ラウリ・クースクを探して

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2023年8月21日発売)
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本棚登録 : 113
感想 : 20
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宮内悠介初めて読んだんだけど、なぜか勝手にもっと激しいというか濃いというかそういう感じを予想していたので、まったく逆で、静かで淡々としたあっさりした感じで、そのギャップに勝手に驚いたんだけど、派手さはないけどよかった。ほかの小説は違うのかもしれないけど。すごい参考文献の量だったので、もっとみっちりたっぷり書いてもよかったのに、と思わなくもなかったけども。個人的に長い小説が好きだし。

ストーリーは、エストニアの、ラウリ・クースクというコンピュータプログラムの天才的素質をもった人(架空の人)の半生を取材するという形で描いたっていう。子どものころに天才的才能を発揮していた人たちが、社会情勢のせいや、またほかの事情のせいで、その才能で偉業をなしとげるとかはなく、ごく普通の人として生きている、みたいな話で、なんだか地味だけど新鮮だった。リアルというか。でも、悲しみとか後悔とかうらみとかいったネガティブな感情がなくて、なんだか明るくすがすがしい感じがあってよかった。
ラウリをさがしている、っていうところが、ミステリアスでもあって、ミステリが解けたとき、いい意味で予想を裏切られたし、わたしはけっこう驚いたし感動もした。

旧ソビエトやエストニアのことがわかるのも興味深かった。エストニアがITの発達している国だとか知らなくて無知さを恥じる。。。
コンピュータの話も、苦手だし興味もないけどおもしろく読めた。データがあれば国が滅びないっていう話はちょっと意外というか、そうかも!と感心した。マイナンバーカードも、わたし個人はなんか信じられなくて否定派だったんだけど、推進すべきなのではっていう気もしてきたし(もちろん信頼できる国というか政府がちゃんと管理できるなら、だけども)。
バルト三国やロシアについてもっと知りたいと思う。

あとどうでもいいけど、参考文献に「ビーチャと学校友だち」が出ていて、思い出してすごく懐かしかった。子どものころ読んですごくおもしろくて大好きだった記憶があって。ソビエトの子どもの学校生活が描かれていて、チェスとか算数の解き方とかものすごく印象的だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月20日
読了日 : 2024年1月20日
本棚登録日 : 2024年1月20日

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