シャイロックの子供たち (文春文庫 い 64-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年11月10日発売)
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冒頭、題名にあるシャイロックの簡単な説明が書かれている。強欲無慈悲な高利貸しという意味合いで使われることが多い。池井戸潤氏の銀行ものらしい題名だ。
映画の番宣を見て、ついつい手に取った。

昭和時代の銀行の封建的な考え方、顧客視点ではなく自分本位の考え方に対するアンチテーゼを通じて、人生のあり方を示している。
舞台は東京第一銀行長原支店、古川副支店長の小山行員への暴力事件から始まる。傷心家族は自分の出世をあからさまに目指す集団の中で朱に染まる人の心が面白かった。

最も興味深かったのは、みにくいアヒルの子で、帯封がバッグに入っていたことから、経済的に苦労してきた北川愛理が100万円の盗難を疑われる、真犯人は誰だ?ミステリーの要素が多少でもあると楽しめる。この後の人体模型の章でピースが埋まりはじめ、キンセラで明らかになる。失踪したのは誰か?本当に失踪か?その動機は・・・。

結局、悲劇的な出来事の積み重ねが描かれているに過ぎず、銀行業務の説明のように感じた。ストーリー性やミステリー度もあまり感じられない。
池井戸潤氏の作品としては物足りなさを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 池井戸潤
感想投稿日 : 2023年2月10日
読了日 : 2023年2月10日
本棚登録日 : 2023年2月9日

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