ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • Kindleではなく、通販で紙の本を購入して読んだ。その手間をかけるだけの値打ちがあった。なんで通常の出版ルートじゃないんだろうと思ってたけど、なんとなくわかったような気もした。漫画は敷居が低いから、売れっ子になると特にファンじゃない人も読む。で、あれこれ言う。「描きたいものを描きたいように描く」ってことが結構難しくなるのかもしれない。大成功してからもコミケで漫画売る方もいるし。これは支持者が少なくても作者が描きたかったものなんだな。

    ありきたりと言えばありきたりな成長出世ストーリーなんだけど、それをギャグ四コマでやるところがいしいひさいち。新聞連載でちょっとだけ見ていたロカちゃん、こういう子だったのね。ヤンキーの美乃ちゃんが、これまた定型的なのにいい味なのだ(柴島という名字は「くにじま」と読むんじゃないのかな。いしい氏は関大出身だし)。

    ラストには賛否両論あるようだけど、わたしはじーんとしてしまった。これくらい投げ出して、読者の想像にまかせるのもありだと思う。なにもかも説明されないと気がすまず、わかりにくいとケチをつける傾向が強まっているような気がするが、それじゃつまらなくないか。あと、「百合」的に見る意見もあるようだけど、ごくストレートに女子のバディものってことでいいのでは。

    おなじみキャラが出てきて、これは楽しい。大人になったののちゃんや、変わらず元気そうなおばあさんが見られて嬉しかった。それに、なんといってもキクチ君のおばあさんが最高にカッコイイのだった。

  • キンドルのおすすめに出てきて 表紙の女性の姿が「全身で歌っている」のを感じさせた いしいひさいちがこういうのを描いてたのかと思い読み始めたら一気に最後まで読まされた

    連作四コマまんが(いちいちオチをつける)のスタイルでありながらここまでのストーリーを読ませるのはさすがの手腕 笑わせながらときにちょっとウルッとさせるさじ加減が絶妙

    とくにアンコールで客が500人に見えるところ ののちゃんとおかあさんがたこ焼きを食べる後ろのデビューポスター 弁当配達のアフメドくんが彼女の歌に向かって祈りを捧げるところ『信者だ。』(このシーンは圧巻) が印象的

    登場する人々も誰もが表情豊かで人間臭く ロカへの愛情が滲み出していて それをうまく表現しているのがこの絵柄なのではとも思う(これがやけにキレイでツルッとした絵柄だったらどうだったろうか)

    書きたいこと伝えたいこと表現したいことがきちんとしていれば絵の上手い下手というか繊細かラフかというのは関係ないのかもしれない(ちょっと乱暴な言い方だが「少女終末旅行」でも同じことを感じた)
    やっぱり長年やってるまんが家はコシの入り方が違う こういうものを描くってすごい

    お話しのフレームとしてはふたつ ひとつはロカの歌手としての成長 もうひとつは美乃との友情ストーリー

    ロカの成長についてはサラザール賞へのノミネートが示すようにこのあと右肩上がりになっていくのだろう、もしその賞を取ることが重要なのであれば作中描いたはずなのでそれはあくまでも彼女の成長を推測させる要素でしかない

    美乃との友情に関しては彼女が「もう連絡するな」とメールしてきたことに対して「ゴメンナサイ」とそのメールを受け入れてしまった自分への後悔や喪失感が ぼんやりと座っていて「消えてしまいそう」と言われるような姿になっているのではないか

    だとするとこの作品で作者が一番描きたかったのはやはり美乃との友情のほうだったのではないだろうか? 美乃はロカと商会とのつながりをなかったことにしようとしていた だがラストで焼けてしまった商会の壁にロカのポスターが貼られているということは あのあとにロカと美乃の間でもう一度再会と和解があり その結果としてポスターが貼られることになったのだと思う

    ののちゃんとおばあさんがずいぶんと歳を取っている ののちゃんは大きくなっているしおばあさんは手押し車を押しているから その時の流れのあいだにロカと美乃の邂逅があったのだと信じたい ポスターのロカは少し大人になってるようにも見えるし そのぐらいの時が流れているのだろう

    ロカの成長をメインテーマとするならばそういうふうなシーンをラストに持ってくるはずだ そうではなくて焼けてしまった商会の跡を見せているのはやはりロカと美乃の友情がメインテーマなのだろう

    そして火事が起きてしまってからもう何年も経っている(「昔の話じゃ」と言われている)が商会は焼け跡のままになっていることからすると もしかすると美乃はその火事で命を落としてしまったのかもしれない そういうところがこの突然のラストの切ない余韻を醸し出している たしかにあまりにも突然すぎて困惑する人は多いだろう でもそういうストーリーだと考えてもおかしくないような気がする そして感動的に盛り上げるのではなくこういうふうに突然フッと途切れるように終わってしまうラストは好きだ

    ラストの前の話で「ぼんやりしてて消えてしまいそう」なロカをスタッフたちは疲労の蓄積と見ているがそれは違う 美乃との決別を自ら選んでしまったことに対する後悔なのか喪失感なのか それが彼女を憔悴させ消えてしまいそうなほどの姿にさせ その一方で「咆哮」とも言われている圧倒的な声量の彼女の歌に「切ないだけでない 儚いだけでない ひとことでは言われへん複雑な感情表現」であるサウダージ感を加えることになったのではないか だとしたらこのふたりの別れはファドという音楽をテーマにしたこの作品に似つかわしくもある

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    あとがきに代えて
    https://www.ishii-shoten.com/honnmaru/rocaw09.html

    漫画「ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ」から聴こえる歌、ファドとは?
    https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/33145

    『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』|マンガ表現の現在地を象徴する、奇跡のような作品【マンガ編集者を唸らせるこのIPPON|浅田貴典】
    https://shueisha.online/entertainment/123523

  • 昨年から自費出版作品として話題沸騰で、Kindleに入ったら読もうと思っていたいしいひさいちの『ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ』が、何といきなりKindle Unlimitedに入った。

    さっそく一読。
    評判通りの素晴らしさであった。4コマ・マンガとしてしっかり面白いし、感動できる。

    ファドを歌う女子高生・吉川ロカが、その才能を見いだされ、世に出ていくまでの物語――。

    いしいひさいちならではのオフビートな笑いの4コマ・マンガを楽しむうち、コマの向こう側からロカの歌声がくっきり聴こえてくる。

    登場人物は見事にキャラが立っているし、音楽マンガとしても上質だ。

  • 身分違いの百合
    そんな、むかしの少女小説にあるようなストーリーを
    現代に持ってきたもの
    ある意味では「お固い」のね
    少女に優しい世界の幻想を打ち砕くという
    損な役回りを引き受けるのは
    ほかならぬ少女じしんでなければならない
    フェミニズムってそういうことだな

  • どういうこと?!

  • 結末が意味不明
     口コミで話題なりたてのときに、3刷の本を2冊買った。

     難儀。私にはよくわからなかった。おもしろくもなかった。
     ファドについては初めて知った。たまに挟まるロカちゃんのかはいい話もいい。
     一方で、ストーリーはありがちな成長物語だらう。人物造形もありがち。基本的に、オチもつまらないやらスベってるやら。誰かがズッコケるオチの4コマは、無理矢理に感じる。

     とり・みきがいしいの絵について「仰角斜め横から見たポーズ」が珍しいとほめてゐる。しかし、いしいだから珍しいのであり、他の漫画には普遍的な表現でしかない。さういふところがいしいファン向けだらう。

     最後でロカちゃんがゴメンナサイと二度謝る場面、そしてそれにつづく結末の展開は投げ出してゐる。最もよくわからない。(私は、柴ちゃんのメールを見て、自分で火をつけたのか?と思った。それとも、もうこの世にはゐない、とうに昔の出来事だといふことか?)どうやらスピンオフの『花の雨が降る ROCAエピソード集』に真相が描いてあるらしい。だが、私はそこまでして知りたい気持はない。

     いろいろ調べてみたら、私のほかにもピンとこない人や、あるいは傑作だと絶賛する人がゐた。あるブログを見たら、百合がうまいと書いてあって、人気なわけをすこし納得した。でも百合自体が別段おもしろいわけではない。初期のほうの書評に、中条省平のものがある。あの書評もほめてゐるのかゐないのか、波風の立たない書評だ。
     (大声では云はないが)おそらく読者がキャラクターに入れこむタイプの、通俗マンガなんだらう。

  • キャラメイクした人特定のパラメータに振りすぎやろ、とツッコミたくなる人が、世の中には存在する。

    大抵は時々お騒がせだったり、世話が焼けたり、フォローしてあげないと生活が破綻したりするタイプだ。周りに迷惑をかけることも多々あるが、本人のトンガリっぷりを知ってしまうと憎めない。

    まぁ、仕方ないよねとため息混じりに苦笑して受け入れるのだ。

    ロカちゃんはそんな人だ。
    勉強ができず生活力もあまりなさそうな田舎の高校生。性格は天然、気弱でアガリ症。
    なのに、歌わせると別人になる。
    誰もが認めるディーバに変貌してしまう。

    彼女が歌うのはファドというポルトガルの音楽。
    ロカちゃんはどうやってこの音楽と出会ったんだろう。神のお引き合わせという他ないのではないだろうか。

    いしいひさいち先生にしか描けない世界。
    4コマを中心に作家活動を続けられ、少ないスペースに削ぎ落とされ凝縮された表現。
    「ののちゃん」のスピンオフなのでギャグ要素もしっかりありつつ、全体を通せば美しくも切ないストーリー。

    もうひとりの主人公ともいえる柴島さんも魅力的なキャラクターだ。
    しかし、あのバカ弟があんな結末をもたらすとは…
    最後のコマには悲鳴をあげそうになった。

  • 唐突なラスト

  • これはアレだなののちゃんのスピンオフみたいなやつ。今どきいい話だった。ラスト前のサウダージの表情がすごくよい。

  • 『ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ』
    いしいひさいち: 著
    作者ご本人が「らしくない」とあとがきに書かれていらっしゃる従来の4コマギャグ漫画とは違う傾向のストーリー作品。
    ファドというポルトガルの民族歌謡に魅入られてファドの歌手へなりたいと願う主人公のロカさんと陰ながら支える一見怖い先輩の柴島先輩とのデビューまでのエピソード。
    違う傾向とはいっても、いしいさんのギャグセンスに裏打ちされたテンポ感により軽快に物語は進んでいくのでした。
    ラストに引きずられて姉妹作品の『花の雨が降る ROCAエピソード集』も購読しました(*^o^)/

    個人的な感想としてはロカさんほどの才能はなかったけれど、ロカさんのように天然さが満載で「変わっている」と言われつつも面白がって見守って下さったり支えて下さった方々を色々と思い出したりで、その面でも物語に引きこもれましたし、その思いもあってのラストはより印象深かったのでした。

    Kindleにて購読

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著者プロフィール

■いしいひさいち…1951年、岡山県玉野市生まれ。関西大学に入学し漫画同好会に入会。 在学中より求人誌『日刊アルバイト情報』で「Oh! バイトくん」を連載し、大学卒業後、四コマまんが集『バイトくん』(プレイガイドジャーナル社)を出版。 1985年に文藝春秋漫画賞、2003年に手塚治虫文化賞、2006年に菊池寛賞を受賞。 現在、朝日新聞朝刊の「ののちゃん」を連載中。 著作に「がんばれ!!タブチくん!!」「おじゃまんが山田くん」「地底人」「コミカル・ミステリー・ツアー」「現代思想の遭難者たち」「女には向かない職業」「となりの山田くん」「ホン!」「フン!」「ヘン!」「まぁ映画な、岡山じゃ県!〈1〉~〈3〉―シネママル珍風土記」「現代思想の遭難者たち」「ののちゃん①~⑫」など多数。

「2022年 『ののちゃん(13)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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