とんこつQ&A [Kindle]

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 299
感想 : 36
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感想・レビュー・書評

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  • 4編とも日常生活が舞台だがシュールで、人間の弱さを切り出す少し意地悪な視線が印象的。表題作が一番よかったが「冷たい大根の煮物」も、善行悪行ってそんな単純で絶対なものじゃないよね・・・と突き放されこれもよい。

  • ポップな何だか可愛らしくてキャッチーなタイトルとは裏腹に、人間の性(さが)を垣間見たような、ちょっぴり恐いような読後感。

  • 【Entertainment】とんこつQ&A / 今村夏子/ 20230108 / 4/969 / <220/167446>
    ◆きっかけ
    ・日経書評

    ◆感想
    ・オチもクライマックスもないダラダラ感満載の話。書評は全くアテにならず。というか当方の読みが浅いのか?何がtakeawayなのかという目線で読んだ結果なのか。。。
    たまにはこういうのもいいかな。ほのぼの系というか。

    ◆引用
    なし

    ===qte===
    とんこつQ&A 今村夏子著
    「普通」がのさばる世の奇怪さ
    2022/9/3 2:00日本経済新聞 電子版
    冒頭の表題作は「とんこつ」という店名の中華料理屋にアルバイトで働く女性の話なのだが、奇妙なことにその店には、とんこつラーメンがない。その理由が書かれたくだりで思わず爆笑してしまう。さらにこの女性、働き始めたのはよいが、来客とのとっさの受け応えが全くできないのである。窮余の策として、教えてもらった言うべきセリフをメモにして読み上げることにする。しかし今度は、どんどんメモが増えていく。こんな風に始まると何だか愉快な小説のようだ。たしかにユーモアのくすぐりはあるが、この著者の小説は何が出てくるかわからない。

    ありえないくらいコミュニケーションがとれない女性が、やがてもう一人雇われる。愉快というよりシュールな展開になる。そもそもスピーディーに注文と料理が行き交うべき中華料理屋で、店側(親父と小学生の息子)はなぜこんな役に立たない女性を雇うのか。

    普通ではない人間のおかしさがいつのまにか、「普通」がのさばっている人の世の奇怪さを逆に浮かび上がらせる。本書はそんなおかしさ、あるいは居心地悪さに満ちている。

    小学校で噓つきと噂されるようになった一人の男子が、どんどんいじめと排除の対象になっていく。それを大多数の側に立って傍観していた姉弟が、ふとしたことで嵌(は)まる人生の落とし穴を描いた「噓の道」には、ぞっとさせられる。

    また、いじめか虐待を受けているように思われる小学生を、人の好い主婦が可愛(かわい)がるようになる「良夫婦」も、善意の思い込みがもたらす結果が恐ろしい。

    最後の「冷たい大根の煮物」は、非正規の職場で、借り癖の悪評がある同僚に付きまとわれるようになった「わたし」の、困惑の日々を描いている。他者の善意と悪意の区別がつかない落ち着きの悪さが、どんどん膨張していくのだが正体はつかめないままだ。

    小説では普通、善人と悪人がはっきりする。自分が正しいと信じる人が救われたりする。そんな「普通」を本書は打ち砕く。無能な人や困った人、得体(えたい)のしれない人が多様に同居する人生、単純な判定が通用しない「複雑系」とでもいうべき世界に読者を直面させるのだ。著者の更なる進化を見せつける作品集である。

    《評》文芸評論家 清水 良典
    ===unqte===

  • 今村夏子さんの最新短編集。相変わらず独特の読後感を残す作品ばかり。本当に個性的で楽しい。
    まずタイトル作の「とんこつQ&A」。変なタイトルだなと思ったら。「とんこつ」という街の中華屋さんの話。「とんこつ」だけどとんこつラーメンはメニューにない。本当は「敦煌」という名前になるはずだった。女将さんが何年か前に亡くなり,大将と小学生の息子さん(ぼっちゃん)の二人で切り盛りしているお店に,バイトとして雇われた今川さん。今川さんにはちょっと問題があって,接客担当なのにお客さん相手に話ができないというか声が出ない。そんな役立たずの今川さんを大将も坊っちゃんも叱責するでもなく暖かく見守ってくれる。ある時ひょんなことから今川さんも書いてあることを読むことならできることがわかる。そしてメモ用紙に場面場面で言うべきことを書いておきそれを読んで対応するようにしたら仕事をこなせるようになった。仕事ができるようになったらお客さんとの会話のバリエーションも増えてメモ用紙が大量になって手に負えなくなった。そこでノートにQ&A集という形でまとめて使うようになった。これが「とんこつQ&A」。これを使って接客をこなしているうちに今川さんはいつしかQ&Aを読まなくてもお客さんと普通に会話できるようになっていた。今川さんの成長につれて「とんこつ」は繁盛するようになり人手がほしいということで,接客のバイトをもうひとり雇うことになる。それで来たのが丘崎さん。この人が来たばかりの頃の今川さんよりちょっと問題がある人だった。しかしどこか亡くなった女将さんに似たところがあるらしく,大将とぼっちゃんの態度に変化が出てくる。...
    「嘘の道」は小学生の学校の与田正という評判の嘘つきの少年といじめと濡れ衣の話。
    「良夫婦」。旦那の亡くなった親の建てた一戸建てに住む主婦・友加里と近所に住むらしいちょっと謎めいた小学生・たむの心温まる交流の話。かと思ったら全然違った。語り手である友加里は今村さんの作品には珍しく普通の人だなぁと思っていたら地味にヤバい人だった。明らかに挙動不審な人よりこういう人のほうが怖そうだと思った。最後はなんだか中途半端な終わり方。
    「冷たい大根の煮物」。高校を卒業して,一人暮らしでプラスチック部品工場で働き始めた独身女性の木野。ある日,同じ工場の別部署で働く芝山さんに声をかけられる。話の流れで木野の住むアパートの裏にあるスーパーが安いということになり,芝山さんと木野は一緒にスーパーに行くことに。そしてひょんなことから木野の部屋にまでやってきた芝山さんは,木野の食生活の貧しさを心配して味噌汁を作ってくれた。職場の先輩からは芝山は周りから金を借りまくって返さない問題人物だと警告されていたが,たかられることもなく,その後も頻繁にアパートに来ては食事を作ってくれるようになる。というようなお話。

  • どの話も素晴らしかったです!久しぶり、本当に久しぶりの今村夏子なもので、この方の『味』を忘れるところでしたが、やっぱりこれが今村さんですよね。物語として、設定としてはありそうなのに、どこまでも人の底知れない怖さとか、無自覚、無意識、そういう怖さをリアルに感じました。

  • 最高でした。
    関西弁versionもあるとは笑

  • 202404
    不思議だったり奇妙だったり捉え所がなかったり
    割と好きかも

  • ほんとに変で好き

  • ポップな表紙で手に取って、読んでみたらゾクっとするようなお話ばかり。
    好きだった。
    どれも最後はどんなオチで終わるのだろうと期待しながら読み進めた。
    最後の冷たい大根の煮物が1番すき
    他のも読んでみたいと思った

  • 世にも奇妙な物語っぽい短編集。思ったより面白くなかった。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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