流山がすごい(新潮新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 角上魚類(新潟・寺泊発祥)に行きたくなってきた

  • 今、思いもよらない所が熱い。それは千葉県流山市だ。かつて「千葉のチベット」と呼ばれた県北西部で、茨城県や埼玉県の近いところにある。





    「母になるなら流山市。」のキャッチコピーで、6年連続人口増加率全国トップで、「千葉のニコタマ」と呼ばれるようになった。ニコタマとは、世田谷区二子玉川の略称。





    一方で反面教師になったのは福井県の池田町。「都会風を吹かさないで」などの「7か条」で、話題になった。




    地方交付税交付金を頂いていながら、来るなるこの条件を受け入れろとよく言えるものだ。「どうか来て頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします」と言うのが正しいのではないか。





    あの町に住んでいる人は幸せなのかな。中には本当の気持ちを封印して生きている方もいるのかな。





    池田町のような自治体で、現状維持プラス思考停止していたら、今の流山はなかっただろう。




    民間出身の市長、井崎義治。もともと都市計画の専門家だったが、流山の「どんぶり勘定」の計画に疑問を抱いて市長選挙に候補者として出馬。




    2回目で自民などの既成政党がバックアップする流山市議会のベテラン議員を破って当選。




    出馬する際に、地元の名士からチクリと言われたそうだ。




    「あんたはマンション住まいだから、新住民ですらない。仮住民だな」




    そんな岩盤層を壊した原動力は女性たちの力だと著者は述べている。




    流山が今のようになるには、つくばエクスプレスや東武アーバンパークラインがないと始まらないということで、第3代流山市長秋元吉郎も取り上げている。




    1983年から2期市長を務めて、御年95歳の古老の住む流山市の自宅に著者は向かった。




    あの田中角栄の目白邸に行き、「常磐新線」(現・つくばエクスプレス)の陳情したときの様子や、霞ヶ関や永田町詣での様子を語っている。




    なかなか見向きもされない中、何度も足を運んで行った。





    現在も流山について古老は、「母になるなら、流山市。」と子育て世代を誘致したのはいい着想だと思いますと言った。




    その一方で、流山市には安心して子供を産める場所が少ない。命を守れる街にならなければ、本物のヘソができたとは言えないでしょうとも述べている。




    その理由は、流山を音読すると「りゅうざん」となり、縁起が悪いので近隣の柏市などで出産する人もいて、大規模な産婦人科が市内にない。




    流山万歳かと思ったらそうでもなかった。




    あとがきに流山を離れた母親が次のような趣旨の意見を述べている。




    流山の場合、街路樹や公園、新設の小学校といった箱は立派なんですよ。でも小学校はマンモス校になっていて、ベースには昔ながらの管理教育が残っている。ソフトウエアがついていっていない感じがします。




    著者は、変化に「これでおしまい」はない。人口増加はもうこれくらいでいいのかもしれない(100万人都市で手作り感のある行政は難しいと思う)。しかし「流山らしさ」を創り上げていくのはこれからだと述べている。





    20〜30年たっても光り輝き続けるか、それとも光が丘や多摩ニュータウンのように衰退していくか、どのような政策を実施していくか、気になるなあ。

  • 毎日新聞「今日の本棚」で藻谷さんが紹介していた。話は具体的でとても面白い。後半、著者自身も記述しているように、子供人口が増えた、では今後はどうする? といった展望があると、より深みが増したと思う。続編に期待する。

  • 新聞記者が、流山市について書いた本。以前からしばしば話題に上っている流山市であるが、流山市住人でもある著者が、実際に流山市で活躍する人たちにインタビューしてまとめている。子育て共働き世帯の取込みに成功していることが繁栄の理由であるが、その肝となる「送迎保育ステーション」については説明があるが、高収入世帯を呼び込んでいる高価格不動産化(広い面積、高クオリティー住居、自然豊かな環境のハイレベル化)については触れられていない。概して、一部の住人への聞き取りがメインのため、視点がばらばらで、流山の何がすごいのかが伝わってこない。事実やデータを根拠にした学術的な分析がなく、内容にまとまりがないため、説得力に欠ける。残念な本であった。

    「(送迎保育ステーション)午前7時から7時50分の間に、駅前ビル3、4階にある送迎保育ステーションに子供を連れていく。午前8時、市内の保育所に通う子供たちがルートごとに送迎バスに乗り込み、9時までに全員が保育所に送り届けられる。午後4時、送迎保育ステーションを出発したバスが市内各所の保育所を回って子供たちをピックアップし、午後5時までに送迎保育ステーションに送る。仕事帰りの親は午後6時までに迎えに行き、家路につく。流山市民は1日100円、月額最大2000円でこのサービスが受けられる。お迎えが遅れても午後7時までなら100円、午後8時まででも30分500円の追加料金を支払えば延長保育で預かってくれる」p11
    「実はこの送迎保育ステーションを始めたのは流山市が最初ではない。しかし一足早く始めた横浜市では、幹線道路の渋滞がひどく園児を定時に送り届けることができなかった。また他の自治体でも、送迎の対象は公立の保育所だけというところが多く、使い勝手が悪いとの批判が集まっている」p14
    「流山市は十分な人数の保育士を揃えるため、保育士を圧遇することにした。まず「処遇改善」として市から毎月4万3000円の補助が出る。流山市では新たに保育士になると最大30万円が受け取れる(2022年度で終了)。さらに最大6万7000円の家賃補助も出る」p15
    「流山市の人口増加率(2.49%)は全国トップ。その後も、毎年、全国の市の中で「人口増加率首位」を維持し続け、2021年まで6年連続の首位を達成した」p15
    「流山市キャッチフレーズ『母になるなら流山市』」p22
    「(流山市の売り)人です。尾崎さんや手塚さんみたいに、地域の課題を起業という形で解決していく人たちや、街に足りないものは自分たちで作ってしまおうというという誇り高き市民です」p30
    「(適度な高台にあり緑が豊かな街)世界のどこへ行っても住宅地として人気の街は緑が豊かな高台にあった。高台は地盤が固く地震や水害に強い。ただし自分もいずれ歳を取ることを考えれば、自力で歩けないような急な坂は困る」p36
    「(高さ制限)東京23区の都市計画は、東西に延びる道の南側の制限は甘く、北側の制限は厳しく設定する。南側に高い建物を建てても影になるのは道路だから日照権の問題は起きない」p48
    「(送迎保育ステーション)「今日もお迎えがぎりぎりになりそうです」と職場から電話を入れると、男性の保育士は力強く言った。「僕が見てますから、慌てなくて大丈夫ですよ。」8時に迎えに行くと、娘が「ママー」と駆け寄ってくる。後ろで保育士さんが「お母さん、今日もお疲れさまでした」と笑っている。ありがたくて涙が出た」p60
    「流山市には日本の自治体で唯一の「マーケッティング課」がある。井崎市長の肝煎りで作られた「流山の可能性を引き出す街づくり」の実働部隊だ(単独で企画調整を行う)」p86

  • 市長の経歴や考え方がわかり、どのようにして人が集まる街になったのかがわかった。

  • 千葉の秘境といわれていた流山市の発展を実現させた1人の市長と地域住民の取組を追ったドキュメンタリー。子供を育てやすい街ではなくて、子供を産んでも働きやすい街を目指したところが目玉。
    一つ一つの施策は決して難しいものではなく、すべてはやる気があるかどうかの問題であり、何かを変えようとする時にできない理由はいくらでもみつけられて、現状を変えたくない既得権益層が、やらない理由を並べ立て衰退を続けているのが今の日本の実情だというのは全くその通りだと思う。

  • 流山でおこった事例を紹介を通して地方都市(?)の可能性を紹介している。

    流山の成功は、地域の潜在力、新交通導入というタイミング、多数の素晴らしいリーダーの出現が組み合わさったことで起こっている。

    どう因果をみるかが、読み手次第ではないかと思う。因果のとらえ方によっては、この事例から他の都市での再現可能性の見出し方が変わるのだろうと思った。

    私は、流山の成功は、具体の施策やテクニックレベルでは、基本的には一般化できるものではないと思う。一方で、本質的には、「街づくり」においても、サービスとして、自分たちの強み(アセット)を理解して、ターゲットユーザとニーズを決めてマーケティングするということの重要性を深く示していると感じた

    強いて言って組織(この場合は自治体)の意識を変えることの難しさに対して、外の人を入れるといった施策は一般化できるかもしれない。つまり、銀の弾丸はない。

  • 街は都市計画(土地の使い方)が根本。
    その上でソフトがあると感じた。

    素敵な市長が選ばれたということが、きっと大きなターニングポイントだったのだろうな。

  • 子育てができ、女性が働ければいいだけなのに。それさえもできない日本って・・・流山市がすべてではないでしょうが、こういうまちが多くなれば少子化問題も解決では?

  • 子育て世代から絶大な支持を得ている千葉県流山市。流山おおたかの森などは駅名自体も有名になってきたが、その都市改革に貢献した現市長の生い立ち、移住者による新たな取り組み、今後の展望などがまとめられている。

    新書なのである程度仕方がないが、情報の密度という点では期待したほどではなく、Youtubeで展開されている各種ニュースやドキュメンタリー動画の方が、視覚的効果もあり分かりやすかった印象。

    ただし、読書との相乗効果もあったはずなので、ある程度簡潔に情報がまとまっているという点では、一読の価値あり。

    流山のような都市が増えてくれると、少子化にも大きな効果があるのではないだろうか。

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著者プロフィール

大西 康之(オオニシ ヤスユキ)
ジャーナリスト
1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)などがある。

「2021年 『起業の天才!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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