戦術の本質 完全版 進化する「戦いの原則」をひも解く [Kindle]

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  • 戦術の初歩を学ぶために読んでみた。2頁に1つのテーマで簡潔に書かれており、読みやすかったのだが、他方もっとよく知りたいのに終わってしまう不完全燃焼感は拭えない。同書は軍事・戦術の用語を確認し、そこから別の本で知識を深めるという使い方が適切か。

    いずれにせよ、戦術の初歩を学ぶ良い機会となった。

    以下、備考
    ・【p.13】米『Joint Operations』(2017年版)によると、「戦いの原則」は①目標、②攻勢、③集中、④兵力の節用、⑤機動、⑥指揮の統一、⑦警戒、⑧奇襲、⑨簡明、⑩抑制、11 忍耐、12 合法性
    ・【p.50】死命を制する要点とは、それを保持することで、敵に対し圧倒的な優勢を獲得できるか、または目標達成に向けて物理的に貢献できるような、地理的な場所、特定の重要事象、決定的な因子、あるいは機能のこと。重心に対して大きな影響力がある。
    ・【p.52】内戦作戦は、中央に部隊を集中して、短い作戦線で部隊を迅速に動かす戦法。戦闘力を中心に集中して逐次に敵を撃破。外線作戦は、部隊を複数方向から敵部隊に集中させる戦法。分進合撃、包囲、突破等。努力線はよくわからん。
    ・【p.64】リスクの許容には根拠ある仮説が不可欠
    ・【p.72】戦闘力には、有形的要素(兵力数や兵器数)と無形的要素(指揮官の統率、部隊の規律・士気等)あり。ADRP3-0『Operations』(2016年版)によると、戦闘力を構成する要素は、①リーダーシップ、②インフォメーション、③移動・機動、④作戦情報、⑤火力、⑥戦闘力維持、⑦ミッション・コマンド、⑧防護
    ・【p.74】地形は、①視界・射界、②接近経路、③緊要地形、④障害、⑤掩蔽・隠蔽の5要素で評価
    ・【p.81】FM2-0『Intelligence』
    ・【p.90】旅団戦闘チームが自前で戦闘できる時間は72時間。これを超える場合は、師団及び軍団レベルの部隊・組織が戦闘力維持の責任を負う。
    ・【p.95】補給品の種類記号
    ・【p.103】C4ISRに関する米軍資料はFM3-21.31『the Stryker brigade combat team』
    ・【p.108】攻撃には、拘束、機動、打撃という3つの主要機能あり。拘束は、敵を発見し、敵の行動の自由(移動、再編成、方向転換等)の阻止をするために、我の欲する時期・場所に釘づけること。機動は、拘束した敵に対して、攻撃に有利な態勢を占めるよう部隊が移動すること。打撃は、敵の撃破。攻撃機動の方式(forms of maneuver)とは、機動の方向を他2要素との関連において規定するもの。迂回・包囲・突破
    ・【p.110〜】迂回は、敵の準備しない地域において決戦を求めて撃滅すること(陣外決戦)。迂回は、理論的には優れているものの、成功した事例は少ない。
    ・包囲は、敵をその準備地域で撃滅することを目的に、背後または側面から攻撃し、包囲を追求。包囲は形態的に一翼包囲、両翼包囲、完全包囲等に分類。
    ・突破は、最後の手段。フラーは突破角45度の原則を提唱(これを広げるために戦車)。米陸軍マニュアル(FM3-90『tactics』)によると、師団の突破正面の相対戦力は敵の9倍(第一線大隊では18倍)、助攻撃部隊には3倍の相対戦力を充当と指摘。突破は一般的に①突破口の形成、②突破口の拡大、③突破目標の奪取の3段階
    ・【p.120】浸透は間隙から潜入して特定の目標を達成すること。浸透部隊は浸透レーンを設定して潜入。1個レーンに1個中隊が基本。旅団は超えない
    ・【p.132】防御は他の決定的行為に従属する戦術行動
    ・【p.134】米教範(FM5-0『the operations process』)に「防者が3倍の戦力を有する攻者を撃破できる可能性は50%以上」と記述
    ・【p.136】防御のやり方は基本的に陣地防御と機動防御の2つ。防御の成功とは敵の攻撃を粉砕して地域を確保すること。
    ・【p.140】追撃は、直接圧迫部隊で戦場から離脱する敵を拘束。包囲部隊とヘリボーン部隊で敵の退路を遮断して捕捉撃滅する行動。ただし成功例はほぼなし
    ・【p.144】退却ではなく後退行動。防御態勢に変化がないよう見せるため、第一線部隊の一部を残置部隊として残し、同部隊を収容するために収容部隊を後方に配置
    ・【p.148】各個撃破は劣勢軍の戦法。同頁に各個撃破が成立する条件あり
    ・【p.154】コンバインド・アームズの編成には①諸兵種部隊の最適な組み合わせを決定するテーラー方式と②任務に応じて兵站所要の規模と構成を策定する任務部隊編成あり
    ・【p.161】意思決定における状況判断プロセス
    ・【p.183】中隊以上の指揮官を対象とした任務分析METT-TC
    ・【p.187】ある組織の知識全体に占める記録された知識(形式知)は20%程度。その他は暗黙知といわれ、この暗黙知を形式知に変換するのをナレッジ・マネジメントと呼ぶ
    ・【p.188】米陸軍には、状況判断プロセスの指揮活動で、計画策定の時間を厳守するという3分の1ルールあり

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著者プロフィール

1945年、広島県生まれ。1968年、防衛大学校(12期)卒業後、陸上自衛隊入隊。以降、陸上幕僚監部・方面総監部幕僚、第2戦車大隊長、第71戦車連隊長、富士学校機甲科部副部長、幹部学校主任研究開発官などを歴任して2000年に退官(陸将補)。2008年以降は軍事史研究に専念。主な著書は『戦車の戦う技術』『機動の理論』『気象と戦術』(サイエンス・アイ新書)、『戦術学入門』『陸自教範「野外令」が教える戦場の方程式』(光人社)、『戦争と指揮』『戦術の名著を読む』(祥伝社新書)。

「2022年 『戦術の本質 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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