幼年期の終り

  • 早川書房 (1979年3月31日発売)
4.03
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感想 : 82

おもすれーSF。最後の世代の子供たちは盆踊りしつつ上位存在に。

中盤で神の存在を否定してて「おっ」となったが、宇宙規模の上位存在は示唆してるのでやっぱりキリスト教圏だなと思いました。
科学で未来過去そして宇宙すらあまねく見通せど、四次元以上の世界とビッグバン以前があるので不在証明は成り立たない。宗教と科学は共存可能、むしろ推進の場合もあるってはっきりわかんだね。SFもそんなん(宗教的世界観を重ねる)ばっかだし。
どうでもいいけどオーバーロードに渡された過去を覗き見るマシンの場面は、遠方銀河からの光での過去観測はある一定より真っ白になってしまうのを思い出した。
それから得た描写かと思った。結局オバロの恣意的なものだと判明してたけれど。

オバロはみんなキャラが理知的でいいですね。
人類より発達した種族であるのに見届ける役しかできない哀愁。
見た目は悪魔で、でもやってる事は聖者を天に召す天使。
でかい図体なのに紳士的で、ちっこい椅子に座って尾を床に垂らしながら本を真面目に読んでたり、初顔見せが両腕に抱えた子供に角や羽根を遊ばれながらだったりとか完全に萌えキャラなんだよな。
一定の層に人気があると思う。それを損ねないようにデザインラフを描いてみたりとかするけれど、上手くいったものはないです。

生物として次のステージである〈オーバーマインド〉に昇る人類がオチ。
集合的無意識を具体化したような存在みたいだけれど、2023年に生きる自分としては、人類は根っこで繋がってるみたいな考え方は腑に落ちない部分もある。
現代だから、は関係ないか。
ともかく執筆された時代を考えれば、諸々の描写や上霊の発想はすごい……らしい。雑然とSFを読んでるせいで、比べられるほど同時期の作品が思いうかばないので……

合一の存在になるというのは象徴的不死を失うような得るような、安心感と恐怖が入り混じる。
現存する人類の価値観にそぐわないものを喜びとして描かれると(作中ではラストまでそういう描写はないが)、どうしても恐ろしさを感じてしまう。価値観の改変とか怖い。ヤプーとか。
この作品はそれがSFとしての広がりを持たせ、大作足り得させたのだろう。
普通に冒険譚やミステリーとしても面白いです。

80年。世代が変わってしまえば、新たなものに対する恐怖は受け継がれない。
それが宇宙から飛来し、いつでも空を占め人類を見下ろす存在であっても。
自己複製のバグでしかない分断された自我の脆弱性――
〈オーバーマインド〉は、その克服を成し得たのか。
主題ではないが、そんなことを考えた。

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感想投稿日 : 2023年9月24日
本棚登録日 : 2023年9月24日

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