サラバ! (下)

著者 :
  • 小学館 (2014年10月29日発売)
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本棚登録 : 8430
感想 : 928

こうゆう本だったのか。。。

あんなにイケていた歩の人生が転落してしまう。
しかも懸念していた家族のせいではなく、自らの容姿の衰えによってだ。
いつからか外見やステータスだけで人の価値を測っていたような歩だ。すっかり自信をなくし、身も心もみっともない男になってしまった。
人と比べ続ける人生の危うさにゾッとした。
歩には芯がなかった。自分だけが信じられるものがなかったのだ。

そして「信じるもの」を探す旅に出る。
これまで長かったけど、ここからが本番だったのか。
歩が見つけた「信じるもの」は
”僕が生きているということ、生きていくことを信じる。
僕たちはサラバとともに生きていく。”
というすべての人に当てはまりそうであるが、漠然としていて観念的な答えだ。
そして歩の人生を共に辿った読者たちを切り離していく。
この本は歩の『サラバ』であって読者の『サラバ』ではないのだ。

「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」

姉が以前、歩に対して語ったセリフが読者にも降りかかる。
私の「信じるもの」は委ねられた。

「信じるもの」を見つけたい思った。この家族の「信じるもの」を見つけるまでの七転八倒をみるに、そう易々とは見つからないのだろう。もしかしたら失うことでしか得られないのかもしれない。
しかし、これまでや、これからの人生の中に「信じるもの」を得る手がかりはきっとある。そのために私はこれからも本を読み続けていかねばならない。

読む年代、時期や心も持ちようによって刺さるツボが変幻しそうな本だ。
ただ、どんな時に読んでもきっと背中を押してもらえる、そんな読後感だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 発見の本棚
感想投稿日 : 2023年1月12日
読了日 : 2023年1月12日
本棚登録日 : 2023年1月12日

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