- Amazon.co.jp ・電子書籍 (194ページ)
感想・レビュー・書評
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あっさり読み終えてしまい、こんなもん?と思ったけど、後からじわじわくる。
ソビエトの崩壊により翻弄され、人生も変わってしまった若者たちの物語。エストニアがデジタル大国なのはコロナの流行が始まった頃、聞いた事はあったのだが、そのきっかけはやはりソビエトの侵攻で、バルト3国のそれぞれの方向性の違いなど、興味深く読んだ。
ラウリが居場所がなくて逃げ込んだ教会には、かつてパルチザンの協力者の子どもだった牧師のリホがいて、ラウリに大事な事を伝えてくれる所がよかった。リホの他にもラウリを支援してくれる両親や先生方、そして親友となったイヴァンなど心に残る交流が描かれている。
ラウリが子どもたちにプログラミングを教えるために、大学へ行こうと考え、新しい知識を身につけていく下りは、先日読んだ「リスキリング」そのものだなと思った。日本よりハードルは低そう。ソビエトの隣に位置するエストニアならではの事情もあるだろうが、スピード感が違うように思う。
ラストは幸せな感じでよかった(^-^)
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宮内悠介初めて読んだんだけど、なぜか勝手にもっと激しいというか濃いというかそういう感じを予想していたので、まったく逆で、静かで淡々としたあっさりした感じで、そのギャップに勝手に驚いたんだけど、派手さはないけどよかった。ほかの小説は違うのかもしれないけど。すごい参考文献の量だったので、もっとみっちりたっぷり書いてもよかったのに、と思わなくもなかったけども。個人的に長い小説が好きだし。
ストーリーは、エストニアの、ラウリ・クースクというコンピュータプログラムの天才的素質をもった人(架空の人)の半生を取材するという形で描いたっていう。子どものころに天才的才能を発揮していた人たちが、社会情勢のせいや、またほかの事情のせいで、その才能で偉業をなしとげるとかはなく、ごく普通の人として生きている、みたいな話で、なんだか地味だけど新鮮だった。リアルというか。でも、悲しみとか後悔とかうらみとかいったネガティブな感情がなくて、なんだか明るくすがすがしい感じがあってよかった。
ラウリをさがしている、っていうところが、ミステリアスでもあって、ミステリが解けたとき、いい意味で予想を裏切られたし、わたしはけっこう驚いたし感動もした。
旧ソビエトやエストニアのことがわかるのも興味深かった。エストニアがITの発達している国だとか知らなくて無知さを恥じる。。。
コンピュータの話も、苦手だし興味もないけどおもしろく読めた。データがあれば国が滅びないっていう話はちょっと意外というか、そうかも!と感心した。マイナンバーカードも、わたし個人はなんか信じられなくて否定派だったんだけど、推進すべきなのではっていう気もしてきたし(もちろん信頼できる国というか政府がちゃんと管理できるなら、だけども)。
バルト三国やロシアについてもっと知りたいと思う。
あとどうでもいいけど、参考文献に「ビーチャと学校友だち」が出ていて、思い出してすごく懐かしかった。子どものころ読んですごくおもしろくて大好きだった記憶があって。ソビエトの子どもの学校生活が描かれていて、チェスとか算数の解き方とかものすごく印象的だった。 -
第170回直木賞候補作のこちらを読んだ。
宮内悠介さんの作品を読むのは初めて。
静かに淡々と進んでいくお話だった。
でも没入感がすごくて、あっという間に読み終わった。
最後の方は驚きと共に伏線も回収されていったので、読後感が良かった。
表紙もとても素敵。
読み終わった後に思ったのは、今は世界中が混乱していて、今後またラウリ達のような人生を歩む人が出てきてしまうのではないかということ。
こちらは、宮内さんの創作だけど現在進行形で、起こるかもしれない出来事に胸がギュッとなった。
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まあまあ
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最初は何の話だっけこれ?となるが、第二部あたりまで読んでください。特にエンジニアかじってる人。プログラミングの話なので、少しでも知識あると面白いかと。
なんかソ連ってすごい昔なイメージだったけど、こうやって読むと最近ですね -
ラウリは昔の宮内悠介を投影しつつ描かれた人物なのかな。家庭環境、政治、世情、友情、生まれ持った個性はどれもコントロールが効かないものだけど、個人との関わりが確かにある。その手触りを感じる作品。
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こころのよゆうがなく、小説から遠ざかっている。久々に1冊読了。
「…俺たちは屑だが(中略)プライドはあるんだ」
「わたしを不幸だと決めつけるけんりあなんか誰にもない」
現状を反映してか、心にのこったのは傷を負った人たちの言葉。
大英帝国をはじめ植民地保有国
ナチス
ソビエト
ロシアとアメリカ
そして、パソコン
日本も
のちの世は、どう評価するのか。
客観的に見られるほど先に、人の世はあるのだろうか。