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感想・レビュー・書評
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これまた小学生の頃、『アッシャー家の崩壊』を初めて読んで、その衝撃を家族に話したら、「『早すぎた埋葬』のこと?」と、ちょっとずれた反応が返ってきた記憶がある。それから気になりつつも、読んだ記憶がないので、ダウンロードして読んでみた。訳は佐々木直次郎。この訳では、邦題は『早すぎる―』。
聞くところによれば、「早すぎる埋葬」というのは西洋人にとっては本当に恐ろしいものらしく(日本人でも嫌だけど)、それが起こらないように、納棺前に血液を抜いたりといった「生き返らない」措置を入念にほどこしたらしい。夜な夜な棺桶から現れる吸血鬼の伝説があるのもそのバリエーションだし、現代の海外文学に「ゾンビ」が大活躍するジャンルがあるのもその名残りなのだろう。
この作品では、語り手が冒頭から過去の事例の数々を報告し、「早すぎる埋葬」についての論理的な考察を試みる。『アッシャー家』的なゴシック調展開を期待していたので、そこは少々拍子抜けしたが、ノンフィクション的な探求の面白さがあって、読むピッチが上がる。そして、「このまま終わるんだ…」と油断していると、途中で徐々に風向きが変わってくる!『アッシャー家』の、マデリーンが登場してくるまでの、「そうかもしれない」というロデリックの憔悴といった、外部からの描写とは違った緊迫感、圧迫感がいかにもポーな描写で恐怖感上乗せ!いやあ、こういう構成があったのか!と鮮やかに意表をつかれました。やるなあ、ポー先生はやっぱり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ポーの短編『早すぎる埋葬』の冒頭では、死んだと思って埋葬した人が実は生きていたという事例が続々と描かれています。「類癇」「全身硬直」「カタレプシー」と言われる症状のようです。
今では考えられないことですが、医学が発達していない当時はそんなことがあったのですね。
本作品は、時々この「類癇」の発作に襲われる語り手が、死んだと間違えられて埋葬されることを恐れるあまりに精神的に病的になってつらつらと愚痴を書きつらねています。
そしてついに恐れていたことが起こった!男が悪夢から目が覚めると埋葬された後だった!
と思ったら夢だった!
それ以来、男は精神的に健康的になり、「類癇」の症状も治まりましためでたしめでたし。
まさかの夢オチでした。
前半から中盤にかけての病的な書きぶりに比べ、ラストのあっけらかんぶりの落差。
しかし語り手も心身ともに健康になってハッピーエンドで終わったのだからいいではないですか。
普段から恐れていたことを夢に見てそれが治癒のきっかけとなったというのは、心理的な教訓を含んでいると思います。
フロイトの精神分析では神経症の原因が分かれば症状は改善するということです。
悪夢を見て精神が改善するとは、いわば“悪夢療法”“夢療法”といったところでしょうか。
http://sfclub.seesaa.net/article/457205752.html -
ふと意識を失い、しばらくは仮死状態に陥る病。
その病の恐怖は「生きているまま埋葬されること」、そして、「土に埋まった棺の中で目を覚ますこと」。
読んでいてドキドキした。これはもう、誰しもが根源的にもっている恐怖なのだろうなぁ。 -
生きたまま埋葬された前例や体験談?が真に迫っていてすごく怖かったです。土葬の所では多かったのかな…。墓の下の、棺桶の中で意識を回復する、その恐怖。主人公の意識の変遷が興味深かったです。
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生きたまま埋葬される恐怖。時代がよく反映されている。