外れてるしある程度分かってるつもりだった。ただこの本を読んで、自分の想像力のなさにちょっと泣いてしまった。

    この本を読む前に、「あんべたくまは俺たちを殺そうとしている」と言われてもピンとこなかったというか、そもそも、有権者が不寛容だから政治家はそこに付け込んでるだけで云々言ってたと思うんだけど、読み終わった後には、それも一つの見方ではあるもの、自分が殺される立場にないから一歩引いて言える台詞だよなと思う。殺しに来るが比較的リアルに響くようになるわけですよ。

  • 読むのが苦しいとか、怒りが込み上げた、とかのレビューを目にしていたので、勇気を出して手に取った。
    辛い内容だということを覚悟していたので思ったよりは苦しまずに読めたけど、なんだかやりようの無い気持ちがあとからあとから湧き上がってきた。

    なんとなくまだ続きがありそうで、まとまりがないまま終わってしまったけれど、西さんが必死で何かを伝えようともがいたことはちゃんと伝わった。


    自分を振り返ると、世の中のありとあらゆる理不尽にいつも腹を立てて、言葉を思い浮かべたことはなくとも、「負けたくない」と考えていたと思う。
    とにかく自分だけが損をするのが許せない、誰かが自分より得をするのは耐えられない、そんな世の中を私たちは生きている。
    良くないことは良くないって、フェアに声を上げるのって難しい。
    でも、自分や自分の大切なひとのために声を上げられるようになれば良いな。
    そのためにエネルギーを費やせるような暮らしやすい日本になれば良いな。
    と思いました。

  • 貧困、自己責任、ヤングケアラー、パワハラ等の問題を描いている小説。
    何不自由なく生きているあなたはどうなのか?と問われているような気がして終始読んでいて辛かった。辛いということはそういう問題を見てみぬふりをして、自己責任とか言っている張本人なんだと思う。
    最後少し「夜が明ける」状態になったのが救い。本当に精神的に辛い状態のときって助けを求めることもできないし、考えもつかない。そんなときに助けを求めやすい世の中になればみんな生きるのが楽になるよな〜。森さんのようにそのために行動できる人になりたいな。

  • これは誰の物語だったのだろう

    生きることの厳しさと儚さ。
    なぜ生まれ落ちて数十年しかない命を
    私たちはかくも不老不死のような振りをして
    勝手気ままに貪り続けていけるのだろう。

    主人公の全てを暴き出すかのような激しい怒りに対してどこまでも世界を憎めなかったアキラの非対称性が残酷に浮かび上がる。どうして、と思う出来事ばかりだけれどきっと私たちの日常だってこの物語の延長線上にしかない。

    結局人は人と出会うことでしか生きていけないのだ。

    それは前半ある種残酷な運命として描かれるけれど、中盤からは奇縁良縁となって人生をあらゆる方向に導き出してゆく。

    森のような強い人間になりたい
    田辺のような柔らかさを諦めない人間になりたい
    アキのような優しい人間になりたい
    主人公のようにもう一度世界を信じてみたい

    こうも捻くれた取りに足らないことばかりの現在を作っているのは誰なのか、我が身を振り返るには十分な力を持った大作だった。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

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